宇宙

【月の海】 神秘とロマンの探求・その謎と魅力を探る

月は、明るい部分とやや暗い部分が存在し、満月の際に暗い部分をつなぎ合わせると「うさぎ」の形に見えると言われている。

この幻想的な姿は、古来より人々の想像力を掻き立て、長らく語り継がれてきた。

今回は、この神秘的な月の「海」について詳しく探ってみる。

「月の海」とは何か

【月の海】

画像 : 月の表面 wiki c Luc Viatour

月の表面に見られる暗い部分は、「うさぎ」の形に例えられることが多く、「月の海」と呼ばれている。

この「海」は、実際には水が存在するわけではなく、苦鉄質火山岩である玄武岩に覆われた月の平原のことである。

これに対し、月の明るい部分は白い斜長岩で構成され、「月の高地」と呼ばれている。

どのようにして「月の海」はできたのか

【月の海】

画像:アポロ11号が撮影した月面のクレーター

はるか大昔に巨大な隕石が衝突し、大規模なクレーターを作った。

これが「月の海」の元となる地形の基盤になったと考えられている。

衝突によってできたクレーターに、月内部から吹き出した玄武岩の溶岩が流れ込み、クレーターの底に広がって平らな地形を作ったのだ。

やがて溶岩は冷却され、固化して現在のような黒い色の玄武岩層となり、まるで海のように見える地形へと変容した。

月には水が存在しない

月に水が存在しない理由は、主に以下である。

まず、月の引力は地球の約1/6に過ぎず、この弱い引力では大気を保持することが難しい。そのため、大気が存在せず、水蒸気もすぐに宇宙空間へと逃げてしまう。

また、月の表面温度は昼夜で大きく変動し、昼間は100℃を超え、夜間はマイナス170℃まで下がる。この極端な温度変化も、液体の水が月の表面に存在することを困難にしている。

これらの要因が相まって、月の表面には液体の水が存在し得ない環境が形成されている。今後の探査の進展により、氷の存在など新たな発見があるかも知れないが、現時点では液体の水は確認されていない。

月の海をいくつかご紹介

現在「海」として名付けられたものは複数存在する。

以下に代表的な「月の海」をご紹介する。

静かの海(Mare Tranquillitatis)

画像 : 静かの海の位置 wiki c Silvercat

月の赤道よりやや北に位置し、「うさぎ」の顔の部分に該当する場所である。

1969年、アポロ11号のミッションで人類が初めて月面に着陸したのも、この海である。

アームストロング船長は、この海にたどり着いた際に「これは1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」と名言を残した。

嵐の大洋(Oceanus Procellarum)

画像 : 嵐の大洋の位置 wiki c Silvercat

月の西部に広がる、大きな円形の領域であり、月の海の中で最大の規模を誇る。

周囲には、複数の小さな月の海やクレーターが点在している。

長年、他の海と同様に隕石の衝突でできたと考えられてきた。しかし、2014年に発表された米マサチューセッツ工科大学の研究によると、実際にはマグマの活動によって形成された可能性が示唆されている。

30~40億年前に、マグマ供給系から流れ出た溶岩は、地域一帯を広く覆い尽くした。流れ込んだ溶岩が冷却され、固化したことで、現在見られる特徴的な黒い玄武岩の層を形成したと考えられている。

雨の海(Mare Imbrium)

画像 : 雨の海の位置 wiki c Srbauer

37億年前から39億年前にできた海であり、この南西部にアポロ15号が着陸した。

直径は1,300kmあり、カルパチア山脈、アペニン山脈、コーカサス山脈が連なっている。

深さは12kmもあり、嵐の大洋に次いで2番目の広さを誇る。

縁の海(Mare Marginis)

画像:縁の海

月の表側の縁に位置することから「縁(ふち)の海」と呼ばれる。

海の表面には渦巻いたような模様が見られ、これは高アルベド堆積物(反射率が高く、明るく見える物質)であるとされている。

さいごに

「月の海」は、月の表面を理解し、その魅力を深く探るために不可欠な存在である。

これらの広大な領域は、月の数十億年にわたる貴重な地質記録を保持していると言えよう。

夜空を見上げて月を観察する際には、ぜひこれらの「月の海」にも思いを馳せてみて欲しい。

参考 : 月面探査 – 国立科学博物館

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【宇宙のガソリンスタンド計画】ついに始動! 「死んだ衛星」に燃料…
  2. NASAが警戒する危険な小惑星5選 「地球に衝突する可能性はどれ…
  3. SpaceX初、民間企業の月着陸機、数週間以内に打ち上げへ
  4. 【H3ロケット打ち上げ成功】 日本、SLIMと共に実力を見せつけ…
  5. 日本の月探査機「SLIM」 月で2度目の越夜を達成! 『これまで…
  6. NASAの無人探査機が火星でエイリアンの地上絵を撮影していた「C…
  7. 月は岩石の雲の輪から生まれた【米研究者の新説】
  8. 【アメリカ政府、初の宇宙ゴミ罰金】 衛星テレビ会社に15万ドルの…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

ソンムの戦い について調べてみた 【世界初の戦車・実戦投入】

※イギリス軍の塹壕1916年7月1日から同11月19日までフランス北部・ピカルディ地方を…

ベトナム人に「グエンさん」が多いのはなぜか? 【国民の40%】

海外旅行で昔から人気のベトナム。訪れたことのある人も多いだろう。そんな人気のベトナム…

逆から見た忠臣蔵 「吉良上野介は本当に悪者だったのか?」

今から約320年前の元禄15年(1702年)12月15日、大石内蔵助率いる赤穂浪士・四十七士が江戸本…

一粒万倍日とは?「2024年9月以降の一粒万倍日と、天赦日が重なる最強開運日」

「本日はお日柄もよく……」のお日柄は、「日の良し悪し」を意味する言葉です。古くから暦には、そ…

【島左近・大谷吉継・小早川秀秋】西軍武将の新たな真実

石田三成の軍師である「島左近」は謎の多い人物である。現在、島左近は「多聞院(たもんいん)日記…

アーカイブ

PAGE TOP