思想、哲学、心理学

ソクラテスについて調べてみた

哲学の祖と呼ばれるソクラテスをご存知だろうか。名前は知っていても、その思想までは知らないという人が多いのではないだろうか。
哲学と言うと、難しい思想を想像されるだろうが、ソクラテスの思想は親しみやすいものである。古代ギリシアに生まれ、その思想ゆえに裁判にかけられたソクラテスの思想を、紹介していく。

生涯

ソクラテス

※ソクラテスの彫像。wikiより引用

ソクラテスは古代ギリシアの紀元前470年〜399年に生きていた哲学者である。

当時のギリシアは直接民主制が成立し、また、戦争も盛んに行われていた。ソクラテスは屈強な男性であったとされており、戦争にも参加していた。
ソクラテスの父の名はソプロニコス、石工であり、母はパイナレテ、産婆である。ソクラテスが生きていた古代ギリシアでは、ソフィストと呼ばれる学者が多く存在した。ソフィストとはもともと知者という意味であったが、ただ相手を言いくるめるだけの弁論術を用いて報酬を受ける者となってしまった。ソフィストたちの弁論術は当時の哲学を衰退させるものであった。
ソクラテスが用いた問答法はソフィストとは反対であった。そのためにソクラテスは中傷され、裁判にかけられる。「ソクラテスはポリス(国家)の神々を認めず、青年たちを惑わした」という理由で、彼は死刑判決を受けた。脱獄も可能であったが、それは法を破ることになり、不正だと言って毒杯をあおり、刑死したのであった。

ソクラテス の思想

ソクラテスの最も有名な思想が「無知の知」であろう。これは「自らの無知を自覚している」ということである。

デルフォイという聖地でソクラテスの友人、カレイポンは「ソクラテスよりも知恵のある者はいるか」と問うと、デルフォイの巫女は「ソクラテスよりも知恵のある者はいない」という神託を告げた。その神託をカレイポンから聞いたソクラテスは、神は嘘をつかないと信じ、その神託について「これは謎かけである」と解釈した。
ソクラテスは問答法(産婆術)によって、自分よりも知恵のある者を探した。問答法は、まずソクラテスがある問いを立て、それについて相手に見解を述べさせる。そしてソクラテスがその見解を吟味し、新しい見解を述べさせる。これを繰り返すことで本質を探求する方法である。問答によって相手のまだ生まれていない思想を生み出すという意味で、産婆術とも呼ばれている。

この問答の末ソクラテスは、知識人たちは知っているつもりでいても、実は何も知らないということに気づいた。そしてソクラテスはこの「知らない」という無知を自覚しているという点で、自分は他者よりも優れているのだと考えた。そして、ソクラテスは神託を「ソクラテスという名を用いて、神は知恵のある者とは、自分が知恵に関して無価値であることを自覚している者」であると解釈した。

善く生きること

古代ギリシアでは魂のことをプシュケーと呼んだ。プシュケーとは息をすることを意味する。ソクラテスは「魂の配慮」を説き、徳(アレテー)をそなえた魂を持つように主張した。「善く生きること」とは「ただ生きる」こととは異なる。

例えば、りんごの善さとは「おいしい」ことである。薬の善さとは「よく効く」ことである。そのようにして、人間の「善さ」とは何かを考えることが「善く生きる」ということにつながる。
ソクラテスは実践的哲学者である。これは死や運命など、生きにくさから生まれた、幸福を探求し実現するための哲学である。ソクラテスは「本当の正義」が存在し、またそれを把握することも可能であり、しかしそれを知らないから探求するべきだと考えた。「正しいこと」を行えば魂は「善く」なるのであるが「正しいこと」が何であるかがはっきりしない。「正しさ」の知によって「正しい」行為に至り、その結果「善い魂」となるのである。

著作

画像.ソクラテスの弁明

ソクラテスは執筆をしなかった。よって弟子のプラトンたちが書いた書物のみが残っている。
ソクラテスの弁明』『クリトン』『パイドン』などにソクラテスの思想が詳しくあらわされている。
これらの著作は対話文であるため、非常に読みやすい内容になっている。これを機に手に取ってソクラテスの思想に触れてみてはどうだろうか。

関連記事:
プラトンについて調べてみた【イデア論】
ギリシア神話はあらゆるものの源泉だった

  • Xをフォロー
  • Threadsをフォロー
好きなカテゴリーの記事の新着をメールでお届けします。下のボタンからフォローください。

もひ

投稿者の記事一覧

主に哲学が好きです

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【弱者のルサンチマン】 ニーチェが教える芸能人スキャンダルの本質…
  2. フロイトの半生とヒステリー治療について調べてみた
  3. 高校野球(甲子園)を哲学する 「正しい負け方を習得する」
  4. フジテレビ会見で露呈した「正義の暴走」~善悪二元論を超えた“共存…
  5. キリスト教の聖書と祈りについて調べてみた
  6. レズビアンの歴史について調べてみた
  7. 遠距離恋愛は続かない?近くにいる人を好きになる単純接触効果
  8. 「創造科学」とは〜 科学と名のついた疑似科学の代表

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

酒井忠次について調べてみた【信長からも称賛された徳川四天王筆頭】

四天王の筆頭酒井忠次(さかいただつぐ)は徳川家の譜代の家臣として、家康の父・松平広忠の時…

鬼玄蕃・佐久間盛政【秀吉に惜しまれながら斬首された若き猛将】

佐久間盛政とは猛将・柴田勝家の甥で「鬼玄蕃(おにげんば)」と異名が付けられた無類の強さを…

始皇帝の死後、権力を握った宦官・趙高は本当に奸臣だったのか?

始皇帝の死と「沙丘の変」秦の始皇帝が崩御したのは紀元前210年、五度目の東巡の最中である…

最期は自分の顔面を…公暁に仕えた稚児・駒若丸(三浦光村)の過激な生涯【鎌倉殿の13人】

建保5年(1217年)6月20日、京都での修行から鎌倉へ舞い戻った公暁(演:寛一郎)。彼は鶴岡八幡宮…

『戦国時代の伝説の軍師』知略で歴史を動かした名参謀たち 「黒衣の宰相、幻の軍師、両兵衛」

戦国時代には、知恵を駆使して活躍した人物が数多く存在した。中には、大名自らが卓越した…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP