城,神社寺巡り

「やまがた出羽百観音の第一歩」最上三十三観音とはどんな巡礼か

観音菩薩が三十三の姿に変化し、現世に生きる人々を救ってくださる。

その信仰に基づき、観音菩薩を安置する三十三の霊場を巡拝する「三十三観音霊場めぐり」は、古くから日本各地で受け継がれてきました。

巡礼を重ねることで、観音菩薩の慈悲にあずかり、厄除け・無病息災・現世安穏・心願成就など、広大無辺の功徳を授かると信じられてきたのです。

山形県には、最上・庄内・置賜の三地域にそれぞれ三十三観音が受け継がれており、それらをあわせて巡る壮大な巡礼が「やまがた出羽百観音」です。

これから始まる札所巡りの旅、その第一歩として、「最上三十三観音」の世界をご紹介します。

人々の祈りの積み重ねに触れていく「最上三十三観音」

画像:最上地方の棚田風景(写真:やまがたへの旅)

山形県は、東北地方の日本海側に位置し、東京からおよそ300キロメートル北にあります。

県庁所在地の山形市までは、山形新幹線で約3時間。車でも高速道路を利用すれば、5時間ほどの距離です。

その山形県の北東、内陸部に広がるのが今回紹介する「最上三十三観音」がある最上地域。
東は奥羽山脈を隔てて宮城県と接し、西は出羽山地を越えて庄内へ、南は村山葉山・実栗屋峡を境に村山地域へ、そして北は加無山を越えて秋田県へと続いています。

さて、地図の上の説明はこのくらいにしておきましょう。

大切なのはこの土地に点在する観音堂が、どのように人々の暮らしと結びついてきたか、ということです。

画像:第1番札所・若松 鈴立山 若松寺(写真:やまがたへの旅)

「最上三十三観音」は、一番札所・若松(鈴立山 若松寺)から番外札所・世照(臥龍山 天徳寺)まで、あわせて三十四の札所からなり、その始まりは室町時代にまで遡ることができると伝えられています。

この霊場の由来として、いまも語り継がれている一つの悲しい伝説があります。

かつての山形城の城主、最上家四代当主・満家。
その長男・頼宗の一人娘、光姫は、あまりの美しさゆえに争いの種となり、自身をめぐる争いで命を落とした武将の死を深く悲しみ、出家します。

そして、老人の姿となって現れた観音様の導きによって、この地に点在する三十三の霊場を巡った。
それが、「最上三十三観音」の始まりであると伝えられているのです。

こうした成り立ちを持つ霊場だからこそ、札所の多くは、古い街並みや集落の中にひっそりと佇んでいます。
観音堂の姿はそれぞれに個性があり、どこか懐かしく深い趣を湛えています。

画像:第18番札所・岩木 恵日山 慈眼院(写真:やまがたへの旅)

また、この地域の札所には、堂内に上がって座してお参りできる観音堂が多く見られます。
村山地域に伝わるムカサリ絵馬をはじめ、さまざまな祈りの形が絵馬となって奉納されているのも大きな特徴です。

南は上山市から、北は秋田県境に近い鮭川村まで。
札所の多くは、最上川の流れに寄り添うように点在しています。

札所巡りは、単なる名所めぐりではありません。
観音堂を訪ね歩くたびに、この土地の歴史と人々の祈りの積み重ねに触れていく旅でもあるのです。

車で巡る二泊三日のモデルコース

画像:第30番札所・丹生村 鷹尾山 般若院(写真:やまがたへの旅)

札所巡りに厳格な決まりはありません。

最初に手を合わせるのが何番札所でもよく、順番通りである必要もありませんし、一度の巡礼で全てを回り切る必要もありません。徒歩でも自転車でも車でもよく、仕事や体調、その時々の事情に合わせて自分の歩幅で巡ればOKです。

今回は忙しい方でも回りやすいよう、「最上三十三観音札所別当会」が勧める車でのモデルコースをたどってみました。

【1日目】
若松(1番)→山寺(2番)→千手堂(3番)→圓應寺(4番)→唐松(5番)→平清水(6番)→岩波(7番)→六椹(8番)→松尾山(9番)→上ノ山(10番)→高松(11番)→長谷堂(12番)→三河村(13番)→岡村(14番)→落裳(15番)→長岡(16番)→長登(17番)→岩木(18番)

この日の宿は、湯の町として知られるかみのやま温泉や天童温泉がおすすめです。

画像:かみのやま温泉(写真:やまがたへの旅)

【2日目】
黒鳥(19番)→小松沢(20番)→五十沢(21番)→塩ノ沢(28番)→川前(26番)→深堀(27番)→大石田(29番)→尾花沢(25番)→上ノ畑(24番)→六沢(23番)→延沢(22番)→丹生村(30番)

この日の宿泊は、山あいに風情ある湯治場として名高い銀山温泉、赤倉温泉、瀬見温泉などがよいでしょう。

画像:雪の銀山温泉(やまがたへの旅)

【3日目】
この日は、いよいよ結願の札所へと向かいます。

富沢(31番)→世照(番外)→太郎田(32番)→庭月(33番・結願)

「最上三十三観音」の志納金について

画像:最上三十三観音御朱印帳(写真:やまがたへの旅)

「最上三十三観音」巡りにおける志納金は、次の通りです。

●笈摺(おいずり):200円(二印)※三印は300円
●朱印帳:300円(揮毫と三印)
●掛軸:500円(揮毫と三印)
●御影(おすがた):200円(印なし)※朱印一印付きは300円
●朱印一印につき:100円
●代筆:朱印帳150円・掛軸250円

巡礼は、祈りの旅であると同時に、観音堂を守り続けてきた人々への感謝を表す行い。
志納金は、観音堂の保護やそれに関わる人へのお礼です。

さて、「最上三十三観音」の概要、お分かりいただけましたでしょうか。
次回からは、このモデルコースに沿って、いよいよ一札所ずつご案内してまいりましょう。

観音堂と観音菩薩を訪ね歩く旅が、ここからスタートします。

※参考文献
山形札所めぐり編集室(高野晃彰)著 『やまがた出羽百観音札所めぐり』メイツユニバーサルコンテンツ
文:撮影/高野晃彰 校正/草の実堂編集部

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編集プロダクション「ベストフィールズ」とデザインワークス「デザインスタジオタカノ」の代表。歴史・文化・旅行・鉄道・グルメ・ペットからスポーツ・ファッション・経済まで幅広い分野での執筆・撮影などを行う。また関西の歴史を深堀する「京都歴史文化研究会」「大阪歴史文化研究会」を主宰する。

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