宇宙

2024年中に計画されている宇宙探査ミッション9選 「月、金星、木星などを探索」

2024年中に計画されている宇宙探査ミッション9選

画像: 宇宙の探査イメージ credit by JAXA

2024年は宇宙探査の多くの重要なミッションが予定されており、非常に重要な一年となる見込みだ。

上半期には、月面に4つの探査機が着陸する予定で、そのうち米国からは2機、そして日本と中国からそれぞれ1機が参加する。

下半期には、欧州の新型ロケット「アリアン6」が初めて打ち上げられるほか、小惑星「ディモルフォス」への再探査や、木星の衛星「エウロパ」における生命の可能性を調査するミッションなどが計画されている。

本稿では、2040年に打ち上げ予定の宇宙探査ミッションを9つチョイスし、その概要を説明する。

1. 月着陸機ペレグリン(Peregrine moon lander)

2024年中に計画されている宇宙探査ミッション9選

画像: 月着陸機ペレグリン [CC BY 2.0 Deed]

アポロ計画が終了して50年以上経った今、民間企業が月に着陸する準備をしている。

ピッツバーグを拠点とする「Astrobotic」と、ヒューストンを拠点とする「Intuitive Machines」の2社が、今年早々、それぞれ月に着陸船を打ち上げる予定だ。

Astroboticの箱型で4本足の「ペレグリン月着陸船」は、すでに2024年1月8日に、フロリダ州ケープカナベラルから無事打ち上げられた。

しかし、分離後に推進システムにトラブル(バルブ故障の可能性)が生じ、月面軟着陸が困難となったため、地球へ帰還し大気圏突入で焼失することなった。

さまざまな政府機関や民間企業から提供された20のペイロードを搭載したこの着陸船は、着陸地点に隣接する、「グリトヒューゼンドーム」と呼ばれる謎の多い岩を初めて調査し、水やプレートテクトニクスがない月で、どのようにしてこれらのドームが形成されたのか調査するはずだった。

2024年中に計画されている宇宙探査ミッション9選

画像: 月着陸機Nova-C [CC BY 2.0 Deed]

悪天候により当初の予定よりも遅れたが、2月中旬には、「Intuitive Machines」の「Nova-C」と呼ばれる月着陸機も打ち上げられる。

Nova-Cは「月面の天然資源を探査および処理する技術をテストする」ための着陸機の1つで、IM-1ミッションでは、月の南極近くの「Malapert Aクレーター」に着陸する予定だ。

2. 小型月着陸実証機 SLIM

2024年中に計画されている宇宙探査ミッション9選

画像: 小型月着陸実証機 SLIM 着陸フェーズ credit by JAXA

2024年1月20日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、月面の近く側に「月のスナイパー」の愛称で呼ばれる、小型月着陸実証機「SLIM」の着陸を予定している。

打ち上げは9月7日に予定どおりに行われた。

SLIMプロジェクトの目標は、「降りやすいところに降りる」探査ではなく、「降りたいところに降りる」探査を実現するために、小型の探査機によって、月への高精度着陸技術の実証することだ。

具体的には、月面へのピンポイント着陸、誤差100メートルを目標に軟着陸を目指すという。

今回は、月面の神酒の海のクレーター縁、すなわち月がどのように形成されたのかを解明する手がかりとなる可能性がある場所に、100メートル以内の誤差で着陸を予定している。

もし成功すれば、日本はソ連、アメリカ、中国、インドに次いで、月面に探査機を着陸させた5番目の国となる。

3. 中国の月面遠側からのサンプルリターンミッション(嫦娥6号)

画像: 中国の月面探査機「嫦娥6号」 [CC BY 3.0]

 

中国は、2024年5月、「嫦娥6号月探査機」を打ち上げ、月遠側からサンプル(岩石)を採取する計画だ。

中国の宇宙局は、探査機の着陸地点を明らかにしていないが、着陸地点は、「南極エイトケン盆地」になると予想される。

「南極エイトケン盆地」は、40億年前の衝突盆地であり、月の初期の進化や、地球、太陽系全体の進化に関する重要な手がかりが残されていると考えられている。

なお「遠側」とは、地球から見て月面の裏側のことを指す。月は地球の自転とほぼ同期しており、常に同じ面を地球に向けている。そのため、地球から見ると、月面の裏側は常に暗闇に包まれており、直接観測することができない。

4. 欧州、独自ロケットの打ち上げ再開! アリアーン6号の初打ち上げ

画像: 大型ロケット「アリアーン6号」 credit by ESA – D. Ducros

長い延期を経て、欧州が誇る大型ロケット「アリアーン6号」の初打ち上げが、2024年6月15日から7月31日の間に予定されていることが、欧州宇宙機関(ESA)から発表された。

実は、欧州は現在、宇宙への独自のアクセス手段がない。先代のアリアーン5号は2022年7月に引退し、小型ロケットのベガCも技術上の問題で運用停止中なのだ。

そのため、「アリアーン6号」の初打ち上げ成功は、欧州にとって大きな意味を持つ。

衛星を軌道に乗せるための、自前のロケットによる打ち上げ再開が実現するからだ。

5. ESAのヘラ探査機、小惑星ディモルフォスの詳細調査へ

画像: ディモルフォス-ディディモス系付近のヘラ探査機 [CC BY-SA IGO 3.0]

