不死不老の概念
人類は太古より「不老不死」を追求してきた。
仏教では4つの苦を「生・老・病・死」と表現する。
どんな立場の人間も、この4つの苦からは絶対に逃れられないということである。
古今東西、人類はこれになんとか抗おうと様々なことを試みたが、その多くは迷信気味たものや逆効果なものが多かった。
例えば古代エジプトでは病気や怪我の治療に人の排泄物が使用されていた。排泄物を傷口に塗りたくるなど現代の私たちからすればあり得ない治療法である。
不老不死を追い求めた始皇帝
古代中国の多くの皇帝は、多額の費用と時間をかけて不老不死の薬を探し求めてきた。
その背景には道教があり、道教は神仙を目指し不老不死を理想としていた。
始皇帝が生涯をかけて不老不死を追い求めたことも有名な話である。
始皇帝は不老不死の効果があると信じて「水銀」を口にして命を落としたという逸話も残っている。実際兵馬俑の発掘された始皇帝陵からは、かなり濃度の高い水銀が検出されているという。(※墓の盗掘から守るためという説もある)
始皇帝は不老不死の薬を求め、徐福という方士に霊薬を探しに行かせている。
そして徐福に探させた霊薬は「肉霊芝 : にくれいし」というものだったと推測されている。
肉霊芝とは
肉霊芝は「視肉」ともいい、中国の神話上の生物であるが実在している。民間では「太歳 : たいさい」という神の化身だとされている。
その謎めいた外見と、発見されるのが非常に稀であることから伝説化していったと考えられる。中国の小説や薬物関係の書物の至る所にこの肉霊芝の記述がある。
神話時代の帝王(黄帝、堯、舜、禹)は皆この肉霊芝を食べて寿命が100歳以上になったという伝説があることから、後の帝王や皇帝たちも肉霊芝を探し求めるようになったという。
肉霊芝の正体
マンネンタケ科の「霊芝」が中薬に使われているのは、漢方に少し詳しい人なら知っているかもしれない。
肉霊芝は実際のところ、細菌、粘菌、真菌の3種類の生物が奇跡的に集まってできたものである。それは、ごく稀に地下にできると言われている。ごく少数の発見者によると、最初はまるで肉の塊のように見えるという。
肉霊芝は長い時間をかけて形成され、少しずつ大きくなっていく。
発見されたある肉霊芝を調査したところ、なんと20億年前から存在していた可能性があるという。
地下で少しずつ成長しながら、長い間眠っていたのだ。
始皇帝は肉霊芝を手に入れることはできなかったが、2015年、四川のある村で8キロ近い巨大な肉霊芝が発見された。その後、遼寧でも30キロ近い肉霊視が発見され、市場では日本円で約300万円ほどの価格がついた。高額で売れるため、偽物も出回っているという。
肉霊芝は白いものと赤いものが発見されており、白いものはまるで大きな脂肪の塊である。
古代の文献では、黒や青、黄色の肉霊芝もあり、無毒で、精気増量、脳活性、若さを保ち、仙人のようになれる効能があるとされている。
確かに「細菌の塊」聞くと、なんとなく何かに効きそうな気がする。
だが不老不死はおそらく、人間の願望が作り出したものである。
人類は「死」や「老化」に対してはなすすべもなく、その生涯を閉じる。始皇帝もそうであったように。
参考 : 神農本草経
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