エンタメ

ジェームズ・ボンドの魅力と歴代のボンド 【世界最高のスパイ】

マティーニをステアではなく、シェイクで

このセリフに反応した方は、「ドクター・ノオ」からのファンかもしれない。

1962年の第1作である「ドクター・ノオ」から、2015年の「スペクター」まで53年以上にわたり世界中の人々、とりわけ同姓を魅了してきた男。男の憧れであり、永遠のヒーロー。とまでいえばいささか大げさに聞こえるが、それでも彼のカリスマ性だけは大げさではない。

彼の名前はボンド、ジェームズ・ボンド

ジェームズ・ボンド の誕生

ジェームズ・ボンド
※イアン・フレミング生誕100周年を記念して作られたブロンズ像

ジェームズ・ボンドとは「007」のコードネームを持つイギリスのスパイ映画の主人公である。といってもその名を知らない人はいないだろう。

しかし、この007シリーズ原作小説があることを知っている人は、日本ではあまりいないかもしれない。

第二次世界大戦でMI6(エムアイシックス)という英国諜報部で秘密工作に携わった経歴を持つイアン・フレミングが、1953年に発表した「カジノ・ロワイヤル」が007シリーズの第1作であった。しかし、発売当初から人気のシリーズとなったわけではない。アメリカのケネディ大統領が愛読しているということで、人気に火が付いた。それも5作目の「ロシアから愛をこめて」になってやっとのことである。

その後は、フレミングが亡くなる1964年まで全12作の長編が発表された。

映画化で世界が憧れる男性像に


※ショーン・コネリー 出典 Stuart Crawford

007シリーズの小説はフレミングの没後も、様々な作家の手により新作が発表されたが、なによりもジェームズ・ボンドを世界的に押し上げたのは映画化である。これは、フレミングの生前に交渉が行われ、イギリスに拠点を置くイオン・プロダクションが設立。これにより、1962年に第1作「ドクター・ノオ」が公開された。

ジェームズ・ボンド役には、若きショーン・コネリーが抜擢されたが、彼がスコットランド人であることを誇りとし、発音も矯正しないことを条件としたために、原作においてもボンドがスコットランド出身ということになった。結果、映画は大ヒットとなり、彼はその後6作品においてボンドを演じることになる。

そして、今に至るボンド像を確立したのはショーン・コネリーといって間違いはないだろう。スマートながら野生的なジェームズ・ボンドが誕生したのであった。

歴代のボンド

ジェームズ・ボンドの魅力と歴代のボンド
※6代目ボンドを演じるダニエル・グレイグ 出典 Elen Nivrae – Daniel Craig

007シリーズが他の映画作品と決定的に違うのは主演俳優の交代である。ハリウッド映画のシリーズ作品ではあまり例がない。ヒット作になればなるほど、主人公のイメージが定着してしまい交代させるのが難しいことは容易に想像できる。

しかし、このシリーズではボンド役が変わるたびに「次は誰が演じるんだ?」とそれが話題となってきた。

事実、ショーン・コネリーが降板すると、2代目をオーストラリア出身のジョージ・レーゼンビーが演じ、1作品しか登場していないにもかかわらず原作に忠実なストーリーによって評価された。3代目を演じたロジャー・ムーアは、ユーモアのセンスがあり、親しみの持てるボンド像を確立。シリーズ最多の7作品でボンドを演じる。4代目のティモシー・ダルトンもわずか2作品での出演だったが、それまでの紳士的なボンドよりややアウトローなボンドを見せてくれた。5代目ピアース・ブロスナンはまさにプレイボーイ。

そして、6代目ダニエル・クレイグは歴代でも知的ながらワイルドさでは群を抜いており、現代にふさわしいボンドを演じている。

歴代ボンドはそれぞれに持ち味が違い、そのなかで好きなボンドを語れるというのも魅力なのだ。

男のこだわり

ジェームズ・ボンドにはこだわりがある。

冒頭のマティーニの台詞は、「ドクター・ノオ」から登場するボンドが愛するカクテルである。
マティーニのスタンダードなレシピは、ドライジンとドライベルモットをステア(ゆっくりかき混ぜる)して、カクテルグラスに移すのだが、ボンドはよりキリッとした味わいのウォッカをベースにシェイクすることでより冷えたマティーニを好む。このことから、バーでは「ボンド・マティーニ」といえば、このカクテルが飲めるようになったほどだ。

