なにかとストレスの多い現代において、うつ病などの精神疾患は誰にでもなる可能性がある。
可能性の話なので、健康が一番であることに変わりはないが、もし自分がうつ病や躁うつ病、統合失調症などの精神的な病を患ってしまったら、どうすればいいのか?
専門医の診察を受けるのは当然だが、お金の心配もしなくてはいけない。もし病気が長引いてしまったら、診察代や薬代もバカにならないし、休職や失業なんてことになったら深刻だ。
今回は、「もしも」のために精神疾患とお金の話をしたい。
失業保険
長引く不況により、零細企業や自営業者のもとで働く者には失業保険 がかけられていないことも多い。そうなると、自主的に失業保険をかけるしかない。といっても民間の保険会社で失業保険を商品化している企業はないので、自主的にというのは雇用主との話し合いという意味である。
失業保険を受給するにはハローワークに申請するのだが、誰でも失業保険を受け取れるわけではない。受給するためには一定の条件を満たしていることが必要となる。
1.本人に就職する意思と能力がある。
2.積極的に求職活動を行っている。
3.離職日以前の2年間に被保険者期間が12ヶ月以上ある。
雇用保険では「退職=失業」とはならない。働きたいから転職活動をしているのになかなか就職が決まらない人だけに、失業保険を給付してる。
本来、雇用保険は企業側に加入する義務がある。しかし、加入していないことが判明した場合は、まず、事業主に聞くべきだろう。
その上で、事業主が承知で加入していない場合は、ハローワークに相談するしかない。ちなみに、雇用保険の管轄は労働基準監督署ではなくてハローワークになる。
自立支援医療制度
※自立支援医療の受給者証と自己負担上限額管理表の例(神奈川県川崎市)
精神疾患 はゆっくりと少しずつ改善していく疾患が多く、そのため治療は長期にわたる通院が必要となる。
さらに学校に通いながら、仕事をしながら通院するとなれば、さらに治療期間は長くなってしまう。中には療養のため、主治医の指示で仕事をストップしている患者も存在する。この場合、経済的な問題は更に深刻になる。せっかくストレスを下げるため休職したのに、医療費の負担がストレスになってしまうと精神状態はかえって悪化してしまうだろう。これでは本末転倒だ。
そのため、長期通院が必要となる精神疾患患者の経済的な負担を軽減させる目的で「自立支援医療制度」というものがある。
この制度を利用すると、外来通院をしている患者は通常の3割負担よりも自己負担額が引き下げられ、自己負担は1割となる。更に自立支援医療では自己負担費の上限も設けられている。患者の世帯収入により上限額は変わるが生活保護を受けておらず、前年度の所得に対して非課税となれば上限は2,500円。さらに薬代も対象となる。
つまり、毎月2,500円以上は診察代も薬代も国が負担してくれる ことになるのだ。
自立支援医療は精神疾患であれば、どんな疾患でも適用となる可能性が高い。まずは主治医に自立医療制度を利用したいことを話し、主治医が必要性を認めれば、比較的簡単に受給者証が発行されるだろう。
障害年金
もし、重度の精神障害と診断された場合は、障害年金の受給対象になるかもしれない。身体障害、精神障害ともに「障害」という点で、「障害年金」の対象とされる。
障害年金は、成人であれば年齢は関係なく受給される可能性があるが、それには2つの条件がある。
1.障害認定基準を上回る障害状態であること
2.年金(厚生年金・国民年金)を一定以上未納にしていないこと
1の条件では、主に統合失調症、うつ病、躁うつ病が対象になる。詳しくは、主治医か病院のケースワーカーに相談するといいだろう。
2の条件はちょっとややこしい。具体的には、次の条件のどちらかに当てはまっていることとされる。
・初診日の前々月までの年金加入月数の3分の2以上が、年金納付済みか、免除されている月であるとき
・初診日の前々月までの12ヵ月がすべて年金料納付済みか、免除を受けた月であるとき
つまり、「初診日までしっかり年金を納めていないと受給資格はない」ということだ。未払い期間があって不安なようであれば、年金機構に問い合わせることで確認ができる。
この条件をクリアしたのなら、精神疾患であると認定された病院の「初診日」とそれを証明する診断書、さらに現在の状態を証明するための診断書が必要となる。診断書の料金は病院によって異なるが、おおよそ一枚5,000円から10,000円と思っていい。それが二枚必要になるということだ。
それらの必要な書類を日本年金機構に提出し、審査を受けて合格すれば障害年金が受給される。精神障害の場合、寝たきりでもない限りは、2級か3級(3級は厚生年金納付者のみ)となるだろう。
ちなみに、2級で国民年金加入者の場合は月額平均約6万円、厚生年金加入者は月額平均約12万が払われるといわれている。
一度受給資格が得られれば、再就職できても支払われるのでぜひとも申請したいものだが、この審査が厳しいのだ。そのため、社会労務士(社労士)に代行してもらうという方法もある。もちろん有料(例:手付金2万円、成功報酬として受給額の2か月分)だが、社労士なら審査に合格しやすい診断書の書き方を医師に伝えてくれたり、書類作成や年金機構への提出なども代行してくれる。
精神疾患で働くこともできない状態であれば、必要書類を揃えるだけでも難しいので、覚えていて損はないだろう。
最期に
ここに書いたのは、経済的な負担を軽減する方法と、その内容を簡単にまとめたものだ。
特に障害年金は、必要書類を揃えるのも、受給資格を得るのも、かなり難しい。詳細は、各自治体の役所にある「障害福祉課」などの障害者を対象とする部署で相談するか、通院している病院にケースワーカーがいれば、まずはそちらで相談して欲しい。
もちろん、このような制度を必要としないのが一番良いのだが、万が一のためにこういった支援制度もあるということだ。
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