近年、精神疾患患者が急増するなか、あまり知られていないリハビリがあります。
「デイケア」
名前だけは知っていても、高齢者が日中に通所するリハビリ施設だと思われるでしょうが、それは介護老人施設などで行われる「デイサービス」で、精神疾患患者向けのものとは違います。それが、精神疾患患者が利用できる精神病院の「デイケア」です。そこでは何が行われているんでしょうか?
デイケア って何?
精神病院におけるデイケアは、ある程度、規模の大きな病院内にあります。
そこで行われるのは、主に3つの目的を持った療養でした。
○規則正しい生活を行い、時間を自己管理できるようにさせること。
○メンバー同士の交流を通じて、協調性や自主性を培うこと。
○スポーツ、園芸、合唱などを行い、社会復帰へ向けた体力や集中力を向上させること。
これだけではちょっとわかりにくいですよね。カンタンに言ってしまうと、精神疾患によって働けなくなったり、自宅療養だけでコミュニケーション能力が低下している患者さんが、昼間に通所して「作業を通して行うリハビリ」のことです。主に幻聴や幻覚などに悩まされて外出の妨げになるような統合失調症の患者さんが利用しますが、うつ病やアルコール依存症の患者さんでも利用できます。あくまでも治療の一環なので、すべては担当医がデイケアへの通所が必要と判断した場合に利用することになります。
デイケアの区分
デイケアの実施時間にも区分があります。
○日中の6時間を標準とするデイケア(昼食、休憩時間あり)
○午前、もしくは午後の3時間を標準とするショートケア
○デイケア後に4時間のナイトケアを組み合わせたデイナイトケア(昼食、夕食、休憩時間あり)
病院によって多少の違いはありますが、このような時間区分になります。
それぞれの違いについてですが、デイケアは午前と午後で違うプログラムを行い、夕方に終了するもので、ほとんどの通所者がこのデイケアを利用しています。
ショートケアはデイケアの短縮版で、文字通りですね。
そして、デイナイトケアはデイケアの後にゆったりとした活動をする(日中の疲れを考慮して)もので、夕食後に終了となります。デイナイトケアは専用のグループホームや、支援施設(アパート)などから通所する方が主に利用します。
比較的症状が軽く、自宅から通所できる方がデイケア(ショートケア)を、就労できないくらいの症状で、生活保護や障害年金などで暮らしながら近くから通所する方がデイナイトケアを利用されるといった感じでしょうか。
一日の流れ
では、具体的にどのようなことをするのでしょうか?
プログラムは施設によってことなりますが、例を挙げて見て行きましょう。
午前中は9:30に始まり、個別活動の時間です。やることは、各メンバーの意思とスタッフによって比較的自由に決めることが出来ます。
本を読む、ジグソーパズルをする、裁縫・編み物をする、麻雀をする、プラモデル作りをする、パソコンを使ってMicrosoft Officeの使い方を覚えるなど、様々なことができます。気分が向かないときは、おしゃべりしたり。
これは、一見好きなことだけをしているように思えますが、活動を通して同じ趣味のメンバーと交流したり、新しいことを始めて前向きな気持ちを養うプログラムです。ここまではデイケアもショートケアも同じです。
11:30に午前の活動が終了すると、病院の提供する昼食を食べて休憩になります。そして、午後1:30からは午後の活動です。こちらは午前と違って、曜日変わりで、いくつかあるプログラムのなかから、自分が事前に決めてあるグループ活動に参加します。
例えば、バドミントンや風船を使ったバレーボールなどのスポーツ、敷地内にあるデイケアの農園で野菜を育てて料理をする園芸、カラオケ、書き方・読み方の練習、そして、就労準備などなど。
こちらは午後3:30で終了し、デイケアの通所者は帰宅となります。そのあとに休憩を挟んでデイナイトケアのメンバーさんは夕食まで、健康に役立つビデオを見たり、軽いストレッチなどをして過ごします。
参加するまで
あくまでも例ですが、大体どのようなことをするか分かってきたんじゃないでしょうか?
でも「知らない人が大勢いるところへ通うのはちょっと。。。」という人もいるでしょう。ここからは、デイケアへ参加するまでをお話しましょう。
病院の施設ですから、当然、スタッフもプロばかりです。作業療法士、管理栄養士、看護士などが、メンバーを支えてくれます。まずは、担当医がデイケアの利用を認めると、見学をすることになります。スタッフがどこでどのようなことを行っているかを説明し、後日、体験という形で参加します。もちろん、どうしても通う気にならず、先生もそれを認めてくれればここでやめることも出来ますが、大丈夫そうなら、その後に正式な参加となるわけです。
正式にメンバーとなると、治療計画を元に活動するわけですが、担当スタッフがサポートしてくれるので安心してください。
デイケアはこんな場所
スタッフは、メンバーの管理をしますが、全員が患者さんの味方です。
例えば、治療のことだけでなく、自宅での悩みや家族関係での悩み、友人関係の悩みなどプライベートな相談にも応じてくれます。何より、患者さんにとっては通所することも治療になるので、どうしても他のメンバーさんと馴染めないという初期のころは、スタッフの時間が許す限りおしゃべりだけしていてもいいわけです。
もちろん、色々な症状の患者さんが通うので最初はちょっと驚くことがあるかもしれません。多弁な人、無口な人、優しい人、頑固な人。でも、メンバー間の交流を促すのもスタッフの仕事なのですぐに慣れると思います。暴力的な人もいるんじゃないかと不安に思う方もいると思いますが、安心してください。そういう人は担当医がOKを出さないので、デイケアは利用できません。
また、費用も自立支援が適用されますから、受給者証を持っている方は一割負担となり、自立支援の上限を超える金額については免除されます。例えば、非課税世帯で毎月の限度額が2,500円の場合、一回のデイケア利用料金が820円だとすると、月に4回利用すれば、あとは費用が掛からない計算になります。そして、通院費や薬代もカウントされるので、さらに割安になる計算です。
まとめ
これは私の友人の実体験と、私が調べたことを元に書きました。
友人は、病気で退職後、何もやる気が起きずに自宅にこもる生活を続けていましたが、先生に勧められてデイケアに通い始めてから徐々にプライベートでも外出するまでになりました。やっぱり、誰かと話をするということが良かったようです。不安な方も、興味があるならぜひ体験してみてください。
あ!
大切なことを忘れていました。デイケアは毎日通わないといけないわけではありません。自分が無理をしない範囲で、週一日からでも大丈夫です。先生やスタッフと相談しながら決めてゆきましょう!
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