乱獲の悲劇
かつて北アメリカ大陸の大地には約6000万頭ものバッファローが群れを成し、大陸を縦横無尽に駆け巡っていました。
しかし、19世紀になりヨーロッパからの移民が本格的になると、バッファローは彼らの手によって凄まじい勢いで激減していきます。
今回はアメリカ大陸発展の裏で、絶滅寸前まで追いやられてしまった、悲しきバッファローたちの歴史を調べてみました。
バッファローとは?
最初にバッファローの名称と生態について簡単にご説明します。
まず、この「バッファロー」という名称なのですが、もともとは「水牛」を意味しており、正しくは「アメリカバイソン」が正しい名称です。
アメリカに水牛はいなかったのですが、ヨーロッパからの移民らがアメリカバイソンをバッファローと呼んでいたため、「バッファロー」の名が通称となったと考えられます。
(※以下通称のバッファローで記述いたします)
生態は草食性で体長は2.0~3.5m、体重は320~1400kgと個体差があります。
大人しいのですが警戒心が強く、ひとたび怒りだすと手に負えなくなり、その巨体と角から繰り出すタックルはヒグマをも一撃で葬るほどです。
また鈍重そうですが、最高時速は70km/hに達し、ジャンプも高さ1.8メートルもの物を跳び越える脚力を持つため、生身の人間が相手にできる動物ではありません。
白人移民
もともと北アメリカ大陸には約6000万頭近くのバッファローが生息しており、原住民であるインディアン(ネイティブアメリカン)たちの衣食住を兼ねる豊富な資源でした。
しかし、17世紀に白人と呼ばれるヨーロッパ移民が北アメリカ大陸に移民を開始すると、農業や牧畜を妨害する害獣として駆除されるようになります。
さらに18世紀になると、白人による猟銃を使った狩猟が行われるようになり、バッファローの生息数は急激に減少し始めます。
1830年ごろには、大平原に生息する個体も壊滅的となり、白人に生活を追われたインディアンたちもバッファローの乱獲に手を染める事態に陥ってしまいます。
激減するバッファロー
1861年にアメリカ南北戦争が勃発すると、バッファローたちも戦争の余波を受けることとなります。
大陸の各地に輸送用の鉄道線路が敷設されると、大量輸送が可能となったためバッファローの毛皮や肉の需要はさらに高まります。
他にも列車から銃でバッファローを狩猟するツアーなどが催されたため、一般大衆にとってバッファローを狩るのは娯楽の一つだと定着し始めます。
一方で南北戦争が激化すると、兵士たちの間でフラストレーションが溜まり始め、ストレス解消のため野生のバッファローを撃ち殺すなどの行為が横行します。
しかし、兵を指揮する将軍たちはそれを咎めることもなく、むしろ最新のライフルなどが支給された際には、バッファローを使って試し打ちを奨励するほどでした。
1865年に南北戦争が終結しても、バッファローの乱獲は止まることはなく、西部開拓民による乱獲は増々エスカレートし、1870年ごろには一人当たり一日50頭のバッファローが仕留められます。
また、農地拡大によりバッファローの住処(すみか)は失われ、持ち込まれた牛などの家畜から発生した病原菌などにより、バッファローの生活圏はさらに減少していきました。
絶滅寸前と保護活動
1860年ごろに一時期バッファローを保護するべきとの声が挙がるのですが、多くの白人にとって敵であるインディアンの貴重な資源であるバッファローは、むしろ取り除くべき障害でしかありませんでした。
実際、南北戦争で活躍した北軍の将軍フィリップ・ヘンリー・シェリダンは
バッファローを消滅することが出来れば、インディアンはおのずと制圧できる
と発言しており、兵士やハンターたちに狩猟を推奨していたのです。
その後もバッファローの減少を食い止めるべく1874年と1876年に保護法案が提出されるのですが、先のインディアン問題や皮革業者の生活保障などの理由から議会の承認は降りず、問題は先送りにされ続けます。
気づけば1890年代にはバッファローの数は1000頭未満にまで落ち込み、1905年にようやくアメリカバイソン協会が発足して、セオドア・ルーズベルト大統領が保護区の設立に動き出すときには、バッファローの数は500頭ほどしか残っていませんでした。
その後
1907年、セオドア・ルーズベルト大統領の下、バッファロー保護区が正式に制定。
1970年には15,000 – 30,000頭まで数は回復します。
2014年の報告によると、北アメリカの約4,000の農場や牧場で、約300,000頭が商業的に飼育・繁殖されており、2016年にはバラク・オバマ大統領によってアメリカバッファローは正式に「国の哺乳類」へと指定されました。
バッファローの数は絶滅寸前のころに比べれば確かに回復はしたものの、そのほとんどは商業用であり、野生個体や保全目的で飼育されている個体群は非常に少ないのが現状です。
また、近年は生息地の破壊だけでなく、亜種間の交雑などによる遺伝子汚染、牛結核やブルセラ症などの感染症の伝播による影響が懸念されており、今後も野生個体のバッファローの保護には多くの注意が払われると考えられています。
ヨーロッパ人とアメリカ人はよくもまあコレで日本の捕鯨を否定できるよなぁ
邪魔な種族は徹底的に虐殺する民族性…