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マッチングアプリの巧妙な仕組み 「スワイプし続けるように設計されている」

マッチングアプリの巧妙な仕組み

画像: 出会い系アプリ CC BY 2.0

あなたは、マッチングアプリの巧妙な罠に嵌っていないだろうか?

スワイプし続けるあなたは、その心理を操られているかもしれない。

専門家たちは、マッチングアプリが「依存症」と認定されるかどうかは別として、ユーザーを長時間アプリに釘付けにするように設計されていると指摘している。

無限に続く「いいね!」の連鎖、その先に待っているものはなんだろうか?

本稿では、マッチングアプリがユーザーの心理に与える影響について、専門家の話を交えながら解説する。

米オンラインデートサービス会社の「マッチグループ」が提訴される

2024年2月14日、カリフォルニア州の連邦裁判所に、マッチングアプリに対する集団訴訟が提起された。

この訴訟によると、Tinder、Hinge、Match、Meetic、OkCupidなどの人気デートアプリは、ユーザーをスマホ中毒にさせるような設計で、心理的な操作を行っている懸念があるという。

この訴訟は、世界最大級のオンラインデートサービス会社を運営するマッチグループを対象としている。

訴訟では、これらのアプリがユーザーをアプリに依存させ、強迫的に利用させるような設計になっていると主張している。

具体的には、ユーザーに「もっと良い相手がいるかもしれない」という不足感を抱かせ、アプリを使い続けることで、その不足感を解消できると思わせるような仕組みになっていることが問題視されている。

この訴訟の結果によっては、マッチグループだけでなく、デートアプリ業界全体に大きな影響を与える可能性がある。

アメリカ成人の3人に1人がデートアプリを使用したことがあるといわれており、多くの人が訴訟の結果に注目している。

心理学における「依存」とは?

マッチングアプリの巧妙な仕組み

画像: スマホ依存症 by wuestenigel is licensed under CC BY 2.0.

物質依存とは異なり、特定の行動に依存してしまう「行動依存」と呼ばれる新たな依存症が注目されている。

ビデオゲームやソーシャルメディアなど、物質ではないものに対して「依存」という言葉を使うことは、心理学者の間で議論を呼んでいる。

現在、アメリカで物質以外の依存症として認められているのは「ギャンブル依存症」のみだ。

しかし、世界保健機関が発行する精神疾患の診断マニュアルである国際疾病分類第11版(ICD-11)では、オンラインゲームやビデオゲームを日常生活に支障をきたすほどプレイし続けてしまう「ゲーム依存症」が、新たに疾患として追加されている。

恋愛アプリやソーシャルメディアの利用と脳の反応

カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校心理学名誉教授のラリー・ローゼン氏は、以下のようにコメントしている。

Tinderでスワイプし続けたり、TikTokを延々とスクロールしたりする行為は、物質依存者が物質を摂取する際に起こる脳内の反応と類似している。

Tinderで新しいマッチング相手を見つけたり、ソーシャルサイトで新しい通知を見たりすると、脳内にドーパミンが放出される。少量のドーパミンは一時的に気分を高揚させるが、次第に慣れてしまい、同じ高揚感を得るためにはより多くのドーパミンが必要になる。

ドーパミンは、脳内の報酬系に関わる神経伝達物質で、快感や幸福感を感じるときに分泌される。

恋愛アプリやソーシャルメディアを利用するとドーパミンが放出され、一時的に気分が高揚する。

しかし、その状態に慣れてしまうと同じ高揚感を得るために、より頻繁にアプリを利用する必要が出てくる。

これが、恋愛アプリやソーシャルメディアへの依存につながるメカニズムとなっている。

恋愛アプリとドーパミン

ローゼン氏は、「恋愛アプリでドーパミンによる高揚感を得ようとする行為は薬物依存とは違う。そのため、恋愛アプリの使用を中止することによる苦痛は、アルコールやヘロインなどの薬物離脱症状ほど深刻ではない。」と述べている。

しかし、脳内の生化学的なメカニズムは、ある程度類似しているという。

依存症は、生物学的に根差した現実的な現象だ。

私たちは皆、気分を高揚させたいという欲求を持っている。

つまり、恋愛アプリ依存も立派な依存症の一種と言えるだろう。

マッチングアプリの巧妙な仕組み

マッチングアプリの巧妙な仕組み

画像: スマホを使用するソーシャルメディア中毒の人々 CC BY 2.0.

今回の訴訟では「アプリ設計者たちがユーザーをアプリに依存させ、課金会員として継続させるために、さまざまな心理操作の手法を用いている」ことが問題とされている。

具体的には、いいねやマッチングの通知を頻繁に送ることでユーザーの承認欲求を刺激したり、マッチングの可能性をちらつかせて意図的に不安をあおったりするなど、ユーザーの心理に巧みに働きかけているという。

また、マッチングアプリが掲げる「ユーザーにリアルなデートを促し、アプリ卒業を目指す」という当初の目的と、大きな矛盾があることも指摘されている。

例えば、Tinderの「トランプのデッキ」のようなインターフェースは、ユーザーが次々と候補者を見て左にスワイプ(却下)するか、右にスワイプ(いいね)するかを促すもので、ゲーム感覚で利用させている。

他にも、課金が必要な「スーパーブースト」機能は、ユーザーのプロフィールをピークタイムに多くの人に表示させ、マッチングの可能性を高めるとしている。

この指摘に対してマッチグループは、ロイター通信の取材に対し、これらの訴訟内容を「ばかげている」と一蹴している。

アプリの目的はユーザーにリアルなデートを提供することであり、ユーザーを依存させることではないと反論しているのだ。

マッチングアプリのビジネスモデル

画像: アプリ CC BY 2.0

ローゼン氏は、企業がユーザーエンゲージメントを高めるために用いる戦略は、主に「ポジティブ強化」に基づいていると指摘する。

ポジティブ強化とは、望ましい行動に対して報酬を与えることで、その行動を繰り返させようとするものだ。
「拍手、祝福、リーダーボードに名前が載る」など、自分が認められたと感じられることが、ユーザーのモチベーションを高めるのだ。

さらにローゼン氏は「アプリの通知」も、ユーザーの不安につけこんでいると指摘する。

携帯電話に通知が届いたのに、すぐに確認できない状況を想像してしい。
気になって仕方がない、落ち着かない」という気持ちになるだろう。

これは、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが上昇している状態だ。

そして、通知を確認して好奇心が満たされるとコルチゾールレベルは低下し、代わりに報酬となるドーパミンが放出される。

アプリはこのドーパミンによる快感を利用して、ユーザーをアプリに引きつけ、利用時間を延ばそうとするのだ。

画像: スマホに夢中な男性たち CC BY-SA 2.0.

デートアプリ訴訟の行方と未来

心理科学者たちがデートアプリの依存性・強迫的な使用に関する証拠を発見したからといって、訴訟が成功するとは限らない。

訴訟の最終的な結果は、消費者保護法の解釈にも左右される。

そして、今回の訴訟結果はデートアプリの未来に影響を与える可能性があるだろう。

さいごに

このように、出会い系アプリが中毒的かどうかは論争の的となっているが、確かなことはユーザーが長く利用し続けるように設計されていることだろう。

この点については、多くの人がそう感じているはずだ。

しかし、こういったアプリに依存してしまう人もいれば、そうでない人もいる。

重要なのは、自分に合ったバランスのとれた利用法を見つけることだろう。

参考 :
Tinder, other Match dating apps encourage compulsive use, lawsuit claims | Reuters
Key findings about online dating in the U.S. | Pew Research Center

 

lolonao

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フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
antiX Linuxを愛用中。頻繁に起こる日常のトラブルに奮闘中。二女の父だがフィリピン人妻とは別居中。趣味はプチDIYとAIや暗号資産、マイクロコントローラを含むIT業界ワッチング。

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