宇宙

NASAが警戒する危険な小惑星5選 「地球に衝突する可能性はどれくらいか?」

NASAが警戒する危険な小惑星5選

画像: 危険な小惑星たち [Space Reference]

地球は過去に幾度となく、小惑星や隕石、彗星などに衝突され、生物絶滅の危機にさらされてきた。

これから先も、長い目で見れば衝突が避けられないことも起こり得るだろう。

現時点で、地球に衝突するリスクが最も高い小惑星はどれなのか、衝突の可能性はどれくらいか、そしてそれらが衝突した場合、どれくらいの破壊力を持つのだろうか?

過去に衝突した小惑星: チクシュルーブ衝突体

NASAが警戒する危険な小惑星5選

画像: 地球に衝突するチクシュルーブ衝突体の想像図。手前には翼竜が描かれている。 public domain

約6,600万年前、市街地ほどの大きさの小惑星が地球に衝突した。

この衝撃により、72兆トンのTNT火薬の爆発に相当するエネルギーが放出され、現在のメキシコのユカタン半島に幅180キロメートルのクレーターができた。

チクシュルーブ衝突体と名付けられたこの小惑星(彗星だったとも)の衝撃は、恐竜の絶滅につながった白亜紀-古第三紀絶滅事件の原因の1つと考えられており、恐竜だけでなく、地球の種の約4分の3が絶滅した地球史上最大級の災害だった。

また、この衝撃は地球の気候にも大きな影響を与えた。

衝突によって放出された大量の塵やガスが、地球の太陽光をさえぎり、地球の気温を低下させたと考えられている。

この影響により、植物が大量に死滅し、食物連鎖が崩壊したのだ。

同様の壊滅的な衝突を防ぐために、NASAの地球近傍天体研究センター(以降CNEOS)は、潜在的に危険な小惑星の将来の軌道の長期的な分析を継続的に行うセンサーティ・インパクト・モニタリング・システムを運用している。

このシステムが、常に地球に衝突する可能性のある小惑星を監視と分析しているのだ。

そして、それらの情報は誰でも閲覧することができる。

本記事では、NASAが公開している情報をもとに、地球にとって大きな脅威となる可能性のある5つの小惑星を紹介する。

1. ベンヌ(Bennu)

NASAが警戒する危険な小惑星5選

画像: 小惑星ベンヌの軌道 [Orbit Viewer]

サイズ: 0.30 マイル (0.49 キロメートル)
質量: 7,400 万トン (6,700 万トン)

ベンヌ(Bennu)は、太陽系の中で地球に最も衝突の可能性が高い小惑星の1つだ。

ただし、まだ先の話で、2182年の9月24日に地球に接近するときでも、衝突する確率はわずか0.037%、つまり2700分の1程度と想定されている。

ベンヌは直径約0.49キロメートル、質量約7400万トンの炭素質小惑星で、20億年から7億年前に大きな小惑星から分離したと考えられており、その起源や歴史についてはまだ多くの謎が残されている。

NASAが警戒する危険な小惑星5選

画像: オサイリス・レックス探査機により高度24 kmから撮影されたベンヌ。 public domain

NASAは、ベンヌを詳しく研究するために、2016年9月にOSIRIS-REx宇宙探査機を派遣し、2023年9月にはベンヌのサンプルを地球に持ち帰った。

現在、世界中の研究者チームがベンヌの成分や構造を分析している。

画像: サンプル採取のイメージ public domain

もしベンヌが地球に衝突した場合、14億トンのTNT火薬が爆発したのと同じエネルギーが放出され、地球上の特定の地域で大規模な破壊を引き起こす可能性があるといわれている。

世界規模の壊滅を引き起こすほどの威力はないとしても、人口密集地帯に衝突した場合は、数百万人の犠牲者が出る可能性がある。

2. 29075 (1950 DA)

画像: 小惑星1950 DAの軌道 [Orbit Viewer]

サイズ: 0.81マイル (1.3キロメートル)
質量: 7,800万トン (71トン)

29075(1950 DA)も、地球に衝突する可能性が高い小惑星の1つだ。

1950年2月に最初に発見されたが、その後失われ、50年後の2000年11月に再発見された。

「1950 DA」は、鉄ニッケル含有量が高い、緩い岩の集まりの小惑星であると考えられており、直径約1.3キロメートル、質量約7800万トンと想定されている。

2880年3月16日に地球に接近する際、「1950 DA」が地球に衝突する確率は、0.0029%、つまり34,500分の1程度だ。

しかし、衝突した場合の被害は甚大なものとなる可能性がある。

「1950 DA」が地球に衝突した場合、750億トンのTNT火薬が爆発したのと同じエネルギーが放出され、地球規模の大災害を引き起こす可能性がある。

この大災害は、人類を絶滅させる可能性さえあるとされている。

3. 2023 TL4

画像: 小惑星2023 TL4の軌道 [Orbit Viewer]

サイズ: 0.20マイル (0.33キロメートル)
質量: 4,700万トン (4,300万トン)

2023年7月に発見されたばかりの小惑星「2023 TL4」は、潜在的に最も危険な小惑星の1つになる可能性があることを示している。

2023 TL4は、地球に接近する小天体としては比較的大きいものであり、衝突する可能性は低いものの、完全に排除することはできない。

そのため、天文学者は2023 TL4の軌道を追跡し、地球に衝突する可能性を再評価した。

2023年10月8日から10月19日にかけて行われた観測から、天文学者たちは、「2023 TL4」が2119年10月10日に地球に衝突する確率は、0.00055%、つまり181,000分の1程度であると算出した。

もしそのような衝突が起こった場合、「2023 TL4」は75億トンのTNT火薬が爆発したのと同じエネルギーが放出され、地球上の広範囲にわたる被害を引き起こす可能性がある。

4. 2007 FT3

画像: 小惑星2007 FT3の軌道 [Orbit Viewer]

サイズ: 0.21マイル (0.34キロメートル)
質量: 5,400万トン (4,900万トン)

2007 FT3」も、地球に衝突する可能性がある小惑星の一つだ。

しかし、2007年以降観測されておらず、その軌道も正確に把握されていない。そのため「失われた小惑星」と定義されている。

NASAは、この小惑星の軌道を推定し、2024年10月5日に0.0000087%、つまり1150万分の1の確率で、2030年3月3日に0.0000096%、つまり1000万分の1の確率で地球に衝突する可能性があるとしている。

衝突が起こった場合、2007 FT3 は26億トンのTNT火薬に匹敵するエネルギーを放出することになる。

これは、広範囲にわたる地域破壊を引き起こすほどの威力だが、地球全体を壊滅させるような大災害には至らないと考えられている。

5. 1979 XB

画像: 小惑星 1979 XBの軌道 [Orbit Viewer]

サイズ: 0.41マイル (0.66キロメートル)
質量: 3 億 9,000万トン (354メートルトン)

1979 XB」は、1979年12月11日に観測されて以来、約40年見失われており詳しい軌道は分かっていない。

そのため、この小惑星も「失われた小惑星」と定義されている。

CNEOSの科学者たちは、これまでの観測データを元に推定した結果、この小惑星が2113年12月14日に地球に衝突する確率は 0.000055%、つまり180万分の1程度であるとしている。

もし衝突が起こった場合、「1979 XB」は300億トンのTNT火薬が爆発したのと同じエネルギーを放出することになる。

これは、地球上の広範囲にわたる地域破壊を引き起こすほどの威力だが、地球全体を壊滅させるような大災害になる可能性は低いと考えられている。

かつて危険視された小惑星 アポフィス (99942 Apophis)

画像: 小惑星99942 アポフィスの軌道 [Orbit Viewer]

サイズ: 0.21マイル (0.34キロメートル)
質量: 2,700万トン (24メートルトン)

危険な小惑星について語る際に、「99942 アポフィス」は外せない。

この小惑星は、古代エジプトの太陽神ラーの敵である「破壊者 アペプ」にちなんだ不吉な名前を持ち、約20年間も危険な小惑星リストのトップに君臨していたからだ。

2004年6月に発見されたアポフィスは、地球に衝突する可能性が高い危険な小惑星の一つとしてすぐに特定された。

しかし、2021年にレーダー観測によって軌道が正確に測定され、その危険性は一変した。

天文学者たちは、幅340メートルのアポフィスが少なくとも100年間は地球に衝突する危険はないと結論付けたのだ。

そのため、現在はリストから外され「監視対象リスト」に移された。

つまり、2029年にアポフィスが地球に接近する際には、双眼鏡や望遠鏡で観察できるほど近くなる。

その距離は、なんと32,000キロメートルで、一部の人口衛星よりも近いのだ。

2036年と2068年に再び接近予定ではあるが、いずれも地球に衝突する危険はないとされている。

結局、どれくらい危険なのか?

画像 : トリノスケールのチャート。上ほど天体が大きく、右ほど衝突確率が高い。

小惑星が衝突するなんて恐ろしい話だが、 危険な小惑星リストにある全ての物体は、トリノスケールで「0」つまり「白」になっている。

1999年に国際天文連合が取り入れた「トリノスケール」という指数は、衝突の可能性と その影響によって0から10までのレベルで評価される。

レベル0、白ゾーンは衝突の可能性がほぼないことを示す。 これは地球を外れるだけでなく、大気圏で燃え尽きて脅威にならない小さな物体にも当てはまる。

一方、レベル8から10は赤ゾーンで、確実に地球に衝突する小惑星とされる。 被害は局地的な破壊(レベル8)から未曾有の地域的大災害(レベル9)、 世界的な気候変動による文明存続の危機(レベル10)まで様々だ。

現時点では、監視リストにはレベル0に近い物体はない。 ベンヌと1950 DAは衝突予測が100年以上先であるため、 トリノ指数(評価)は割り当てられていない。

NASAによれば、「今後100年間以上にわたって、重大な衝突リスクは確認されていない」とのことだ。

もちろん、まだ発見されていない潜在的に危険な物体があるかもしれない。

実際、何千もの「都市破壊者」や、ほんの一部ではあるが「惑星破壊者」も太陽の光の中で隠れている可能性はある。

だからこそ、CNEOSは近地球小惑星探査に常に目を光らせているのだ。

さいごに

地球にとって大きな脅威となる可能性があるとされる、5つの小惑星を紹介した。

NASAは、このような危険な小惑星を監視し、衝突の可能性が高まった場合は回避措置を検討している。

しかし、まだ発見されていない小惑星の存在の可能性も示唆されている。

また、様々な要因により突然軌道を変える小惑星もあるため、安心できない。

そのため、NASAのみならず、世界が協力しあい、地球に衝突する可能性のある小惑星や物体を監視し続ける必要がある。

参考 :
Small-Body Database Lookup
NASA’s most wanted: The 5 most dangerous asteroids in the solar system | Live Science

 

lolonao

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フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
antiX Linuxを愛用中。頻繁に起こる日常のトラブルに奮闘中。二女の父だがフィリピン人妻とは別居中。趣味はプチDIYとAIや暗号資産、マイクロコントローラを含むIT業界ワッチング。

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