海外

【夫が3人いる妻】 中国四川省の「一妻多夫制の村」とは

多様化する結婚の形

画像 : 一妻多夫イメージ

近年、同性婚など様々な結婚の形が認められるようになってきた。
「ジェンダーレス」という概念が広まり、性別を超えた人間の在り方が考えられている。

日本は「一夫一妻制」で重婚は禁止されているが、世界には異なる結婚形態を認める国々がある。

例えば、アフリカの一部の国々では一夫多妻制が認められており、特にイスラム教徒が多い西アフリカではこの傾向が強い。

しかし、イスラム教徒が多くても一夫多妻制を禁止する国も存在する。また、一夫多妻制が認められている国々では、男尊女卑の習慣が根強く残っていることが多いという。

このように、結婚の形態は文化や宗教によって様々であり、それぞれの国や地域で異なる価値観が存在している。

一妻多夫の村

「一夫多妻」とは、一人の男性が複数の妻を持つ制度である。

反対に「一妻多夫」は、一人の女性が複数の夫を持つ制度だが、本当にこのような制度が認められている場所があるのだろうか。

画像 : 俄亞大村 public domain

驚くべきことに、中国の四川省にある俄亞大村では、近代まで一妻多夫制が続いていたという。

俄亞大村はムリ・チベット族が住む自治県に位置し、深い山奥に存在する。400年以上の歴史を持ち、ナシ族の伝統文化が色濃く残る村である。

この村では、兄弟が一人の女性を共用の妻として娶る。

その理由としては、この村での生活環境の厳しさが背景にある。
一つの家庭の財産を分割すると生活が困難になるため、この方法で家族の財産を守り、一族の存続を図ってきたのである。

村の厳しい環境と、外部での経済活動の難しさから、この制度が続いてきたのだ。

お父さんはだれ

一妻多夫制では、一人の母親に対して複数の父親がいるため、家族関係は複雑である。

筆者としては混乱しそうに感じるが、実際には父親たちは誰の子供かを気にせず、全ての子供を家族の一員として平等に愛しているという。

画像 : 俄亞大村の家族 中央の女性が母親で男性は全員父親

例えば、ある家庭では、母親に三人の父親がおり、それぞれを「大パパ」、「二パパ」、「三パパ」と呼んでいる。

母親はまず大パパと結婚し、その後に他の二人とも結婚した。大パパは家庭の主として各種手続きを担当し、二パパは家畜の管理、三パパは放牧を担当し、農作業は三人で協力して行っている。

子供たちも誰が本当の父親かを特に気にせず、全ての父親を平等に受け入れている。

この村の家族はこのように役割分担をし、円満に生活を送っているのである。

近代化

俄亞大村は、一妻多夫制や古い文化を残していることで話題となり、多くの旅行客が訪れるようになった。

観光客の増加に伴い、村人たちは農業から観光産業へと転換し、ホテルや旅館を開業したり、伝統工芸品を販売するようになったという。

これにより、村の生活は向上し、若者たちは外の世界に興味を持ち始めた。

時代に適応するため、村の生活は次第に変化し、一妻多夫の婚姻制度も先代のものとなり、外部の世界と一体化つつあるようだ

参考 : 一夫多妻制独特婚俗,存在大凉山深处的纳西古村

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【迫る都知事選】今こそオルテガの『大衆の反逆』を読む 「多数決は…
  2. シャネルの創設者、ココ・シャネルについて調べてみた
  3. 【無音の音楽】「4分33秒」の作曲家・ジョン・ケージについて調べ…
  4. 『イケメンすぎる凶悪犯』 カルロス・ロブレド・プッチ 「黒い天使…
  5. アメリカのシットコムドラマ「フレンズ」人気の理由 【英会話学習に…
  6. 2019年の「ミュンヘン安全保障会議」を振り返る 〜米国vs中国…
  7. 【世界人口削減?】ジョージア・ガイドストーンの謎 「10のメッセ…
  8. シンガポールはライオンがいないのに、なぜ「獅子の街」なのか? 【…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

もうなんでもいい【漫画~キヒロの青春】⑳

部屋の窓の外はキャベツ畑…

【くずし字に挑戦】読める…読めるぞ!地元神社に佇む石碑の文字がここまで読めた!

地元神社の境内にたたずむ一基の石碑。もう永く放置されていますが、その碑面には弘法大師(こうぼ…

【毒殺か病死か?】トスカーナ大公妃となった美女ビアンカ・カッペッロの謎めいた最後

16世紀、海洋都市ヴェネツィアの貴族社会に、一人の女性が生を受けました。彼女の名はビアンカ・…

【イスラム教の合理性】 なぜ一夫多妻制を認めるのか?「豚肉食、偶像崇拝禁止の理由」

イスラム教は、日本から見ると地理的にも文化的にも遠い存在であり、一夫多妻制や食事の制限など、…

『三国志』耳と鼻を犠牲にして貞操を貫いた女傑~ 夏侯令女の伝説

耳鼻のない女傑 夏侯令女男社会の古代中国に於いて、後世まで名を残す女性は珍しい。…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP