海外

中国のネット流行語について調べてみた 「躺平、YYDS、野生消費」

流行語

毎年年末の風物詩となっている「流行語大賞」。

2023年の大賞には阪神タイガースの岡田監督の「アレ」が選ばれた。

「アレ」とは優勝を指す隠語で、実際に阪神タイガースが優勝したことから、この言葉が大賞に選ばれたのである。

画像 : 阪神タイガースの岡田彰布監督 wiki c Orixbaseballclub

流行語はその年の特徴や目立った出来事を風刺する。
また、若者の間で使われる言葉や社会現象に関する言葉も含まれ、近年ではネットによる流行語が顕著である。

筆者が在住する台湾の若者たちも日本の流行に敏感で、時折筆者に質問を投げかけてくる。特に、漫画やアニメ、アイドル関連の用語には筆者も手を焼くことがある。

例えば、「ヤバい」という言葉の使い方について質問されることが多い。

「ヤバい」は以前、最悪の事態を示す言葉だったが、現在では「最高においしい」など「非常に良い」状態を表すときにも使われる。台湾の人々からもよく「ヤバいは汚い言葉なのか?」と尋ねられるが、実際には状況によって異なる。

また、日本語学習者向けの教科書では「全然」という言葉は否定形と結びつくと教えられているが、現在では「全然いいよ!」と肯定的にも使われるようになっている。

このような変化は言語の柔軟性と進化を示しており、とても興味深い現象である。

今回は、近年のネットで生まれた中国の流行語をいくつか紹介したい。

中国語のネット流行語

イメージ

躺平(tǎng píng)

「躺平」は直訳すると「仰向けになる」という意味だが、実際には「お手上げ」や「何もしないこと」を意味する。

これは、出世やお金儲け、家を買うといった社会的な成功を追求せず、自分なりの生活を選ぶという意味合いが込められている。無抵抗を表現する言葉である。

YYDS(yǒng yuǎn de shén)

「永遠的神」の略語で、ローマ字ピンイン表記にすると「yong yuan de Shen」となり、各単語の頭文字を取って「YYDS」となる。

この言葉はオタク文化から生まれ、アイドルや推しを讃えるために使われはじめた。

そのうち人だけでなく、事件や組織、国家なども賛美する際に用いられるようになり、「映画やドラマが素晴らしい、料理が美味しい、化粧品が優れている」など、様々な賞賛の場面で使用されている。

野生消費(yě shēng xiāo fèi)

画像 : イメージ

「野生消費」は、中国の靴メーカー「鴻星爾克(ERKE)」が、2021年7月の河南省大洪水に5000万元を寄付したことに由来する。

ネット民たちはこの寄付に感動し、ERKEの製品を購入して支持を表明した。

この行動は「野生消費」と呼ばれ、人々が本能のままに感謝の気持ちを示す行動として広まった。

破防(pò fáng)

「破防」は「ガードが破られた」という意味で、心が大打撃を受けた状態を表す言葉だ。

新しい知らせやニュース、自分自身の出来事に対する強い感情反応を示す。

悪い出来事だけでなく、嬉しいことが実現した時や、目標が達成された時にも使われている。

最後に

流行語の普及は、言語に新たな豊かさと多様性をもたらす一方で、従来の精緻な表現や豊かな語彙が使われなくなる懸念もある。

しかし、これらの流行語は現代の社会や文化を反映しており、新たなコミュニケーション手段としての役割を果たしている。

これらを理解し、適切に取り入れることで、言語はさらに進化し続けるであろう。

参考 : 上官云「网络流行语的广泛应用及其影响」

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. イギリス帝国の奇抜すぎる医療事情 「ヒルに血を吸わせる、痔にカタ…
  2. 日本人が間違いやすいネイティブ英語⑥【食べ物・アイス、飲み物編】…
  3. 【ギネス世界記録】40年間で69人の子を出産したロシア妻 バレン…
  4. 台湾でデング熱が大流行 「家は強制消毒、ボウフラが発見されると罰…
  5. 中国の人身売買が無くならない理由 「8人の子供の母親事件」
  6. トランプ政権のイラン空爆が「台湾有事」にも波及? 〜緊迫する2つ…
  7. 『世界激震のトランプ相互関税』日本が欧州のようにトランプに屈しな…
  8. 伝説の5人の狙撃手たち 【戦場の死神】

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

宮本武蔵の生涯について解説【天下無双の剣豪】

宮本武蔵とは日本一の剣豪は?と聞かれて必ず名前が出てくるのが宮本武蔵である。宮本…

「言葉で世界が出来ている?」ウィトゲンシュタインの哲学をわかりやすく解説

ルートヴィッヒ・ウィトゲンシュタインは、オーストリア・ウィーン出身の哲学者・言語学者で、日本でも人気…

生前、公表されなかったレオナルド・ダ・ヴィンチの「禁断の研究」とは?

ルネサンス期のフィレンツェでは、芸術と科学が互いに影響し合いながら、新しい知識が次々と花開い…

モナコってどんな国? 「F1グランプリで有名」

地中海の穏やかな揺らぎに陽光が反射する。季節の花が一年中街を彩り、温暖な気候と富の象…

日本ダービーの歴史を調べてみた【キーストンの悲劇】

東京優駿(日本ダービー)(3歳オープン 牡・牝 国際・指定 定量 2400m芝・左)は、日本…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP