ジュラ紀の最後に現れた支配者
超巨大恐竜の時代であるジュラ紀は、草食恐竜とともに肉食恐竜も大きくなっていった。
そんなジュラ紀に現れた最強のハンターとして有名なのがアロサウルスだ。
長い手足を持った均整の取れた身体はT-REXことティラノサウルス・レックスとはまた違った魅力がある。
今回は、ジュラ紀の終盤を支配したアロサウルスを紹介する。
化石戦争を盛り上げた「異なったトカゲ」
アロサウルスの発見はかなり古く、1877年にオスニエル・チャールズ・マーシュによって発見された。
T-REXの前身となるマノスポンディルスが発見される前の出来事であり、しかも世間を騒がせた化石戦争真っ只中だった事を考えたら、新種の大型獣脚類としてアロサウルスの発見に大いに盛り上がった事は想像に難くない。
なお、アロサウルスは「異なったトカゲ」という意味だが、当時は椎骨が他の恐竜と違うと思われた事によって命名された。
だが、時代が進むにつれて同様の特徴を持った恐竜が発見されるようになり、アロサウルスが特別特徴的な恐竜という訳ではない。
アロサウルスの腕
主観の話になってしまうが、筆者はT-REXよりもアロサウルスの方が好きで、かっこいいと思っている。
その最大の理由は、腕だ。
この文章だけだと恐らく何の事だか分からないと思うので詳しく説明すると、極端なまでに腕が短いT-REXに比べてアロサウルスの腕は長く、イラストにするとT-REXよりも見栄えがいい。(腕が短いT-REXはどうしてもアンバランスで気になってしまう)
また、T-REXの指が2本しかないのに対してアロサウルスは指が3本あり、T-REXよりも実用的に見える。
実際に物を掴めていたのか、獲物を捕える事が出来たかは不明だが、T-REXに限らず腕が短く描かれがちな大型肉食恐竜に於いて比較的腕の長いアロサウルスは均整の取れた美しいルックスをしていると個人的には思っている。(バリオニクスにスピノサウルスといった腕の長い大型肉食恐竜は他にもいるが、アロサウルスやT-REXのような誰もが想像する肉食恐竜のステレオタイプからは離れているので別の扱いにした)
もう一つ外見の特徴を挙げると、トレードマークというべき目の上の突起が目を引く。
角、鶏冠(とさか)、こぶと色々な呼び方をされているが、これは涙骨が延長したもので、個体によって長さや形に違いがあった。(なので角のように描かれるイラストも間違いではないが、アロサウルスの涙骨は飾りであり、角としての機能は当然ながら存在しなかった)
ハンターとしてのアロサウルス
外見的な魅力だけ語るのはアロサウルスに失礼なので、次にハンターとしての特徴を紹介する。
ジュラ紀最強の肉食恐竜の称号を不動のものにしているアロサウルスだが、T-REX同様鋭い歯にはギザギザ(鋸歯)があり、肉を噛み切るのに適していた。
これ自体は獣脚類によく見られる特徴でもあるので特別珍しいものではないが、比較的長い腕に付いた鋭い鉤爪の威力も獲物である草食恐竜にとって脅威だった。(T-REXの短い腕も人間以上の力があったと言われているが、アロサウルスに比べるとあまりにリーチが短いので用途は今も分かっていない)
ヴェロキラプトルのシックルクロウと違って威力の検証をした訳ではないが、地上最大の肉食(正確には雑食)動物であるクマの爪であれだけの威力があるのだから、アロサウルスの爪で攻撃されたらひとたまりもなかっただろう。(上野の国立科学博物館で対面したヒグマの剥製の迫力から「勝てる気がしない」と思わされた分、化石だったアロサウルスより正直恐かったが、そのクマより数倍大きなアロサウルスに襲われた時の事は想像したくない)
一説によると咬合力が6トンもあり、車を噛み潰せると言われるT-REXに比べるとアロサウルスの咬合力は364キロと弱く、サイズも小さく体重も軽いが、その分スピードという武器があった。
T-REXのスピードが約時速28キロであるのに対してアロサウルスは約34キロと、ヴェロキラプトル(38-40キロ)よりは遅いが、当時生息していたカンプトサウルスなどの草食恐竜を襲うには十分すぎる脚(スピード)を持っていた。
アロサウルスは何を食べた?
ジュラ紀の食物連鎖の頂点に立っていたアロサウルスだが、どの恐竜を襲って食べていたのか、狩りは単独だったのか、群れだったのか分かっていない事はまだ多い。
巨体が一番の武器である竜脚類、アパトサウルスの化石からアロサウルスの歯が発見されたが、群れからはぐれたところを襲われたのか、ケガをしてまともに戦える状態ではなかったのか、詳しい事は分かっていない。(群れで襲ったという説もあるが、大型の恐竜を捕食するには群れで襲うしかないという推論だけで、アロサウルスが群れで行動した証拠はない)
当然ながら狩りは必ずしも成功した訳ではなかったので、空腹時は死んだ恐竜も食べるスカベンジャー(府肉食)だった面もあるだろう。
また、最近になってアロサウルスが共食いをしたという説が濃厚になっている。
肉食動物の共食いは現代でも有り得る話だが、アロサウルスの化石からアロサウルスに襲われた形跡が発見されたのは、大型肉食恐竜も共食いをした証拠として大きな発見だった。
大型肉食恐竜同士の共食いは想像しづらいが、病気やケガ、及び長期の狩猟失敗による空腹、そして年齢による衰えによって弱っていたアロサウルスもアロサウルスの餌食だった。
アロサウルスに会える博物館
途中で少し書いたが、2017年7月16日に国立科学博物館に行って来た。
夕方に埼玉スタジアムで予定されていた鈴木啓太引退試合の前に恐竜が見たいという事で友人と博物館巡りをしていた訳だが、そこでアロサウルスの骨格と対面した。
後で見たヒグマの剥製のインパクトの方が強く、写真を見返すまで当時の感動も忘れていたが、この骨格は1964年に日本で初めて公開された恐竜全身復元骨格で、頭骨を除いて実物という非常に貴重なものである。
アロサウルスの骨格は国立科学博物館以外でも見る事が出来るが、ここで展示されている骨格以上に日本で歴史を持ったものは存在しない。
ジュラ紀最強の肉食恐竜に会える貴重な経験が出来るので、アロサウルスに興味を持った方は是非とも「本物」の迫力を感じて欲しい。
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