世界史

ガネーシャの頭がゾウになった理由、実はかなり衝撃だった『インド神話』

画像 : ガネーシャ イメージ

インドと言えばインドゾウ。

もちろん異論は認めますが、インドと聞いてゾウをイメージされる方も、少なくないのではないでしょうか。

実際にインドとゾウの関係は深く、神様として祀られるほど、ゾウは人々の暮らしに密着した存在となっています。

というわけで、今回はゾウの頭をもった「ガネーシャ」を紹介。このインパクト絶大な神様は、どのように誕生したのでしょうか。

垢をこねた人形から誕生!

画像:シヴァとパールヴァティ Public Domain

ガネーシャは女神パールヴァティの子で、彼女が自分の身体から出た垢(あか)をかき集め、作った人形に魂を吹き込んで創造しました。

色んな意味でドン引き不可避ですが、彼女がそんなことをしたのも、夫の破壊神シヴァが原因と言えます。

なぜならシヴァは修行三昧・禁欲一筋で、妻のパールヴァティに目もくれず、子作りに非協力的だったからです。

パールヴァティが不倫に走らず、自分の身体だけで子作りを成し遂げた以上、誰から責められる筋合いはないでしょう(責める人もいないと思いますが)。

かくしてパールヴァティの「愛情と垢と寂しさと貞節の結晶」として誕生したガネーシャ。この時点では、完全な人間の姿をしていました。

母の愛情に育まれ、すくすくと成長したガネーシャは、ある日こんなことを頼まれます。

パ「これからお母さんは入浴をしますが、誰が来ても決して浴室に入れてはいけませんよ。いいですね」

ガ「わかったよ、お母さん。見張りは僕に任せておいてね」

というわけでパールヴァティは入浴し、ガネーシャは入り口の見張りに立ちました。

その時、折悪しくシヴァが帰って来たのです。

シヴァは、ガネーシャがパールヴァティの子=自分の子とは知りませんし、ガネーシャは、シヴァが母の夫=自分の父とは知りません。

ガネーシャは「誰が来ても、決して中に入れてはいけない」という母の言いつけを守り、果敢(恐れ知らず?)にもシヴァを制止しました。

父親シヴァと初対面

画像 : シヴァ神(イメージ)

ガ「恐れ入りますが、ここから先は何人たりとも通すわけには参りません」

これを聞いたシヴァは激怒します。
久しぶりに帰宅したら、見知らぬ子供が生意気にも「立ち入り禁止だ」などとぬかすのだから、まぁ無理もありません。

この奥で、我が妻パールヴァティは不貞にでも及んでいるのだろうか……一抹の不安がシヴァの怒りを煽り立てます。

シ「何だとこの野郎!」

なんとシヴァは、一刀でガネーシャの首を刎ね飛ばしてしまいました。刎ねられたガネーシャの首は、そのまま万里の彼方へ飛んでいってしまいます。

「ふん、口ほどにもないわい」……刀を納めたシヴァが中に入ると、入浴を済ませたパールヴァティが一人でいました。

あぁよかった。我が妻が不貞などはたらくはずがなかろう……シヴァは安心してパールヴァティに声をかけます。しかしパールヴァティは気が気ではありません。

シヴァが浴室に入ってきたということは、ガネーシャに会っているはず。面識のない二人がいきなり顔を合わせれば、トラブルになりかねません。
また、ガネーシャが仕事をサボってどこかへ行ってしまっても、それはそれで心配です。

パ「あの、入り口に男の子がいませんでしたか?」

パールヴァティの心中を知るはずもないシヴァは、こともなげに答えました。

シ「あぁ、そう言えば生意気なガキが『何人たりとも立ち入るな』などとぬかすから、一刀で……」

聞いた瞬間、パールヴァティが激怒したのは言うまでもないでしょう。

間に合わせでゾウの首を……

画像 : たまたまゾウがいたから……(イメージ)

パ「あなたは私の大切な、たった一人の息子に、何とむごいことをしてくれたのですか。何が何でも息子の頭を探して生き返らせなさい。さもなくば……」

その先は、恐ろしくて言えません。あえて言うなら破壊神カーリー(パールヴァティの最終形態。いわば狂戦士モード)に変身して、世界を破壊しかねない勢いです。

これにはシヴァも震え上がり、ガネーシャの首を探すために飛び出していきました。何としても首を見つけなければ、生きて帰れない覚悟だったかも知れません。

それにしても、首を見つけられたところで、生き返らせることができるのでしょうか。できてしまう辺りが神話らしい大らかさと言えます。

さぁ無駄話はこれくらいにして、シヴァは必死にガネーシャの首を探しました。

しかし、シヴァがよほど強い力で刎ねたのか、どこを探しても首は見つかりません。

ほとほと困り果てたシヴァは、部下に「この森を探して、最初に見つけた動物の首を持って来い!」と命じました。

何と投げやりな……果たしてゾウがいたので、部下はゾウの首を持ってきて、ガネーシャを生き返らせることができたのです。

つまり、ガネーシャの頭がゾウであるのは単なる偶然に過ぎず、何ならネズミやトラだった可能性もあるのですね。まったく、ゾウにしてみれば災難以外の何ものでもありません。

それにしても、頭がゾウなら人格もゾウになりそうなものですが、古代インドでは心≒人格は胸に宿るものと考えられたようです。

果たしてパールヴァティは赦してくれたのか……慈愛深い彼女ですから、どんな姿(それこそゾウの頭)であっても、元気でいてくれたらそれで十分だったのかも知れませんね。

終わりに

画像 : ガネーシャ(イメージ)

かくしてガネーシャは「ゾウの頭に、人間の身体」という、世にも不思議な姿に生まれ変わったのでした。

牙が片方折れているのは、ペン代わりに折ったとか、怒って月に投げつけたとか言われています。

なぜ人間の身体なのに腕が四本あるのかと言われたら、それは「インド神話あるある」ということで納得してもらいましょう。

ガネーシャは別名をガナパティ、ヴィナーヤカとも言い、インド各地で絶大な人気を集めてきました。

それもそのはず、ガネーシャはあらゆる障害を取り除き、商売繁盛や学業成就などにご利益があるからです。

インド人でガネーシャを拝まない人はいないとも言われるくらい、現世利益を何でも叶えてくれる……ちょっと俗っぽい神様なのかも知れませんね。

今度ガネーシャの置き物を見かけたら、今回のエピソードを思い出すと、楽しいひとときを過ごせることでしょう。

※参考文献:
・田中於菟弥『世界の神話6 インドの神話-今も生きている神々』筑摩書房、1982年10月
文 / 角田晶生(つのだ あきお) 校正 / 草の実堂編集部

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