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画像 : ウクライナの国旗 イメージ
2025年に入り、ウクライナ情勢は一段と厳しさを増している。
ロシアによる侵略が続く中、アメリカのトランプ大統領がロシア寄りの姿勢を強めていることが、国際社会に大きな波紋を広げている。
例えば、トランプ氏は最近のインタビューで「ロシアはウクライナ全土を占領可能」と発言し、プーチン大統領の侵攻責任を明確に認めなかった。
さらに、「ウクライナが戦争を始めた」とするロシア側の主張を繰り返すなど、これまでのアメリカの対ウクライナ支援方針を覆すような動きを見せている。
これにより、ウクライナへの軍事支援が縮小し、停戦交渉がロシアに有利な形で進む可能性が高まっている。
トランプ氏は選挙戦中から「24時間以内に戦争を終わらせる」と公言してきたが、その具体策は領土の現状追認や欧州への責任転嫁に終始しているようだ。
実際、彼はロシアが占領した地域を事実上認める方向性を示唆し、停戦後のウクライナ復興を欧州に委ねる姿勢を明確にしている。
これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は強く反発しつつも、トランプ氏との取引を模索せざるを得ない状況に追い込まれている。
2025年2月時点で、米ロ間の協議がサウジアラビアなどで進む一方、ウクライナは交渉から排除されるケースも出ており、孤立感が強まっている。
この状況は、「法の支配」から「力の支配」への移行を象徴している。
国際法や国連憲章に基づく秩序が後退し、軍事力や経済力を持つ国が自らの意志を押し通す、弱肉強食の世界が現実味を帯びてきた。
ロシアがウクライナ侵略を既成事実化しつつあるように、力による現状変更が容認されれば、他の大国も同様の行動に出る危険性が高まる。
特に注目されるのが、中国による台湾への動きと、それが日本に与える影響だ。
中国の台湾侵略と世界秩序への影響
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画像 : 習近平 CC BY 3.0
中国は、トランプ政権のアメリカが内向きになり、ウクライナ問題でロシア寄りの姿勢を取ることを好機と捉えている可能性がある。
習近平国家主席の下、中国は一貫して台湾を「不可分の一部」と位置づけ、必要なら武力行使も辞さないと表明してきた。
近年、台湾周辺での軍事演習が頻発し、空軍機や艦艇による挑発行為が常態化しているが、2025年に入ってその動きがさらに加速しているとの観測もある。
トランプ氏がウクライナ支援を縮小し、アジア太平洋地域への関与を後退させれば、中国は台湾侵略のリスクが低下すると判断するかもしれない。
実際、トランプ氏は対中政策で関税引き上げなどの経済的圧力を重視する一方、台湾有事への軍事的介入には消極的な態度を示唆している。
これが事実なら、アメリカの抑止力が弱まり、中国が力による現状変更に踏み切る可能性は否定できない。
台湾が中国に飲み込まれれば、東アジアの安全保障環境は一変し、日本への直接的な脅威が現実のものとなる。
日本が「第二のウクライナ」になる可能性
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画像 : 台北101とスカイライン wiki © Heeheemalu
こうした国際情勢の変化を受け、日本国内では「第二のウクライナ」となるのではないかとの懸念が広がっている。
ロシアや中国のような大国が、近隣国の主権を無視して力で支配を広げる構図が明確になる中、日本が次の標的となるシナリオは、決して誇張ではない。
歴史的に見ても、日本は地政学的に重要な位置にあり、中国やロシアとの緊張関係は長年にわたって存在してきた。特に尖閣諸島を巡る中国との対立や、北朝鮮のミサイル発射など、日本周辺の安全保障環境はすでに不安定化している。
もし中国が台湾を制圧した場合、次に狙われるのは日本であるとの指摘は少なくない。
台湾が中国の支配下に入れば、東シナ海や南シナ海の制海権が中国に握られ、日本のシーレーン(海上交通路)が脅かされる。経済的に中国依存度の高い日本にとって、これは致命的な打撃となりかねない。
さらに、アメリカのトランプ政権が「アメリカ・ファースト」を掲げ、同盟国への軍事支援を渋る姿勢を強めれば、日本は自力での防衛を迫られることになる。しかし、自衛隊の現状や憲法上の制約を考えると、中国のような軍事大国に対抗する能力には限界がある。
一部の論者からは、「日本がウクライナ化する」との警告が発せられている。
例えば、ロシアがウクライナに侵攻した際、西側諸国は経済制裁や武器供与で対応したが、直接的な軍事介入は避けた。
同様に、中国が日本に対して行動を起こした場合、アメリカがどこまで関与するかは不透明だ。トランプ氏がウクライナ問題で示すように、地域紛争への介入を避け、経済的圧力に頼る方針を続けるなら、日本は孤立無援の状態に置かれるリスクがある。
そうなれば、日本は「第二のウクライナ」として、力の支配に屈する危険性が高まる。
弱肉強食の世界への警鐘
現在のウクライナ情勢とトランプ大統領のロシア寄り姿勢は、世界が法の支配から力の支配へと移行しつつあることを示している。
中国が台湾侵略に動く可能性、そして日本がその余波で「第二のウクライナ」となる懸念は、決して絵空事ではない。
日本としては、防衛力の強化や同盟関係の見直しを急ぐとともに、国際社会での発言力を高める必要がある。弱肉強食の世界で生き残るためには、力の論理に対抗する準備が不可欠だ。
今後のトランプ政権の動向と中国の出方が、この危機的な状況をさらに明確にするだろう。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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