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Mrs. GREEN APPLEの新曲「コロンブス」が物議
人気バンドMrs. GREEN APPLEは、6月12日に新曲「コロンブス」をリリースしましたが、そのミュージックビデオ(以下、MV)の内容が思わぬ波紋を呼んでいます。コカ・コーラとのコラボ曲として満を持して発表されたものの、ネット上では批判の声が殺到し、大きな騒動へと発展している状態です。
問題となったMVでは、Mrs. GREEN APPLEのメンバーが西洋貴族のような衣装を着飾り、ある小島に住むサルたちと交流する様子が描かれていました。
しかし、その交流シーンが問題視されています。サルたちを人力車の引き手としてこき使ったり、音楽や学問を一方的に教え込むシーンが含まれていたからです。植民地支配や西洋中心主義を肯定するものだと受け取られ、ネット上では非難の声が殺到しました。
コロンブスは植民地支配の象徴的存在
15世紀から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパ諸国は世界各地へと進出し、アフリカ、アジア、南アメリカなどの地域を次々と植民地として支配しました。
現地の住民たちは、自分たちの土地や資源を奪われ、強制労働を強いられるなど、過酷な状況に置かれるようになります。その中には虐殺や抑圧が行われた地域もあり、植民地支配は多くの国々にとって、苦痛と搾取の歴史として記憶されているのです。
そしてクリストファー・コロンブスは、15世紀に活躍した探検家であり「新大陸(現在のアメリカ大陸)」を発見した人物として、世界史の教科書にも登場します。しかしその一方、植民地支配の時代を象徴する存在としても認識されています。
1492年、スペインの援助によって大西洋横断の航海に挑んだコロンブスは、アメリカ大陸(新大陸)へと到達。ヨーロッパによる世界進出の口火を切ったのです。
今回のMVで登場する島(Mrs. GREEN APPLEのメンバーが乗り込んだ島)は、まさにコロンブスが発見し、のちに白人が入植したセントクリストファー島(セントキッツ島)を想起させます。
コロンブスのアメリカ大陸到達をきっかけに、ヨーロッパ諸国はこぞって新大陸へ進出。一方的にアメリカ大陸を分割し、植民地支配を強めていったのです。
その過程の中で、現地の先住民たちは住み慣れた土地を奪われ、ヨーロッパの支配者たちに服従することを余儀なくされました。
コロンブスの「新大陸発見」は、世界史の転換点となった出来事ではありますが、また同時に先住民への搾取や感染症の蔓延など、悲惨な歴史の始まりでもあったのです。
日本人の歴史認識不足が背景に?
新曲「コロンブス」は公開直後から、人種差別や歴史認識を指摘する声が殺到し、現在MVの公開は停止されています。
激しい批判を集めているのは、MVの内容が植民地支配の歴史を呼び起こし、それによって傷ついた人々の感情を軽視した内容だったからです。こうした歴史的背景を十分に考慮せずに、制作陣はMVを制作してしまったのかもしれません。
2008年の四川大地震における、日本のファインプレー
この問題を通じて浮かび上がるのは、多くの日本人が歴史を十分に知らないという現実です。
2008年に中国で発生した四川大地震の際、日本の自衛隊機派遣が問題となりました。
中国政府は、地震で孤立した被災者に支援物資を送るため、日本政府に緊急支援を要請します。一刻の猶予も許されない状況だったため、中国側は「自衛隊機の輸送でも構わない」と伝えてきたそうです。それだけ中国政府もあせっていたのです。
しかし自衛隊の派遣に対して、懸念を示す中国国民の声が予想されました。日中戦争(1937年〜1945年)の際、四川地方は日本軍の大規模爆撃を受け、多くの犠牲者を出した場所です。当時の首都・重慶も半年以上にわたる爆撃を受け続けたため、中国人にとって忘れられない歴史となっています。
このような状況を憂慮した日本政府は、一部の見識ある官僚たちの判断によって民間機を手配していました。中国国民の激しい反発を事前に予測した官僚たちは、1秒を争う状況の中でも、中国国民のプライドを傷付けない形で、スムーズな救援活動を実現したのです。
「自衛隊機でも構わない」という中国政府の真意を理解し、慎重に対応した結果だと言えるでしょう。
歴史を学ぶことの重要性
グローバル化が加速する現代社会において、日本が国際社会の一員としての責任を果たすためには、自国の歴史だけでなく、他国の歴史や文化に対する深い理解と敬意が不可欠です。
今回の「コロンブス」騒動は、まさにそのことを痛感させる出来事でした。歴史認識の欠如が、どれほどの波紋を広げるのかを、私たちは改めて思い知らされた格好です。
歴史は単なる過去の出来事の記録ではありません。そこには、人々の喜びや悲しみ、怒りや葛藤が刻まれています。歴史を多角的に理解し、異なる文化や価値観を持つ人々の視点に立って考えることは、未来における無用な対立や誤解を防ぐことにつながるはずです。
参考文献:ゆげ塾(2017)『3時間半で国際的常識人になれる ゆげ塾の速修戦後史 欧米編』ディスカヴァー・トゥエンティワン
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