この記事では、年間100冊以上の小説を読む本の虫・アオノハナが、作家別のおすすめ作品についてご紹介していきたいと思います。
国内国外ジャンル問わず、さまざまな小説を読みふけってきた筆者だからこそ、他の王道ランキングとは一味違った、オススメの作品をご紹介できるかと思います。
第5弾は、完全オリジナルの小説から、実際にあった出来事・人物をベースにした評伝小説まで、あらゆるジャンルの物語を紡ぐ、大人気作家、原田マハさん。
特に、芸術家に関する評伝劇に、定評のある原田マハさんの作品について、筆者の独断と偏見による、オススメ作品をご紹介します!
原田マハとは
まずは、原田マハさんの簡単なプロフィールを紹介します。
1692(昭和37)年、東京都小平市生まれ。関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学文学部美術史科卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事を経て、ニューヨーク近代美術館に派遣され、同館にて勤務。
その後、2005(平成17)年に『カフーを待ちわびて』で、日本ラブストーリー大賞を受賞し、デビュー。その他の作品に『本日は、お日柄もよく』『デトロイト美術館の奇跡』など。
小説家になる前は、美術館の職員として働いていた、という原田マハさん。
その異例の経歴は、原田マハさんの作風に、大きな影響を与えています。
原田マハさんの作品の多くには、美術品や民藝品、娯楽などを取り扱ったテーマが多く、その深い洞察力と、アートを通じて交流しあう人々の温かさが、彼女の作品をより、魅力的に仕上げています。
ほとんどの作品が、ハッピーエンドなのも特徴。
作家さんの中でも、“人間の良心”を大切にされているのかな、と思っています。
原田マハ オススメ作品①「キネマの神様」
<あらすじ>
39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、おりしも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。
ある日、父が雑誌『映友』に歩の文章を投稿したのをきっかけに、歩は編集部に採用され、ひょんなことから、父の映画ブログをスタートさせることになった。
“映画の神様”が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。
<おすすめポイント>
この作品は、原田マハさんの作品の中でも、特に有名ではないでしょうか。
読んだことはなくとも、「タイトルは知っている!」と思う方もいらっしゃるかと思います。
先日亡くなった、志村けんさん主演で映画化される、ということでも、話題になっていましたよね(代わりにどなたが演じることになるのでしょうか…)。
筆者的オススメのポイントは、「境遇や住んでいる国、生活の状況が違っても、同じものを好きになれば、人は分かり合える」という、作品の中に込められたメッセージ。
この小説の中では、“映画が好き”という気持ちが、多くの人々の心をつないでいます。
言葉が通じなくても、生まれた国が違っても、“これが好き!”という気持ちがあれば、人は理解し合えるのではないか?
この小説を読んでいると、そう思えてくるのです。
原田マハ オススメ作品②「まぐだら屋のマリア」
<あらすじ>
東京・神楽坂の老舗料亭「吟遊」で修業をしていた紫紋は、料亭で起こった偽装事件を機にすべてを失った。
料理人としての夢、大切な仲間である後輩・悠太の自殺。逃げ出した紫紋は、人生の終わりの地を求めてさまよい、尽果というバス停に降り立った。
過去に傷がある優しい人々、心が喜ぶ料理に癒され、紫紋はどん底から生き直す勇気を得る。
<おすすめポイント>
毎日が辛くてどうしようもない、あるいは、過去に負った傷を、今でも思い出して苦しんでいる、そんな方に読んでもらいたい一冊です。
物語の冒頭、主人公の紫紋は、死んでしまいたいほどに絶望しています。逃れるようにたどり着いたのが、マリアという女性が営む食堂【まぐだら屋】。
ひょんなことから、【まぐだら屋】の厨房で働くことになった紫紋や、他の人々が、過去に背負った傷を少しずつ癒していく、そんな物語です。
ところで、『まぐだら屋のマリア』とは、新約聖書に登場する、キリストに従った女性、“マグダラのマリア”をモチーフにしているのだと思います。
主人公の名前は、紫紋(シモン)。シモンとは、イエス・キリストの弟子である、ペトロの本名です。
『まぐだら屋のマリア』の物語には、一貫して“贖罪”というテーマが存在しており、キリスト教の教えをモチーフにしているのでしょう。
原田マハ おすすめ作品③「リーチ先生」
<あらすじ>
1954年、イギリス人陶芸家バーナード・リーチが、大分の焼き物の里・小鹿田を訪れる。その世話係を命ぜられた高市は、亡父・亀乃介がかつてリーチに師事していたことを知らされる。
時は遡り1909年。横浜の洋食屋で働きながら芸術の世界に憧れを抱いていた亀乃介は、日本の美を学び、西洋と東洋の架け橋になろうと単身渡航した青年リーチと出会う。その人柄に魅せられた亀乃介は助手となり、彼の志をひたむきに支えていく。
<おすすめポイント>
実在した陶芸家、バーナード・リーチの生涯を元に、原田マハさんが執筆した大河小説、ともいうべき一冊です。
全472ページと、かなりの長編ですが、原田マハさんの、簡潔で読みやすい文章と、生き生きとした登場人物たちのおかげで、苦もなく読み進めることができます。
バーナード・リーチ氏については、拙文『日本人以上に民芸を愛した英国人バーナード・リーチ 【東洋と西洋をつないだ陶芸家】』にて言及していますので、そちらも合わせてお読みください。
https://kusanomido.com/study/life/music/37507/
この作品を読んでいると、リーチの弟子、亀乃介の目線を通して、原田マハさんの“芸術家に対するリスペクト”が伝わってきます。
熱い志を抱いた人々の、葛藤や愛、ひたむきな情熱が、ぺージをめくる私たちの心を躍らせ、読み終わった後には、心が熱くなります。
最後に
この記事では、原田マハさんのオススメ作品について、ご紹介しました。
筆者が、原田マハさんの作品をおすすめする上で、最もお伝えしたいのが、彼女の作品には、“どんな人間にも善いところがあり、どんな人生にも希望がある”ということ。
人間社会の汚い部分、問題提起をする小説も、それはそれで素晴らしいのですが、原田マハさんの作品には、人間の“善”や“愛”を信じられるようなパワーがあります。
「最近、心が疲れている」「自分にも、人にも優しくできていないな…」
そんな方はぜひ、原田マハさんの作品を読んで、自分自身を癒してあげてくださいね。
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