海外

フィンランドの歴史と文化を継承し続ける古都 『トゥルク』

北欧雑貨の人気を切っ掛けに日本でも『デザインの国』として知られる北欧フィンランドでは、1年を通してクリスマス気分を味わえる『サンタクロースの村』や、フィンランド作家トーベ・ヤンソンのムーミン・シリーズの世界を再現した『ムーミンワールド』など家族で楽しめるアミューズメント事業が盛り上がりを見せている。

しかしそんな中、首都ヘルシンキに続く人気観光スポットとの呼び名も高いフィンランドの古都「トゥルク」が、密かに観光客の心を掴み、注目を浴びている。

『トゥルク』

アウラ川が流れるトゥルクの街並み

1812年までフィンランドの首都でもあった「トゥルク」は、大切に補修されながら佇む木造建築の建物と現代アートが入り混じる都市だ。

暑い夏の日には、『中世のマーケット』と呼ばれる音楽祭や演劇のイベントも開催されている。

主催者側のスタッフが全員、中世時代の洋服に身を包んでいるイベントのため、夏の「トゥルク」を訪れた際は、時空を超えたような不思議な気分になる人々も多い。

「トゥルク」の素晴らしさを発信できる機会が訪れた瞬間

1年を通して多様な文化プログラムを展開する『欧州文化首都』という世界的文化事業をご存じだろうか。

お互いのアイデンティティーや文化の理解を深めると同時に、ヨーロッパ各地の都市や地域に残る伝統文化を祝福しよう』という目的で1985年から世界各国の指定都市で開催されている国際的イベントであり、欧州連合(EU)では最も有名な事業だ。

『欧州文化首都』に選出された都市には、食や歴史、伝統といった幅広い分野に特化した講演会やワークショップを通して、開催国の都市や地域の文化を発信する機会が与えられる。

「トゥルク」は、2011年に見事、『欧州文化首都』に選出された。

この絶好のチャンスを掴んだ「トゥルク」は、旧首都である「トゥルク」だからこそ味わえる中世時代の歴史の名残りや、街の中心を流れる『アウラ川』沿いに立ち並ぶ美術館やレストランの魅力、そして毎日、運航している「トゥルク」とスェーデン・ストックホルムを繋ぐクルーズ船の姿を積極的に発信し続けた。

これを機に、フィンランド旅行の計画の中に「トゥルク」を選択する人々も増え、「トゥルク」の国際的な知名度の上昇と観光業の活性化という偉業を成し遂げることに成功する。

『トゥルク』

アウラ川を運航する大型旅客フェリー

「トゥルク」の歴史を見続けたフィンランド最古の建造物の正体とは?

『フィンランド』を語る上で欠かせないのが、1200年代から約600年の間『フィンランド』を支え続けていた旧首都「トゥルク」の歴史そのものを表す『トゥルク大聖堂』と『トゥルク城』の存在だ。

双方とも隣国スウェーデンの影響を受けた歴史的建造物としての存在感を放ち、「トゥルク」の街を代表する有名な観光地としての役割を果たしている。

アウラ川の南岸に建築された『トゥルク大聖堂』は、フィンランド国民の約7割が信仰しているフィンランド福音ルター派の教会であり、何より高さ101mの塔が印象的だ。

石造りの外壁から連想されるように、中世最古の由緒ある教会としても知られている。

『トゥルク』

トゥルク大聖堂、1814年、1827年の大火の前に

併設されている教会博物館では、教会衣装の他、1300年に建築されて以来、火災や戦争の被害に見舞われながらも「トゥルク」の人々の手によって再建を繰り返してきた『トゥルク大聖堂』の歴史の数々が展示されている。

一方、アウラ川の西側に建つスウェーデン統治時代に築かれた『トゥルク城』は、歴史博物館に姿を変え、「トゥルク」の人々の生活に焦点を当てた歴史を伝えている。

『トゥルク城』の館内は薄暗い照明で照らされ、教会、展示室、華やかな雰囲気の部屋が続いていき、刑務所として使用されていた場所も登場する。

複雑な迷路のような内装の造りもとても特徴的だ。

『トゥルク』

トゥルク城

中世最古の城と謳われる『トゥルク城』の素朴な外観からは、『トゥルク大聖堂』同様に長年「トゥルク」の街を見守り続けた様子が伺える。

ある時は兵士たちの駐屯地として、またある時は貴族達の居城として、時代の情勢と共に役割を変えてきた『トゥルク城』の軌跡を色褪せることなく象徴している所も見応えある部分だ。

フィンランドの原点を知る鍵は旧首都「トゥルク」にあり!!

流行や話題性に捉われず、歴史と文化の継承という視点から観光業に挑んできたフィンランド西の都「トゥルク」。

一つの都市がどのような経緯で成立しどのような歴史を乗り越え、人々に守られてきたのか、その過程を知ることも観光の醍醐味であることを「トゥルク」は教えてくれる。

交通手段の便利さや、近代的な建物が数多く集まる首都圏の素晴らしさに劣らない「トゥルク」の自然と、街の素晴らしさに触れることは、フィンランドという国全体の魅力を改めて実感できる瞬間だ。

自由な旅行を思いのまま実行できる世の中が戻った際には、中世の香り漂う「トゥルク」の街で、フィンランドの原点を体験できる旅に出掛けて欲しい。

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 2019年の「ミュンヘン安全保障会議」を振り返る 〜米国vs中国…
  2. ジェームズ・ボンドの魅力と歴代のボンド 【世界最高のスパイ】
  3. 毛沢東とはどんな人物だったのか?② 「生涯歯を磨かなかった、性格…
  4. 2020年7月に亡くなった『glee』出演のナヤ・リヴェラはどん…
  5. 政府閉鎖の影響(政府職員に関して)について調べてみた
  6. 『海と共に生きる台湾の原住民族』タオ族に根付く独特な文化 ~ふん…
  7. アメリカの金融業界を支配した 「モルガン家」の歴史
  8. 【減税を訴えるため、裸で街を行進した貴婦人】ゴダイヴァ夫人の伝説…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

【三国志以前の大事件】 党錮の禁とは ~汚職まみれの宦官たちが清流派を大粛清

三国志以前の大事件中国の歴史は宦官の歴史でもあり、彼らは長きに渡って権力を握ろうと暗躍し…

奥州合戦で汚名返上!河村千鶴丸13歳の初陣エピソード【鎌倉殿の13人】

身内が不祥事を起こしてしまうと、何もしていない自分まで気まずい思いをしてしまうことは少なくありません…

後白河法皇は本当に「日本一の大天狗」だったのか? 「平安末期・権謀術策を用いて君臨」

鳥羽法皇から軽視された青年時代平清盛をして「日本一の大天狗」と言わしめたとされる後白河法…

結城秀康【家康の実子にして秀吉の養子だった豪将】

家康の次男結城秀康(ゆうきひでやす)は、幼名を於義丸(おぎまる)といい、徳川家康の次男と…

毛利氏 ―安芸の国人から中国地方統一まで―

はじめに※紙本著色毛利元就像ここでは、戦国大名毛利元就について取り上げる。毛利元…

アーカイブ

PAGE TOP