施設

成年後見制度について分かりやすく解説 「種類やできることできないこと」

年齢を重ねるごとに、両親や親戚、自身の今後について考える機会が多くなってきました。

今日は「成年後見制度」について分かりやすく解説いたします。

成年後見制度とは?

成年後見制度

まず「成年後見制度」というのは、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分なため、適切に金銭管理や契約等が行いにくい方々を保護する、権利を守るための制度になります。

成人である20歳以上の判断能力が不十分な方々に代わって、成年後見人等が手続きなどを行うことにより、本人の権利を守ります。
※20歳未満の未成年の方に対しては「未成年後見制度」があります。ちなみに、2022年、民法の改正により未成年の定義が18歳未満へ変更となります。

成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」があります。

・法定後見とは?
⇒すでに判断能力が不十分な方に対して、申し立てにより家庭裁判所から選任された成年後見人等が本人に代わって財産や権利を守り本人を守る支援です。

・任意後見とは?
⇒判断能力があるうちに、自身の判断能力が低下したときのために、任意後見人を選定し、公正証書で任意後見契約を結んでおき準備しておく支援です。

*親族に後見人を依頼した場合、報酬は支払わないことが多いですが、弁護士や司法書士や社会福祉士などの第三者に依頼をした場合は、報酬が発生することが多いです。
ちなみに「法定後見」は、『あの人にお願いしたい!』ということは基本的にできません。申し立ての際に候補者を記載することはできますが、最終的には家庭裁判所が判断することになります。
もし『あの人にお願いしたい!』という場合は、判断能力がしっかりしているうちから公正証書で「任意後見」をお願いしておくのが良いでしょう。

成年後見の3つの種類

成年後見人には3つの種類があり、本人の判断能力によって分類されます。

【補助】

対象者 … 判断能力が不十分
申し立てができる人 … 本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など
制度を利用した場合の資格制限 … なし

【保佐】

対象者 … 判断能力が著しく不十分
申し立てができる人 … 本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など
制度を利用した場合の資格制限 … 医師などの資格や会社役員、公務員などの地位を失います。

【後見】

対象者 … 判断能力が全くない方、判断能力が欠けているのが通常の方。
申し立てができる人 … 本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など
制度を利用した場合の資格制限 … 医師などの資格や会社役員、公務員などの地位を失います。

※「判断能力」を判定するのは、基本は医師の診断書、鑑定書となります。ただし、最終的な判断は家庭裁判所です。

成年後見人制度を利用するにあたっての申し立てとは?

成年後見人制度を利用するには、家庭裁判所に対して申し立てが必要となります。
その流れについて説明していきます。

・申し立てに必要な書類(出生からの戸籍、住民票、親族の意見、医師の診断書など)を集めて、家庭裁判所に申し立てを行う。

・家庭裁判所の調査官による事実の調査

・審判
*申立書に記載した成年後見人候補者がそのまま選任されることが多いです。場合によっては、家庭裁判所の判断により弁護士・司法書士・社会福祉士・市民後見人が選定されることがあります。

・審判の告知と通知

・法定後見開始
*後見人の申し立てから開始まで、約半年間程かかる場合が多いです。

成年後見人等ができることは?

・本人の預貯金を管理・解約できる。
・本人名義の居住用不動産を処分できる。
・保険金の受け取りができる。
・遺産分割などの相続手続きができる。
・施設の入所・退所の手続きや介護保険等の手続き、病院の入退院の手続きなどができる。
⇒ ただし、身の回りの世話などの本人に対して直接介護する行為はできません。
・本人が行った「法律行為(契約など)」を取り消すことができる。
…などなど。

*「後見」であれば全ての行為を行うことができます。
*「補助」「保佐」であれば、家庭裁判所に認められた部分のみ可能です。

成年後見人等ができないことは?

・施設入所や入院の際の「身元保証人」「連帯保証人」などの保証人になること。
⇒ 成年後見人等はあくまで本人の代理人です。つまり、本人ができることを本人の代わりに行います。なので、保証人になるということは…『私の保証人を私がします』という状況になるのと同じ。ただし、施設や病院が保証人を求めるのは、あくまで支払いや緊急時の連絡などであることが多く、成年後見人等はそれらを業務として行うため、保証人になれないことが大きな問題にはならないと思われます。

・手術の同意、治療方針の同意や了承といった「医療同意」
⇒ 成年後見人等は入院の手続きなどは可能ですが、手術や治療方針の同意については本人の代わりに行うことができません。詳しく説明すると長くなりますが…手術をする方が良いのか?しない方が良いのか?ということは、あくまで結果論でしか判断できません。つまり、選ばなかった選択肢の未来を知ることはできません。そのような重大な判断は、やはり本人以外ではできないという考え方です。

・結婚、離婚、養子をとる、本人に代わって遺言を残す。
⇒ 前述の「医療同意」と同じく、本人以外が行うことはできないという「一身専属権」というものです。例え法的な代理人であっても、このような重大な判断を本人の代理で行うことはできません。

終わりに

成年後見制度はできることも多いですが、できないことも多い制度です。しかし、判断能力の低下した方の権利や財産を守る制度になります。

相談窓口はこちらになります。

https://guardianship.mhlw.go.jp/consultation/

メリット・デメリットを考えて利用を検討してみてください。

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 高速道路無料化 について調べてみた
  2. 現役中学生に聞いてみた「現代っ子に忘れ去られた昔の遊び」
  3. 重曹の万能さと使い方について調べてみた
  4. 日本の洗濯と洗濯機の歴史 「昔の洗剤~洗濯機の進化」
  5. バー・パブ・バル の違いについて調べてみた
  6. 知られざる客室清掃業の仕事とは? 「客室の清潔さがホテルの信頼を…
  7. 精神障害者手帳はずるい?その実態
  8. 実体験 【100円ショップ】買って損するもの 7選

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

知られざる明治維新の「影の立役者」 老中・阿部正弘の慧眼とは

「幕末といえば坂本龍馬!」歴史好きの方なら、そう考える人も多いのではないでしょうか。…

なぜ第一次世界大戦は起きたのか? 「国民国家」という暴力装置

「総力戦」だった第一次世界大戦1914年から1918年まで続いた第一次世界大戦は、全世界にまで及…

大政奉還の裏側について調べてみた【徳川慶喜の切り札とは?】

265年間続いた江戸時代から明治への移行。はっきりとした線引きはできないが、幕末の出来事の中で大政奉…

伝説の盲目剣豪・富田勢源 「佐々木小次郎の師匠説」

富田勢源とは冨田勢源(とだせいげん)とは、中条流(ちゅうじょうりゅう)の正統として冨田流…

「縄文時代」は、なぜ1万年以上も続いたのか?

縄文時代は日本の先史時代の中で、特に長期間にわたり続いた時代として知られる。始まりは諸説あり…

アーカイブ

PAGE TOP