食大国中国
中国の食文化は世界中で高く評価されている。
その長い歴史と食に対する探求心や熱心さが、中国の食文化を発展させてきた。
広い中国大陸の中で、各地の特色を備えた料理は多くの旅行者の舌を楽しませている。
「食」はコミュニケーションのツールとして使われ、今なお発展している。
筆者が中国に住んでいた時に感じたのだが、中国の食の流行の変化は大変目まぐるしい。
熱し安く冷めやすい国民性なのか、一旦ある料理が流行すると猫も杓子もドンドン開店させるが、流行がすぎると(おそらく食べ飽きる)波がサーッと引いていくかのように、店が次々と潰れていく。
そしてまた新しい料理が流行るのである。
今後も中国の食文化は様々な挑戦を続け、新しい味を生み出していくことだろう。
今回は、中国古代の一風変わった料理の記録について紹介する。
晋朝の時代にあった『母乳の宴』って?
晋の武帝・司馬炎の時代に「人乳宴」というなんとも奇妙な記述が残っている。
これはつまり「母乳を使った料理の宴」という意味であるが、一体どのようなものだろうか。
こんな話が残っている。
ある人の家に司馬炎が食事に招かれた。そこで出された料理は子豚の蒸料理だった。食べてみると肉は柔らかく、非常に美味であった。
その料理を堪能した司馬炎は家の主人に尋ねた。「これは一体なんの料理だ?」
主人は得意げに答えた。「我が家の子豚は人の母乳を飲んで育っております。そのおかげで肉は甘く美味でしょう?」
この料理は「人の母乳で煮た子豚」という解釈になる。
司馬炎は気分を害し、食べ終わる前に席を立ち出ていったという。
今も湖南省に存在する母乳料理
実は中国では、現在でも母乳を使った料理を食べることができる。
湖南省では母乳で作った料理を提供しているレストランが存在するのだ。
オーナーは三ヶ月の期間をかけて、60以上のメニューを開発したという。
それはアワビの母乳煮や煮魚、母乳火鍋などである。しかしほとんどの客は食べるのを躊躇するという。
栄養面からいうと、赤ちゃんの成長に必要な栄養素は全て母乳の中に入っているので、健康を害するものではないはずだ。
しかし倫理道徳の方面から否定的な態度をとる人もいる。女性への侮辱行為だとして重く捉える批評家もいるようだ。
店側は母乳を提供する女性達を「栄養士」と呼ぶ。
この「栄養士」は、23際から30歳までの授乳中の女性を対象としている。彼女達は半径89キロ以内に工場やその他の汚染原因がない田舎に住んでおり、衛生局の厳しい検査を受け、B型肝炎やエイズなどの感染がないかなどが調べられる。
こうして安全で良質な母乳がレストランへ届けられ、料理に使われるという。
ところがこの母乳料理は多くの物議を醸し出し、社会問題に発展する可能性もあるという。
まず、衛生面についてである。
湖南省の衛生局所長の話によると「前代未聞」ということである。前例がないため何の規制もなく、新しく「母乳」について研究し、保存方法から検査の項目まで一から作り出す必要があったという。
所長はこう続ける。「他の動物の乳は高熱で消毒して初めて安全に食用にすることができる。人間の母乳も同じ要領で消毒すれば安全に食用にすることができるのではないか?」
今後も衛生局によって調査は続けられるようである。
批評家たちの間では「母乳料理は、まず母乳の基本的な用途からかけはなれている」という意見がある。
母乳は本来自分の子供を育てるために使われる。その授乳の行為は時に母性の象徴、神聖で厳かなものとして表現される。その人間の母乳を食して料理に使うというのは、倫理道徳に反することになるというのだ。
その他、「人乳宴」という言葉は低俗なものを連想させ、伝統的な道徳や尊厳の崩壊へとつながる、と危惧されてもいる。
いずれにせよ想像を超えた食文化である。興味のある方は中国に行った際に立ち寄ってみるのも一興かもしれない。
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