小惑星が地球に衝突する可能性がある場合、その軌道を逸らすことで衝突を防ぐことができると考えられており、その方法の1つが、人工物を小惑星に衝突させて、その軌道を変化させるというものだ。

2022年9月、アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)の共同ミッションである「ダブル・アステロイド・リダイレクション・テスト(DART)」によって、この方法が実証された。

DARTは、地球から約1,100万km離れた小惑星ディモルフォスに時速約2万km(秒速約6km)で衝突し、その軌道を変えることに成功したという。

この衝突の余波を研究するため、続編ミッションである「ヘラ」が2024年10月に打ち上げられ、2026年末または2027年初頭にディモルフォス周辺に到達予定だ。

このミッションでは、DARTが衝突によって残したクレーターを研究し、ディモルフォスとその小惑星の伴星であるディディモスの物理的特性を記録することを目指している。

6. 世界初の火星衛星サンプルリターンミッション

画像: 火星衛星探査機MMX搭載ミッション機器コンフィギュレーション図 credit by JAXA

火星の2つの衛星、フォボスダイモスの起源については、何十年もの間、謎に包まれてきた。

これらの衛星は、別の天体から引き寄せられた小惑星であるか、かつて小惑星が火星の表面に衝突した後に、火星の破片が集まって衛星になった可能性がある。

日本は、この謎を解き明かすために、2024年9月にフォボスからサンプルを採取して地球に持ち帰るミッション「火星衛星探査(MMX)」を計画している。

火星の衛星フォボスからサンプルを採取するまでの手順は次のとおりだ。

1. 3つのモジュールからなる探査機を打ち上げる
2. 火星の周回軌道に進入後、フォボスの周回軌道に移行する
3. サンプル採取モジュールをフォボスの月面に着陸させる
4. 表面から10グラムの物質を採取する

計画では、MMX探査機は、採取したサンプルを積んで、2029年にオーストラリアの軍事施設であるウーメラ禁止区域に帰還する予定だ。

7. エウロパ・クリッパー(Europa Clipper)

画像: エウロパ・クリッパー by Kevin M. Gill is licensed under CC BY 2.0

木星の衛星であるエウロパは、地球の月よりも小さいものの、氷の下に地球の海の2倍の塩水があると考えられている。

NASAは、この小さな世界が生命に適した場所かどうかを調べるため、地球以外の海洋世界を探査する最初のミッションとして、2024年10月に「エウロパ・クリッパー」を打ち上げる計画だ。

エウロパの周りを直接周回するのではなく、探査機は2030年に木星の周回軌道に入り、木星の放射線を避けながら、エウロパの海の構造や成分を観測するために、断続的にエウロパを飛行する。

8. 「ブルー」と「ゴールド」の火星衛星

画像: NASAのEscaPADEミッションの衛星「Blue」と「Gold」 public domain

NASAは、火星の大気がどのように、いつ失われたのかを探るため、2024年10月に「ブルー」と「ゴールド」と名付けられた2つの衛星を打ち上げる予定だ。

この衛星は、カリフォルニア大学バークレー校が主導する「EscaPADEミッション」の一環であり、火星の大気が太陽風とどのように相互作用するかを研究することを目的としている。

計画では、衛星は2026年から、火星の周囲の異なる軌道から同時にデータを収集する予定だという。

9. 民間企業による初の金星探査(Venus Life Finder)

画像:生命の存在を探る金星探査機「Venus Life Finder」が金星に接近する様子 [CC-BY-4.0]

 

「ロケットラボ(Rocket Lab)」が開発した民間探査機「Venus Life Finder」は、2024年末に打ち上げられ、金星の大気中に存在する有機物、すなわち生命の可能性を示す物質を探す予定だ。

この探査機は、金星の大気中に存在する有機物、すなわち生命の可能性を示す物質を探すことを目的としている。

マサチューセッツ工科大学と共同で開発された、わずか直径40センチの探査機「Venus Life Finder」は、2024年12月30日に打ち上げられ、1年半かけて金星を目指す。

金星に到着後、この探査機は雲の中に、測定器を搭載した分析装置を投下する。

この分析装置は、3〜5分間かけて分子を分類し、生命の兆候を探す。

探査機が生命の兆候を発見できるかどうかが注目される。

さいごに

本稿では、すでに打ち上げられた探査機も含め、今年中に打ち上げられる予定の探査ミッションの概要を説明した。

機会があれば、打ち上げが延期になったミッションも含め、それぞれの探査ミッションについて掘り下げた説明をしたいと考えている。

2024年は、さまざまなタイプの探査機が打ち上げられ、宇宙探査にとって非常に重要な年になるだろうと予想されるが、ロケットの打ち上げが活発化すれば、宇宙ゴミ(デブリ)の増加も懸念される。

急速に増え続ける宇宙ゴミを、除去しようという取り組みについても、いずれ紹介したい。

参考 :
NASA – NSSDCA – Spacecraft – Details 他

 

lolonao

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フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
antiX Linuxを愛用中。頻繁に起こる日常のトラブルに奮闘中。二女の父だがフィリピン人妻とは別居中。趣味はプチDIYとAIや暗号資産、マイクロコントローラを含むIT業界ワッチング。

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