科学

【100年前にスマホを予見?】天才ニコラ・テスラが遺した未来の予言とは

画像:Photograph of Nikola Tesla public domain

スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器は、現代では老若男女問わず生活に不可欠な物となりつつある。

しかし、ほんの数十年前までは、まさか片手に収まるほどのサイズの薄い板のような無線の電話機で、遠く離れた地にいる人と電話するどころか、ニュース動画を共有したり、鮮明な文書や写真のやり取りができるようになるなどと、想像している人間はほとんどいなかったはずだ。

そんな当時の感覚では非現実的だった未来を予言していた人物こそが、あのエジソンが恐れたともいわれる天才発明家、ニコラ・テスラだ。

テスラは人類総スマホ時代だけでなく、他にも人類の未来を示唆するいくつもの予言を残した。

今回は、現代社会の礎を築いた人物の1人といわれる天才、ニコラ・テスラが残した予言について触れていく。

ニコラ・テスラとは

画像:ラボラトリーでの実験風景 public domain

予言の前にまず、ニコラ・テスラという人物について解説しよう。

ニコラ・テスラは、1856年生まれのオーストリア帝国出身の発明家だ。

彼の専門分野は電気工学および機械工学で、グラーツ工科大学やプラハ大学で工学を学んだ後に、ブダペストの電話会社でエンジニアとして働いていたが、1884年に渡米してトーマス・エジソンのもとで働き始めた。

しかしニコラ・テスラとエジソンの考え方は根本的に異なり、その結果、テスラは1年でエジソンのもとを離れて独立した。

エジソンとテスラの関係にまつわるエピソードとしては、より効率的な送電方法を巡る争いが有名だ。

自分自身が開発した「直流」に固執するエジソンと、「交流」の方がより効率が良いと考えるテスラは対立し、テスラは独立して会社を立ち上げて、新型の交流電動機を開発した。

そして、直流にこだわるエジソンとの間で「電流戦争」と呼ばれる市場争いが勃発したのである。

電流戦争の結果、勝利を治めたのはテスラだったが、エジソンは交流使用に反対するプロパガンダを行い、交流を用いた電気椅子を開発したり、犬や猫などの小動物を殺処分する実験を行ったりして、交流の危険性を主張した。

一方のテスラも、テスラコイルを用いて放電中のラボラトリーで自ら読書をするショーなどを行い、交流の無害化が容易であることや、安全性が高いことを主張したのだ。

テスラの発明には現代でも使われている技術が少なくない。たとえば無線技術、X線、蛍光灯などの技術も、テスラが開発に大きく関わっている。

テスラは努力型の発明家ではなく、天才肌の発明家だった。

彼は8つの言語を流暢に話し、芸術にも精通する有能な人物だったが、自分以上の天才といわれた兄を亡くした5歳頃から頻繁に幻覚を見るようになり、重度の潔癖症で、生涯を通じて多くの精神障害に悩まされていたという。

ニコラ・テスラが語ったデジタルテクノロジーに関する予言

画像:スマートフォン pixabay

いよいよ、テスラが残した予言を紹介しよう。

テスラは1926年、アメリカの『Collier’s Weekly』誌の取材に際して、このような話を語っている。

「無線の応用が完璧になれば、全世界は巨大な頭脳に変わるでしょう。それこそが真の世界の姿です。すべてのものはリアルでリズミカルな粒子となり、距離に関係なく私たちはお互いに通信できるようになります。

それだけではなく、テレビや電話を通じて、数千マイルの距離が離れていたとしても、対面で会話をするのと変わらずお互いの顔を見てコミュニケーションを取れるようになります。

そのための機器はとてもシンプルなデザインになるでしょう。ベストの小さなポケットに入れて、持ち運ぶこともできるようになります。」

その内容はまるで、スマートフォンの登場を予見しているようなものだった。

しかしテスラがこの話をしたのは1926年、今から約100年前のことだ。

世界初のスマートフォンが販売開始されたのは1994年とされているが、それでもその時点から約70年前に、テスラはスマートフォンについての予言めいた発言をしていた。

1926年といえば、和暦では大正15年もしくは昭和元年にあたる。
日本では1890年から電話サービスが開始されてはいたが、1926年の時点でも電話機や通信費はとても高価な物で、庶民がおいそれと手を出せるようなものではなかった。

当時から技術先進国だったアメリカでも、1920年代の電話普及率は約40%ほどで、1930年代に入って一家に1台電話が置かれるようになった。

1926年は、今のように1人1台スマホや携帯電話を持つようなことは到底考えられなかった時代だったにもかかわらず、テスラはまるで未来が見えているかのように語ったのである。

人類の未来に関する予言

画像:農業用ドローン pixabay

テスラはデジタルテクノロジーに関する話題以外にも、技術や人類の未来に関する様々な話を語っている。

「無線で動く飛行機が無人で空を飛びまわる」
「地震はますます増える」
「温帯は極寒の地か酷暑の地に変わる」
「電力の無線送電が可能になる」
「無線電力によって家電を管理できるようになり、労働から解放される」
「世界に新しい秩序が訪れ、女性が優位に立つようになる」
「女性が指導権を得ることにより、結婚や出産を忌避する女性が増えていく」

テスラはこのように語り、インタビュアーはただただ驚くことしかできなかったという。

現代を生きる私たちも、テスラの言葉を見てみると、思い当たる節がいくつもあるとは思わないだろうか。

当時は常人では理解が追い付かない天才老科学者の夢物語のようだった話も、約100年の時を越えて今や現実味を帯びてきているのだ。

人類はどのような未来を歩むのか

画像:雑誌『タイム』の1931年7月20日号。75歳の誕生日を迎えたテスラが表紙を飾った public domain

約300件もの特許を取得し、発明家として大きな成功を収めたテスラは、美男としてももてはやされた。

しかし、彼は発明に集中するために生涯独身を貫き、1943年に86歳の時、マンハッタンのホテルで孤独な死を迎えた。

テスラがいなければ今日の私たちの生活は、数十年以上遅れたものになっていたかもしれない。彼が開発した交流は、今や全世界の送電方法として採用されているのだ。

フィラデルフィア計画への関与の噂など、謎多き天才科学者としてまるでフィクションのように語られることが多いテスラだが、彼は確かに存在し、この世界に多くの発明と予言、そしてあらゆる技術の基礎を残していった。

テスラが予想した100年後の未来を目の当たりにできるのは、この時代を生きている私たちの特権といえるのかもしれない。

参考 :
新戸雅章 (著)『増補新版 天才ニコラ・テスラのことば 世界を変えた発明家の真実
文 / 北森詩乃 校正 / 草の実堂編集部

北森詩乃

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娘に毎日振り回されながら在宅ライターをしている雑学好きのアラフォー主婦です。子育てが落ち着いたら趣味だった御朱印集めを再開したいと目論んでいます。目下の悩みの種はPTA。
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