自然&動物

5月頃、コンクリートの上にいる「小さな赤い虫」の正体 【人に害はあるのか?】

画像 小さな赤い虫 ※著者撮影

5月ごろになると、ベランダやコンクリートの壁、花などに「大量の小さい赤い虫」が湧いているのを見て、ぎょっとした経験はないだろうか?

筆者は今年引っ越ししたのだが、新居のベランダでなんとなく手すりの下のコンクリートを見たら、何匹もの小さな赤い虫が動いていてビックリした。

それほど素早い動きではないが色が真っ赤でちょっと気持ち悪いし、何よりなぜそこに発生しているのか理由がわからないことが不気味なのである。

花や生物の死骸などに湧いてるならまだしも、なんの餌もなさそうな無機質なコンクリートの上をなぜうろうろしているのか?

シロアリのように、建築物にとって良くない虫なのでは?と少し怖くなって、調べてみた。

正体はタカラダニというダニだった

イメージ画像 同じ科に属す赤いダニ(ニュージーランド) wiki c

結論から言うと、この小さな謎の赤い虫の正体は「タカラダニ」というダニであった。

ダニであるので昆虫ではなく、クモと同じ蛛形鋼(しゅけいこう)のダニ目 に属している。正確には、ダニ目前気門亜目タカラダニ科アナタカラダニ属のカベアナタカラダニ(Balaustium murorum)という種である。

ダニの中では比較的大きく、体長は1mm前後。

日本においては、北海道から沖縄まで全国に分布し、5月のGW明け頃から、日当たりの良い公園のコンクリート部分や階段やベランダ、花などに発生する。

しかし寿命は短く、7月頃には死んでしまい、ぱったり見かけなくなる。

生態はまだ不明

詳しい生態についてはまだ不明な点が多く、メスしか発見されていないことから。年1回の単為生殖と考えられている。

エサは花粉

餌についても詳しくは不明であるが、花粉を食べていることだけは確実なようである。

つまり、無機質なコンクリートの表面などに大量に発生していた理由は、コンクリートにくっついた花粉を食べていたのである。

筆者が危惧したシロアリのように、建造物に関わる何かを食べていたのではなく、タカラダニたちはただ表面にくっついた花粉を食べていただけなのであった。

人にも無害だった

しかもタカラダニは、マダニやイエダニように哺乳類にくっついて吸血したりもしない。ヒゼンダニやニキビダニのように皮膚にくっついて皮膚病の原因になったりもしない。

彼らはただ、コンクリートの上をうろうろして、花粉を食べているだけの人畜無害のダニなのであった。

とはいえ手で潰したりなどしてそのまま長時間放置すると、体液で皮疹を生じる恐れもあるそうなので、むやみやたらには触らない方が良さそうだ。

駆除したい場合は、コロコロなどで取ってしまうか、水で流してしまうのが良いだろう。

寄せられているタカラダニの被害についても、ただ「見た目が気持ち悪い、刺されないか教えてほしい」というのが大半だそうである。

つまり詳しい生態はまだ不明であるが、現状は「見た目が気持ち悪いだけで無害」というのが結論である。

見た目はグロいが、実はただ花粉を食べたくてウロウロしていただけなのだと知ると、印象も少し変わっていきそうである。

参考 : タカラダニをご存知ですか? 京都府保健環境研究所

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 「海上にできた巨大ごみ集積所」太平洋ゴミベルトとは 〜人間もビニ…
  2. 【奇跡の脱出劇】クジラに飲まれた男たちが生還できた驚愕の真相
  3. 象への虐待について調べてみた 「タイやインドの観光の陰」
  4. イルカに秘められた能力とは? 「新しいメンタル治療として話題のイ…
  5. 狼に育てられた少女アマラとカマラ
  6. 【あなたを母親だと思ってる?】 飼い猫の仕草には様々な意味があっ…
  7. 「パンダが日本から消える?」外交官となった神獣の数奇な歴史 〜パ…
  8. 原宿にはかつて「ナウマンゾウ」がいた

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

悲劇の小覇王 孫策 「項羽と並び称された武勇」

呉の礎を作った小覇王魏、蜀、呉の三国で最後まで生き残った呉だが、孫権が200年に呉を継い…

防衛省が熊本に長射程ミサイル配備へ「射程約1000km」九州が防衛の最前

現在、日本の防衛政策は大きな転換期を迎えている。その中心に据えられているのが、敵基地攻撃能力…

平安時代の女性たちの恋愛術 「美人の条件、出会いの場、陰湿なイジメ」

後宮とは平安時代、京の都には江戸時代の大奥と同じような嫉妬渦巻く女の園があった。…

「本能寺の変」の後、明智光秀は何をしたのか?秀吉に討たれるまでの10日間の行動とは

戦国時代最大のクーデター「本能寺の変」。天正10年(1582年)6月2日、明智光秀が…

「子供をポンポン」暴言にショックを受けていた瀬名(築山殿)、実は自分の嫁(五徳姫)にも同じことを言っていた?【どうする家康】

「それはな、お瀬名殿。そなたがもう女子(おなご)として、終いということじゃ」「子を産まなくなった…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP