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【凍土のタイムカプセル】ロシアの永久凍土から見つかった古代生物たち

ロシアの永久凍土は、古代の生物を保存している「自然の冷蔵庫」として注目されている。

特にシベリアの地域では、数万年前に絶滅した生物の遺骸が次々と発見され、驚くべき発見が続いている。

本記事では、ロシアの永久凍土帯で見つかった生き物たちについて、いくつか紹介する。

永久凍土とは

画像 : イメージ

永久凍土とは、2年以上連続して0℃以下の状態となる地盤を指す。

氷の有無は問わず、「0℃以下」という温度条件で定義されるが、実際には凍った水分を含んでいる場合が多い。主に北半球のツンドラ気候で形成され、地球表面の約20%を占めるとされている。

日本でも、富士山や大雪山(北海道中央部)などの高山地域で永久凍土が確認されている。

気気温が0℃に近づくと、一部の凍土が溶けて「不連続永久凍土」となる。さらに、年平均気温が-5℃以下になると、凍土は溶けずに広い範囲で「連続永久凍土地帯」が広がる。

シベリアやアラスカなどの深い凍土は、古代の寒冷な気候を保持しており、特に北極地方や山岳地帯で見られる。

最終氷期には現在よりも広範囲に凍土が広がり、かつては日本や北アメリカにも存在していた。

ロシアの永久凍土帯で見つかった生き物たち

画像 : ワムシの一種 wiki c Rkitko

・ワムシ(24,000年前)

主に淡水に住むとても小さな動物で、大きさは1mm以下。世界中で約3,000種類が確認されており、雌だけで繁殖できる種が多いため、雄はほとんどいない。水の中を漂うか、藻類などの表面を這って生活していることが多い。

2021年、ロシアの研究者が24,000年前の凍ったワムシを解凍し、生き返らせることに成功した。この微小な多細胞生物は仮死状態で何万年も生存しており、再度繁殖を始めたという。

驚くべきことに、発見されたワムシは現代の同種にはない、凍結に対する特異な耐性を持っているとされている。

・線虫類(42,000年前)

画像 : 42,000年前の線虫 A. V. Shatilovich, A. V. Tchesunov, T. V. Neretina, I. P. Grabarnik, S. V. Gubin, T. A. Vishnivetskaya, T. C. Onstott & E. M. Rivkina

細長い体を持ち、線形動物とも呼ばれる。主に土や海の中で生活しているが、植物や動物に寄生する種類もいる。

寄生性の線虫は、農作物に被害を与えたり、人や動物の体内に寄生して病気を引き起こすこともある。

2018年、42,000年前の線虫類が解凍されて生き返った。この線形動物は、研究者が単細胞生物の観察をしていた際に偶然発見されたという。

長期間にわたる凍結状態において、多細胞生物が生き残るメカニズムは未解明のままである。

・仔犬(12,500年前)

画像 : 先史時代の仔犬 Universidad Federal del Nordeste Ammosov

ヤクーツク(ロシアの都市)の永久凍土からは、約12,500年前の仔犬のミイラが見つかっている。

この仔犬は、凍土の中でほぼ完全な状態で保存されており、脳や毛、ヒゲまで確認されている。

また、約18,000年前のさらに古い仔犬も発見されたが、狼なのか犬なのかははっきりしていない。

・絶滅種の馬(42,000年前)

画像 : 絶滅種の馬 Universidad Federal del Nordeste Ammosov

約42,000年前に生きていたこの馬は、バタガイカ・クレーターと呼ばれる場所で発掘された。

保存状態が非常に良く、内臓や血液まで確認された。

研究者はクローン技術を用いて、この絶滅した種を復元しようとしている。

・ホラアナライオン(47,000年前)

画像 : ホラアナライオン ©Sputnik / Vitaly Belousov

更新世に生息していた絶滅した大型ネコ科動物で、体重260キロ、身長2メートルと、現代のライオンよりやや大きかったとされている。

クロマニヨン人の壁画に、たてがみがない姿で描かれており、洞窟や草原で単独行動していたと考えられている。
主にウマ類を捕食しており、乾燥した寒冷な環境を好んでいたとされている。

2015年から2018年にかけて、この動物の幼体が4体発見されており、そのうちの一部は斑点模様を持っていたことが確認されている。

これにより、古代の洞窟画に描かれたライオンの模様が、現実に基づいていたことが証明された。

・マンモス(28,000年前)

画像 : ユカマンモス Monika Ďuríčková (CC BY 2.0)/Sputnik

2011年に「ユカマンモス」と呼ばれる若いメスのマンモスが発見された。

筋肉の細胞核が非常に良い状態で保存されていたため、クローン技術の研究にも利用されている。

おわりに

ロシアの永久凍土は、過去の生物を保存するタイムカプセルのような存在である。

これらの発見は、地球の歴史や進化を解明する手がかりとなり、将来的には絶滅した生物を復元する可能性も秘めている。

永久凍土の調査は、歴史的な謎の解明や未来の科学的挑戦において、ますます重要な役割を果たしていくことだろう。

参考 : 『Russia Beyond』他

 

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草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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