2025年6月13日、イスラエルがイランに対して軍事攻撃を仕掛けたことを契機に、両国間の緊張が一気に高まった。
この攻撃は、イランの核開発プログラムや地域での影響力拡大を牽制する目的で行われたとされるが、具体的な攻撃の詳細は依然として不明である。
以来、両国は報復の連鎖に突入し、軍事的な応酬が続いている。
この状況は、中東地域全体の安定を揺るがすだけでなく、国際社会、特に日本のエネルギー安全保障にも深刻な影響を及ぼす可能性がある。
イスラエルとイランの対立の背景

画像 : イスラエルのネタニヤフ首相 CC BY-SA 3.0
イスラエルとイランの対立は、数十年にわたり中東の地政学的緊張の中心にある。
イスラエルは、イランの核開発計画が自国の安全保障に対する脅威であるとみなしており、繰り返し軍事行動の正当性を主張してきた。
一方、イランは、イスラエルの攻撃を主権侵害と非難し、報復を宣言。
イランは「抵抗の枢軸」と呼ばれる同盟国や代理勢力(ヒズボラ、ハマス、フーシ派など)を動員し、イスラエルへの圧力を強めている。
6月13日の攻撃以降、イランはミサイルやドローンを用いた反撃を行い、イスラエルも空爆やサイバー攻撃で応酬。両国間の直接衝突は、これまで代理戦争や限定的な攻撃に留まっていた状況を一変させ、全面戦争のリスクを高めている。
特に、トランプ米政権がイスラエルへの強固な支持を表明していることが、事態をさらに複雑化させている。
トランプ政権のイスラエル支持とその影響

画像 : ドナルド・トランプ public domain
トランプ政権は、過去の任期(2017~2021年)でも、親イスラエル政策を明確に打ち出してきた。
在任中には、米国大使館のエルサレム移転やアブラハム合意の推進など、イスラエルとの関係強化を優先した政策を展開。
現在、再び政権を握ったトランプ氏は、イスラエルへの軍事・外交的支援をさらに強化する姿勢を示している。
これには、武器供与の拡大やイランへの経済制裁の強化が含まれる。
トランプ政権の強硬な姿勢は、イランをさらに追い詰める可能性がある。
イランは、米国が支援するイスラエルとの対立を、米国そのものとの対決と捉えており、報復の矛先を米国の同盟国や地域の米軍基地に向ける可能性が高い。
特に、バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)に駐留する米軍基地は、イランのミサイルや代理勢力の攻撃の標的となり得る。
これらの基地は、ペルシャ湾の安全保障を維持する上で重要な役割を果たしており、攻撃を受けた場合、地域全体の軍事バランスが崩れる恐れがある。
ホルムズ海峡封鎖のリスク

画像 : ホルムズ海峡 public domain
イランが追い詰められた場合、最も懸念されるシナリオの一つが「ホルムズ海峡の封鎖」である。
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾からインド洋へとつながる戦略的要衝であり、世界の石油輸出の約20%がこの海峡を通過する。
イランは過去にも、経済制裁や軍事的圧力への対抗措置として、ホルムズ海峡の封鎖を示唆してきた。
実際に封鎖が実行されれば、原油価格の高騰は避けられず、国際経済に深刻な打撃を与える。
特に日本にとって、ホルムズ海峡の封鎖はエネルギー安全保障に直結する問題である。
日本はエネルギー資源の約9割を輸入に依存しており、その多くが中東産の原油や天然ガスである。
2024年のデータによると、日本の原油輸入の約80%がペルシャ湾地域からのものであり、ホルムズ海峡はその輸送ルートの要である。
ホルムズ海峡の封鎖や中東地域の不安定化は、日本経済に多方面から影響を及ぼすだろう。
まず、原油価格の高騰は、輸送コストや製造業の生産コストを押し上げ、消費者物価の上昇を招く。
さらに、エネルギー供給の不安定化は、電力供給や産業活動に直接的な影響を与え、経済全体の停滞を招く可能性がある。
日本政府は、エネルギー安全保障の観点から、中東依存度の低減や再生可能エネルギーの推進を進めてきたが、依然として化石燃料への依存度は高い。
ホルムズ海峡の封鎖に備え、石油備蓄の活用や代替ルートの確保が求められるが、長期的な封鎖や地域の全面戦争となれば、これらの対策だけでは不十分である。
今後の動向が懸念される。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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