2025年末から2026年にかけて、国際社会の視線は再び東方へと向けられている。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領、英国のキア・スターマー首相、カナダのマーク・カーニー首相をはじめ、フィンランドやアイルランドの首脳陣が次々と北京を訪れているのだ。
かつての「対中包囲網」の喧騒が嘘のように、各国のトップが列をなして習近平国家主席との会談に臨む姿は、国際情勢の大きな地殻変動を予感させる。

画像 : 2026年1月29日、北京・人民大会堂で開催されたビジネスイベントで演説する英国首相キア・スターマー氏 Lauren Hurley / No 10 Downing Street CC BY 4.0
欧州諸国が「デリスキング」を超えて接近する背景
欧州首脳らがこの時期に相次いで訪中する最大の動機は、極めて現実的な経済・政治的利害にある。
第一に、米国におけるトランプ政権の動向が挙げられる。
米国の保護主義的な政策や予測不能な外交姿勢を前に、欧州諸国は「米国一辺倒」のリスクを痛感している。
経済的な安定を維持するためには、巨大な中国市場との関係を完全に断絶する「デカップリング」ではなく、依存度を管理しつつ対話を維持する「デリスキング(リスク低減)」の枠組みをより具体化させる必要があるのだ。
英国のスターマー首相にとって、今回の訪中は8年ぶりという異例の節目となった。
停滞する自国経済の活性化に向け、中国からの投資呼び込みや市場開放は避けて通れない課題である。
また、カナダのカーニー首相も、電気自動車(EV)関税などを巡る対立を緩和し、実務的な協力関係の再構築を急いでいる。
欧州側には、人権問題や安全保障での懸念を抱えつつも、気候変動対策やウクライナ情勢の解決において、大国・中国の関与が不可欠であるという冷徹な計算が働いている。
「外交ブーム」を演出する中国側の巧みな戦略
一方の中国側にとっても、この「訪中ラッシュ」は願ってもない外交的成果である。
中国の狙いは、欧米の結束にくさびを打ち、自国を中心とした「安定したパートナーシップ」を誇示することにある。
米中対立が激化する中で、欧州諸国を自陣営に引き寄せないまでも、中立的な立場に留め置くことは、中国の戦略的空間を広げることに直結する。
中国政府は、訪中する首脳らに対し、ビザ免除措置の拡大や関税の引き下げといった「アメ」を提示することで、経済的な結びつきの強さを強調している。
同時に他国の内政に干渉せず、イデオロギーによる選択を迫らないという姿勢を示すことで、米国の「価値観外交」に疲れを感じている諸国に対し、実利に基づく魅力的な選択肢としての中国を印象づけようとしている。

画像 : 英国首相キア・スターマー(2024年5月7日、ロンドン) Simon Dawson / No 10 Downing Street Crown copyright
新たな多極化時代の幕開けと今後の展望
欧州と中国、双方の思惑が合致した結果として起きた今回の訪中ブームは、世界が単純な二極対立ではなく、より複雑な多極化へと向かっていることを示唆している。
欧州は自らの自律性を確保するために中国を利用し、中国は自らの孤立を防ぐために欧州を歓迎している。
しかし、この接近が真の信頼関係に基づくものかと言えば、疑問が残る。
経済安全保障や先端技術の流出、さらには地政学的な対立の火種は依然としてくすぶったままである。
今後、これらの首脳外交が具体的な成果を結ぶのか、あるいは一時的な「利害の一致」による演出に終わるのか。
2026年の後半に向けた両者の駆け引きは、国際秩序の新たな形を決定づける重要な試金石となるだろう。
参考 : PM meeting with President Xi Jinping of China: 29 January 2026(英首相官邸)
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
























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