事件史

豊田商事事件 ~被害2000億円以上の日本最大の詐欺事件

日本最大の詐欺事件

豊田商事事件 ~被害2000億円以上の日本最大の詐欺事件

※出典 Twitter

2019年現在でも、日本でも最大の約2,000億円の被害総額と言われている巨額詐欺事件が豊田商事事件です。

この事件は1980年代に社会問題ともなった、主に老人を狙った悪質な詐欺でしたが、会長を務めた首謀者の永野一男多数のマスコミ・報道人の衆目の前で刺殺されるという衝撃的な結末を迎えたことでも知られています。

現在でも続く投資詐欺の原型とも言うべきこの事件について、改めて振り返ってみました。

金を餌にしたペーパー商法

豊田商事事件は被害者の数が3万人から4万人とも言われ、その被害額の合計は実に2,000億円にも及んだとされています。

これだけの人数、被害額がどのようにして造られたかといえば、俗に「ペーパー商法」と言われるやり方でした。

これは被害者に金(ゴールド)を販売したとしながらも、実際の「金」そのものは渡さずに豊田商事に預けるという形をとらせ、豊田商事が被害者の代わりに運用してその利益を還元すると謳ったものでした。被害者に「金」の代わりに契約証券純金ファミリー証券と呼称)だけを渡したことから紙=ペーパー商法と呼ばれました。

豊田商事事件 ~被害2000億円以上の日本最大の詐欺事件

出典 youtube

契約証券は渡すものの実際には金の購入はしておらず、代金を巻き上げるという手口の詐欺商法でした。

電話勧誘からの訪問営業

豊田商事は女性社員を使用した無差別な電話勧誘で被害者を募っていきました。

もちろん電話だけで契約できる訳ではなく、あくまで見込みとなりそうな老人を見つけ出すのが目的です。
ここで押しに弱そうな老人を抽出し、今度は実際の営業担当がその自宅に押し掛けて強引に契約に及ぶというのがその基本的な営業手法でした。

この営業で長時間に及ぶ粘りで根負けさせて契約させる押し売りはもちろん、独居の老人に対して情に訴える手法も駆使していたと言われています。例えば話し相手になる、近くまで来たので寄ってみたといった被害者に親近感を与えて同情を引く手口です。

こうしたやり方は、なにも豊田商事だけではなく様々な悪徳商法にも共通する手法ですが、豊田商事の場合これを大掛かりに、会社組織として徹底して実行したものと言えました。

ペーパー商法自体は合法

実際には、被害者の家族が不審に気付いて弁護士に相談するという動きも早い時期からあったようです。

しかし「ペーパー商法」自体は実際に「金」が購入されているのであれば詐欺にはあたらないため、その立証が必要としてすぐには事件化されない状態にありました。

また豊田商事が巧妙だったのは、明らかな詐欺と指摘されないよう、「金」の運用益と称する金額を実際に被害者に支払っていたことがあげられます。このことで被害額・人数が雪ダルマ式に膨れ上がっていきました。

しかしその支払いの実態は「金」は未購入なので運用もできるハズもなく、新たに契約させた被害者から騙し取った現金を充当したものでした。

永野会長刺殺と今も継承されている手口

しかし遂にその強引な勧誘手法が社会会問題となり、司法が重い腰を上げて捜査に乗り出す事態となりました。

そして前述のように1985年(昭和60年)6月18日、豊田商事の会長であった永野一男が大阪の自宅マンションで逮捕秒読みとして報道陣が詰めかけている中、突如乱入した自称右翼を名乗る男二人に刃物で刺殺されるという衝撃的な事態を招きました。

豊田商事事件 ~被害2000億円以上の日本最大の詐欺事件

出典 youtube

犯人らは、「被害者から殺害を頼まれた」と述べ、マンションを出たところで警察に逮捕されました。

この事件をきっかけとして豊田商事は終焉を迎えましたが、騙し取られた金額が全額戻った訳ではないこと、この後にも豊田商事の手法を踏襲した詐欺が跡を絶たないことなど、日本の社会に大きな禍根を残しました。

また豊田商事に務めていた人物らが直接的に新たな詐欺事件を引き起こすなど、その詐欺のノウハウは今でも継承されています。

関連記事:
戦後の伝説的な詐欺・現在でも続くM資金詐欺とは?
天下一家の会 〜阿蘇にピラミッドを建てたネズミ講の元祖
刑務所の食事は本当においしいのか?【実体験】

豊田商事の営業マニュアルが掲載されている本

swm459

投稿者の記事一覧

学生時代まではモデルガン蒐集に勤しんでいた、元ガンマニアです。
社会人になって「信長の野望」に嵌まり、すっかり戦国時代好きに。
野球はヤクルトを応援し、判官贔屓?を自称しています。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 24の人格を持つ ビリー・ミリガン 【映画にもなった多重人格者】…
  2. 刑務所での詳しい生活状況【職業訓練、起床消灯、炊場】
  3. 精神疾患・発達障害は危ないのか?犯罪との関係性
  4. 刑務所の休日と共同室の生活について
  5. 【犠牲者1400人以上】日本史上最悪の海難事故~ 洞爺丸事故とは…
  6. ミュンヒハウゼン症候群 「病気のふりして周りの気を引くかまって…
  7. 中国詐欺グループの手口について調べてみた 「電話詐欺、裏口入学詐…
  8. 『地下鉄サリン事件から30年』後継組織アレフに参加する若者が増加…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

もう中華系だからとは言わせない!HUAWEI端末の本気

家電に詳しい人でも「HUAWEI(ファーウェイ)」の名前は聞いたことはないかもしれない。しかし、…

聖武天皇は孝謙天皇の次をどうするつもりだったのか?

和銅3年(710)から延暦13年(794)まで84年間続いた奈良時代は、聖武天皇・光明皇后・孝謙(称…

ニシキヘビはどんな味? 「美味しく栄養価が高く、生産効率も高かった」

2024年3月14日付けの科学誌「Scientific Reports」に、2つのヘビ養殖場で行われ…

人生訓から特殊な性癖まで?『古今狂歌袋』から面白い7首を紹介【大河べらぼう】

江戸時代、五七五七七の和歌に風刺や諧謔のスパイスを加え、人々の本音を詠んだ狂歌。テーマは詠み…

【美人すぎて敵将も虜に】イタリアの女傑カテリーナ 「子はここからいくらでも産めるわ」

文化が花開き、多くの都市国家や小君主国が乱立していたルネサンス期のイタリアにおいて、その美貌と冷…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP