米空軍の現在の主力戦闘機「F-15 イーグル」は初飛行から40年以上が経ち、F-15の不足を補うために採用された「F-16 ファイティング・ファルコン」もわずかに遅れて40年以上を迎えた。
だが、1997年9月、パイロットたちが待ち焦がれた次期主力戦闘機「F-22 ラプター」が配備される。以後、生産数を増やしつつ、現在では200機近くになった。
猛禽類が支配する空
初飛行から20年と聞くとずいぶんと昔のように思うだろうが、兵器、とりわけ戦闘機としてはまだまだ最新といえる。
F-15ですら、本国での部隊配備は終えたものの、在日米軍、在欧米軍では現役を守り抜いているからだ。しかも、現在進行形で近代化改修も行われており、完全に引退するのはまだ先の話となった。
だが、本国の守りはF-22が担うようになる。ペットネーム(愛称)はF-15が鷲、F-16が隼だったが、F-22ではずばり「ラプター(猛禽類)」となったが、これはこの機体が単なる戦闘機ではなく、「多用途戦術戦闘機」という新しいカテゴリーに分類される航空機となったからだ。
アメリカ軍の航空機には、航空機同士の戦闘を専門とする「戦闘機」と、対地攻撃を専門とする「攻撃機」が存在するが、F-22は一機でそのどちらも行えるよう設計された。
エイリアン
開発した「ロッキード・マーティン」は「Air Dominance(航空支配)」という単語を用いてこの機体を表現している。本来は、対空レーダーや対空ミサイルなどを叩いたあとに戦闘機が制空権を握るのだが、F-22の場合は単機で行えるという自信の表れだろう。
ステルスのなんたるかは、「F-35(ステルス戦闘機)について調べてみた」や「ステルス技術の進化について調べてみた その1」に詳しいので省くが、機体の外に追加のミサイルをぶら下げず、機内に収納しただけの状態だとステルス性が発揮される。
F-22はF-15とほぼ同じ大きさだが、正面からレーダーを使って見てみると百倍以上小さく映るという。これにより、F-22は映画『エイリアン』に登場する宇宙生物の役割を演じることになる。つまり、どこにいるのか分からない恐怖で敵をそのエリアによりつかせなくするということだ。
バケモノエンジン
F-22が「とびっきり」な機体なのはステルス性能だけではない。エンジンも「プラット・アンド・ホイットニー F119」という、素晴らしいものを2基搭載している。
F-15でも2基のエンジンを搭載していたが、F-16では1基となった。これはF-35もそうだが、コストの軽減に大きく貢献する代償にリスクを負うことになる。エンジンが一基しかない場合、そのエンジンには大きな信頼性が求められるのだ。さらにパワーも弱くなる。F-16は逆にその特性を活かして「小回りの利く軽量機」となったが、やはり主力戦闘機としてはエンジンが一基では物足りない。
結果、F-22のエンジンは、アフターバーナー(車のターボのようなもの)なしで、音速の壁を超えるというバケモノじみた性能を持った。しかも、ノズルが上下に20°ずつ動くためにF-15よりも小回りが利く。実際、このノズルを使って飛行する姿は、従来の航空機の飛び方を知る人間からみれば「気持ち悪い」ほどの機敏さで驚かされる。
ファーストルック・ファーストショット
基本的に武装は機体の兵器庫に収められる。胴体の左右側面と下面の計3ヵ所になるが、これによって搭載量は犠牲となってしまった。左右の兵器庫には対空ミサイルが1発ずつ、下面には中距離空対空ミサイルが4発の計6発のミサイルが収まる。
この状態こそステルス性を発揮するもので、機首に搭載されている20mm機関砲も普段はその発射口は閉じていて、発射時のみパッと開くようになっている。
また、F-22のコンセプトとして「ファーストルック・ファーストショット(先制攻撃)」というものがあり、敵よりも高性能なレーダーにより、先に相手を見つけて、先に撃つというものだ。そのため、より高度なデータリンクシステムも採用している。例えるなら「航空機のインターネット」のようなものだが、F-22よりも性能の高いレーダーを有する早期警戒機やイージス艦、地上部隊などと双方向でデータをやり取りすることができるため、リアルタイムでより正確な情報を共有できるようになった。
F-22 生産数の減少と輸出の可能性
F-22の生産数は計187になったが、当初の目的である648機を大きく下回ることとなった。
これは、世界的な不況とコスト高騰の煽りを受けたもので、その開いた穴を埋める形でF-35が開発、採用された。
輸出に関しても、日本の航空自衛隊やイスラエル空軍などを取引先に検討していたが、主にステルス技術の情報漏えいを防ぐために見送られている。だが、F-15のように今後、対地攻撃型などのバリエーションが登場する可能性も皆無ではないため、輸出が行われるかもしれない。ただ、その場合でも組立やオーバーホールはアメリカで行われるだろう。
最後に
F-22の追加生産についてある将校が「20年前に開発された戦闘機を再生産しても意味がない」と発言しているが、戦闘機の設計から実際の配備までは10年以上かかる。
空軍はすでにF-22の後継機開発を模索しているのが現状で、次世代の戦闘機は「レーザー砲」を装備したものと推測されている。だが、それまではF-22が大空を支配し続けるのは間違いない。
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