近年、欧州、中東、南アジアで軍事的緊張が急激に高まっている。
ウクライナでの紛争は泥沼化し、中東ではイスラエルと周辺国の対立が再燃。南アジアではインドとパキスタン、中国の国境問題が燻り続けている。
これらの地域で火花が散る中、誰もが無視できない現実がある。
それは、台湾有事や朝鮮有事がもはや机上の空論ではなく、差し迫ったリスクとして世界に迫っているという事実だ。
グローバルな安全保障の枠組みが揺らぐ今、なぜ東アジアが次の火薬庫となるのか、その背景と危険性を探る。
欧州・中東・南アジア:連鎖する緊張

画像 : NATO加盟国 wiki c Janitoalevic, Patrick Neil
まず、現在の世界情勢を概観しよう。
欧州では、ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、NATOとロシアの対立は冷戦時代を彷彿とさせる。
中東では、イランとイスラエルの代理戦争がレバノンやシリアで激化し、ガザ地区の不安定さが地域全体に波及している。
南アジアでは、インドと中国がヒマラヤ国境で小競り合いを繰り返し、パキスタンとのカシミール問題も解決の糸口が見えない。
これらの地域では軍事衝突が日常茶飯事となり、国際社会の調停努力はことごとく失敗に終わっている。
このような状況は、単なる地域紛争の域を超えている。
各国が軍備を増強し、同盟関係を強化する中、グローバルなパワーバランスが不安定化しているのだ。
米国は欧州と中東での関与を深めつつ、アジア太平洋地域での中国牽制を強めている。
中国はこれに対抗し、軍事力を急拡大。ロシアや北朝鮮といった「反西側」の国々との連携を深めている。
この複雑な力学が、東アジアでの大規模紛争の火種を孕んでいる。
台湾有事:中国の野心と米国の決意

画像 : 台湾海峡 public domain
台湾有事のリスクは、日に日に現実味を帯びている。
中国は「一つの中国」原則を掲げ、台湾を自国領土と主張。近年は軍事演習を頻繁に行い、台湾海峡での示威行動を繰り返している。
2022年以降、中国の戦闘機による台湾防空識別圏への侵入は日常化し、2025年現在、その頻度はさらに増している。
中国共産党は、習近平政権下で「2049年までの完全統一」を目標に掲げており、軍事力による台湾奪還を排除しない姿勢を明確にしている。
対する米国は、台湾関係法に基づき、台湾への武器供与を継続。バイデン政権以降、歴代政権は「戦略的曖昧さ」を維持しつつも、台湾防衛へのコミットメントを強めている。
2024年の米議会では、台湾への追加軍事支援法案が可決され、米軍のインド太平洋地域への展開も拡大。日米豪印の「クアッド」やAUKUSといった枠組みも、中国を牽制する明確なシグナルだ。
しかし、この米中の対立は一歩間違えれば、全面戦争に発展しかねない。
中国が台湾に侵攻した場合、米国や日本が介入する可能性は高く、これは第二次世界大戦以来の規模の紛争を引き起こすだろう。
朝鮮有事:北朝鮮の挑発と韓国の限界

画像 : 朝鮮危機 public domain
一方、朝鮮半島もまた、火薬庫と化している。
北朝鮮は2020年代に入り、核・ミサイル開発を加速。
2025年現在、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を繰り返し、米国本土を射程に収める能力を誇示している。
金正恩体制は、経済制裁や国際的孤立にも関わらず、軍事挑発をエスカレート。韓国や日本への威嚇に加え、最近ではロシアとの軍事協力も深めている。
この動きは、ウクライナ問題と連動し、グローバルな安全保障の不安定さを増幅させている。
韓国は北朝鮮の脅威に対抗し、米国との同盟を強化。THAAD配備や日米韓の軍事協力拡大など、防衛態勢を固めている。
しかし、国内では政治的分断が深刻化し、北朝鮮への対応を巡る意見対立が続いている。
もし北朝鮮が軍事行動に出た場合、ソウルは一瞬にして戦場と化す。
米国の核の傘に依存する韓国だが、米中対立の激化で米国の対応能力にも限界が見え始めている。
世界はどこへ向かうのか
欧州、中東、南アジアの緊張は、東アジアでの有事を誘発する引き金となり得る。
中国が台湾侵攻を決断するタイミングは、米国の注意が他地域に分散した瞬間かもしれない。北朝鮮もまた、国際社会の混乱に乗じて挑発をエスカレートさせる可能性が高い。
これらのシナリオは、単なる「もしも」の話ではない。
軍事衝突の連鎖は、グローバル経済の崩壊、食糧危機、エネルギー供給の途絶を引き起こし、人類全体を未曾有の危機に陥れる。
我々は目を覚ますべきだ。世界は今、第一次世界大戦前夜のような危うい均衡の上に立っている。
台湾海峡や朝鮮半島での一つの誤算が、全世界を巻き込む大戦の引き金となる。
各国首脳は、軍事衝突を回避するための外交努力を加速させなければならない。
さもなければ、歴史は我々に厳しい教訓を突きつけるだろう。火薬庫の導火線は、すでに点火されているのだ。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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