さらに拳銃も、ドイツの名門「ワルサー」社のワルサーPPKを歴代使用している。第18作「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」からは、同社の最新モデルであるワルサーP99を使用していたが、第22作「慰めの報酬」ではPPKに戻っている。やはりボンドには大型の拳銃よりもスマートな小型拳銃のほうが似合っているのだ。


※ワルサーPPK

他にも作品ごと、もしくはシリーズを通して洋服から小物、さらに車まで徹底的にこだわりを貫く姿勢に魅力を感じる。

ボンドのダンディズム

ジェームズ・ボンドの魅力と歴代のボンド
※カジノ・ロワイヤルのメイキングから

ダニエル・クレイグがボンドを演じてからは、物語がリブートしている。
それまでのボンドとは別の「若き日のボンド」をイメージした作りになっており、そのためかボンド自身の性格もやや荒削りな部分が多い。

しかし、根底に流れるダンディズムは変えられることなく継承された。

では、ボンドのダンディズムとは何なのだろうか?

スペクター」で競演した役者は語る。ボンドにはどんな相手でも惹き付ける動物的な本能があると。あくまでも任務として悪と戦うだけで、彼自身は善か悪かはわからない。そんな曖昧なところがボンドの魅力なのだという。理性ではなく動物的な本能で振舞うボンド。それは、飾りではなく、任務のために染み付いた本物のダンディズムであり、自然体の格好よさこそが彼の最大の魅力なのだ。

最後に

ダニエル・クレイグは「007 スペクター」を最後にボンド役を降板するという噂が流れていた。彼自身も一時は続投の意思がないと語っていたが、現在では引き続きボンドを演じることで合意に至り、2018年にも新作の撮影が始まるというのだ。

さらに新しいボンドの一面が見られるのか期待して待ちたい。

関連記事:エンターテイメント
全財産を失ったニコラス・ケイジの素顔【血は争えない!?】
【なぜ衰えない?】トム・クルーズの人気の秘密について調べてみた

 

gunny

投稿者の記事一覧

gunny(ガニー)です。こちらでは主に歴史、軍事などについて調べています。その他、アニメ・ホビー・サブカルなど趣味だけなら幅広く活動中です。フリーでライティングを行っていますのでよろしくお願いします。
Twitter→@gunny_2017

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. アニメーションの歴史【世界と日本のアニメ史】
  2. 1910年に中国で発生した「ネズミ伝染病」 ~6万人の命を奪った…
  3. 【王冠を捨てた恋】エドワード8世について調べてみた
  4. モンゴルのトゥス・キーズと韓国のポジャギ 「母の愛を改めて知るア…
  5. アメリカの弾劾裁判制度について調べてみた
  6. 2020年7月に亡くなった『glee』出演のナヤ・リヴェラはどん…
  7. 日本と感覚の違う台湾の変わったお盆~ 中元普渡 【霊を「好兄弟」…
  8. 日本の社畜文化とコロナ 「風邪でも休みにくかった日本人」

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

西郷隆盛と長州征伐について調べてみた

島津久光が薩摩藩の藩主となった当時、西郷隆盛とはそりが合わず、久光に同行して上京する際も、西郷は独断…

人類最古の「ガン」は170万年前のホモ・サピエンス以前の種の骨肉腫だった

「ガン」は現代の病と考えている人が多いが、実は古代から存在していたことが確認されている。世界…

【敵方だった秀吉に寵愛された美女】忍城を守った女武者・甲斐姫の伝説

豊臣秀吉は、多くの女性を側室として迎えたことでも知られており、女性関係の逸話が数多く伝えられている。…

ハチミツは紀元前15000年頃には採取されていた 「日本では日本書紀の時代」

蜂蜜(ハチミツ)は、私達の生活の中でかかせない食材の一つであると言っても過言ではない。…

江戸の裏社会を支配した異例の支配者「弾左衛門」とは何者だったのか?

身分秩序が社会構造を支えていた江戸時代、東京・浅草を拠点として関東一円の被差別民を統率する、弾左衛門…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP