中国史

中国語における外来語について調べてみた 「ホットドッグは熱狗、Facebookは臉書」

日本語における外来語

外来語とは、他の言語から借用された言葉のことだ。

日本語においては、もともと存在しなかった概念や物事が日本に入ってきた際に、その言葉も一緒に導入されることがある。そのような外来語は、そのままの形で日本語に取り入れられることもあれば、カタカナで表記されることが多い。

カタカナで表記されることで簡単に識別できる。それによって、その言葉が元々日本に存在したものか、外国から入ってきたものかが分かる。カタカナは非常に便利である。

外来語は、日本語の豊かさと多様性を示すものでもある。異なる文化や知識が日本にもたらされ、新たな表現や概念が広がっていく。また、外来語の使い方や意味も、日本独自の解釈やニュアンスが加わることもある。

鎖国時代にはオランダから食べ物や商品と共に新しい言葉が伝わってきた。そして明治時代以降、英語やフランス語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語由来の単語が外来語として広く使われるようになった。

現在、外来語の80%は英語由来だと言われている。医療の現場ではドイツ語由来の用語が多く使われており、芸術関連の用語はフランス語由来が目立つ。

中国語における外来語

では、全ての言葉を漢字で表記する中国語では、どのように外来語が表記されるのだろうか。興味深い話である。

ちなみにある資料によれば、外来語が最も少ない言語は中国語だとされている。中国語の語彙の中で外来語はおよそ2%程度だと言われている。

とは言え、「中国語における外来語」といっても、中国に本来存在しなかったものは日本と同じくたくさん輸入されている。それらは二つのタイプに分けられる。

一つは「意味を意訳して表記したもの」であり、もう一つは「発音が似ているために当て字で漢字を使って表記したもの」である。

意訳された言葉は興味深く、「なるほど!」と感じるものが多い。

では、いくつかの例を見てみよう。

意訳外来語

中国語における外来語について調べてみた

画像 : ホットドッグ 筆者撮影

筆者が以前、中国の夜市に行った時、大きな文字で「熱狗」と書かれた看板を見つけた。一体何を売っているのだろうか、と興味津々で近づいてみることにした。

そこにはホットドッグを売っているお店があったのである。中国語で「狗」とは犬のことを指す言葉である。

つまり、「熱い犬」ということで、ホットドッグのことだったのだ。ちょっとした「アハ体験」であった。

また、「ペット」は中国語で「寵物(ちょうぶつ)」と表現される。「寵」は条件なく可愛がるという意味を持つ言葉であり、ペットは条件なく可愛がられる存在であることを表している。その名前から完全に意味が取り入れられているのである。

他には、Facebookは「臉書(りんしょ)」と表現されている。「臉」は顔という意味を持ち、「臉書」は顔の本であることからFacebookとなったのだ。

さらに、アメリカの大リーグ野球チーム「レッドソックス」は中国語では「紅襪(ほんわ)」と表現される。「紅」は日本語と同じく赤いことを意味し、「襪子」は靴下を指す言葉である。つまり、赤い靴下という意味になり、それがレッドソックスというチーム名に付合しているのだ。

私たち日本人も「レッドソックス」と聞くと意味は赤い靴下であることは分かっていても、チーム名として直訳すると微妙な感じがするかもしれない。しかし、カタカナがあることでチーム名として成立していると感じられるのだ。

さらに、アメリカの人気漫画キャラクターであるスーパーマンは中国語では「超人(ちょうじん)」と呼ばれる。ここで「超」はスーパーという意味を持ち、「超人」は超越した力を持つ人間という意味になる。

また、英語で中古品を表す「Secondhand」は中国語では「ニ手(にて)」と表現される。「ニ手」は「セカンド」を意味する「二」と、「手」を組み合わせた言葉となっている。

発音由来の外来語

中国語における外来語について調べてみた

イメージ画像 外国人の名前

外国語の発音に似た言葉を当て字として使った外来語も多い。

特に、外国人の名前はほとんどそうである。しかし日本人の英語の発音は特異なものであり、なかなか理解されない。よく「ジャパニーズイングリッシュ」と言われるように、日本人の英語の発音は外国人からすると、まるで日本語の外来語を話しているかのように聞こえるそうだ。

中国語では、ロシアの大統領プーチン氏は「普京」と表記されるが、実際の発音は「プージン」となる。また、前アメリカ大統領トランプ氏は「川普(チュアンプ)」と発音されている。

日本語由来の外来語

それでは逆に、日本語由来の外来語について触れてみよう。

特に台湾においては、日本語由来の外来語が多く使われている。

例えば、「人気」である。台湾の商品には「人気NO.1」と書かれているものが多いのである。

他にも「市場」「交通」「鉄道」「電話」といった言葉も、日本語由来の外来語として日常的に使用されている。

電話に関しては1876年に発明され、日本に伝わった際には最初は「伝話」と呼ばれていた。それは話を伝える道具を指す言葉であり、後に1883年以降に英語の”Telephone”を意訳した「電話」となった。

中国語は歴史の深い言語でありながら、時代の変遷とともに変化してきた。多くの外来語も上手く取り入れられているのだ。

特に意訳された言葉は、漢字の理解ができる日本人にとっては非常に興味深いものとなっているのである。

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【古代中国の宇宙人遺跡?】 三星堆遺跡と「目が縦」だった謎の王様…
  2. 古代中国の封建社会の階級制度「三六九等」とは?
  3. 「意見をいう者は全員処刑」 商鞅の恐怖政治とは? 【漫画キングダ…
  4. 中国の人身売買が無くならない理由 「8人の子供の母親事件」
  5. 隋朝末期の3人の幻のラストエンペラー【皇帝という名の貧乏くじ】
  6. 古代中国の「地下動物園」が発見される ~約2200年前の【前漢文…
  7. 『古代中国遺跡から宇宙船のハンドルが発掘?』 謎の三星堆遺跡 「…
  8. 『古代中国』夫婦の寝室に侍女がいた理由とは?~ただの世話係じゃな…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

引き抜くと人が死ぬ?古代から恐れられた怪植物・マンドレイクの伝承

マンドレイク(Mandrake)という植物をご存じだろうか。別名マンドラゴラ(Man…

【千社札を広めた男】 江戸時代の奇人・天愚孔平とは 「大ボラ吹きの奇人が生んだ文化」

天愚孔平とは天愚孔平(てんぐこうへい)とは、江戸時代中期から後期にかけて「江戸随一の大ボ…

『虎に翼』 航一(演・岡田将生)の暗い過去「総力戦研究所」とは?「日本必敗」を予測

朝ドラ『虎に翼』では、星航一が自身の暗い過去を語り、戦争を止めることができなかった苦悩を吐露しました…

ミイラとなった奥州藤原氏 「藤原清衡ら4人の身長や血液型が判明」

平安時代、朝廷との円満な関係と信頼関係を築き、およそ100年もの間、平泉を中心に自治支配を行い独自の…

中国語における外来語について調べてみた 「ホットドッグは熱狗、Facebookは臉書」

日本語における外来語外来語とは、他の言語から借用された言葉のことだ。日本語においては、も…

アーカイブ

PAGE TOP