中国史

『古代中国の謎の遺跡』 4000年前に高度な技術で栄え、突然消えた 「三星堆遺跡」

謎だらけの三星堆遺跡

「三星堆遺跡」

画像 : 三星堆遺跡の青銅仮面 wiki c Tyg728

三星堆遺跡(さんせいたいいせき)とは、1986年に中国の四川省広漢市、三星堆の鴨子河付近で発見された文化遺跡で、20世紀最大の発見とされている。

発掘された遺物の中で最も古い年代のものは、なんと4000年以上も前である。

出土品がかなり多く、その奇妙奇天烈な遺物は多くの謎を呼んでいる。

「三星堆遺跡」

画像 : Ⅰ号大型青铜神树,三星堆遗址二号祭祀坑出土 wiki c Tyg728

なぜ文字がないのか?

代表的な謎の一つは、いまだに正式な「文字」が発見されていないことである。

その数多くの出土品の完成度から、かなり高度な技術を持った文化だったことは間違いない。
しかし、これほど高度な文化をもった民族が文字を一切持たなかったとは考えにくいのだ。

実際に出土品の中には様々な図案が彫られているものがあり、象形文字のようなものも発見されている。

しかしその数はかなり少なく、文字らしきもの、文字の跡のような漠然としたものしか見つかっていない。

「三星堆遺跡」

画像 : 発見された文字のようなもの public domain

同時期に存在していた商朝(殷)の青銅器には大量の文字が発見されている。

だが、この三星堆遺跡の青銅器には文字が存在しないのである。

前述したように、これほど発達した文化に文字がないことは考えにくいことから、研究者たちはあるひとつの仮説を立てている。

それは「文字は存在していたが、書き記したものが木材などの腐食しやすい材料だったため、現在まで残らなかった」というものだ。

だがこれはあくまでも仮説であり、なぜ文字が見つからないのかは今も謎のままである。

どこから来たのか?

出土品の中には多くの青銅器が含まれる。その技術は非常に高く、精巧なものであった。

「三星堆遺跡」

画像 : 三星堆遺跡 青銅戴冠縦目仮面 長大な額飾りをもつ異形の神の仮面 wiki c BabelStone

それは生活の中で使われる日用品ではなく、崇拝に使われたと考えられるものばかりであり、芸術的にも非常に価値が高く美しいものであった

この技術は一体どこから来たのだろうか?

三星堆遺跡を作った人々は、今からおよそ3000年から5000年前に存在した古代中国の古蜀国の人々とされているが、諸外国との関係についてもはっきりとは分かっていない。

さらに最近の発掘調査では、象牙が大量に見つかっている。

画像 : 大量に見つかった象牙 public domain

当時、雲南省には確かに野生の像が生息していたが、その数は少なかったと考えられている。

それでも研究者たちは当初、中国国内に生息していた象の象牙ではないかと推測したが、出土した本数はなんと1000本を超えているという。

象牙はおそらく、南インドか東南アジアからやってきたのではないかと考えられており、貝についても同様に国外からやってきたのではないかとされている。

いずれにせよ国外との交易は頻繁にあったようだが、それがどこだったのか、その技術はどこから来たのかも不明である。

なぜ姿を消したのか?

これだけ特異な発展を遂げた三星堆遺跡の文化であるが、ある時期に突如姿を消している。

しかし現在までの発掘において、火で焼き払われた跡や大規模な破壊の跡は確認されておらず、多くの出土品は美しい姿のまま、何千年も土の中で眠っていたのだ。

このような偉大な文化が滅亡する理由が外敵の襲来でないとすれば、一体なんなのか?

いくつかの説が挙げられている。

まずは、洪水や地震などの自然災害説である。
他には大規模な流行病で国民のほとんどが命を失ってしまい、国家として成り立たなくなったという説。

そして、三星堆遺跡一帯の生活資源が枯渇してしまい、人々が生活を営むことができなくなったという説である。
その場合、国民たちはおそらく自主的に違う場所に移り住んだと考えられている。

発掘が進めば進むほど逆に謎が増えていく三星堆遺跡は、今後私たちにどんな謎を提供してくれるのか。

参考 :
三星堆文字之谜,学者:即便没有文字,三星堆也是文明

他の三星堆遺跡の記事一覧

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 中国の人身売買が無くならない理由 「8人の子供の母親事件」
  2. 「意見をいう者は全員処刑」 商鞅の恐怖政治とは? 【漫画キングダ…
  3. 【中国三大悪女】則天武后はなぜ悪女と呼ばれたのか? 「産んだばか…
  4. 【古代中国】 皇帝たちの死生観 「遺体を金の鎧で包み肉体を永遠に…
  5. 皇帝の生活は楽じゃなかった? 皇帝の1日について調べてみた
  6. 【古代中国の宇宙人遺跡?】 三星堆遺跡で唯一発見された女性人骨 …
  7. 『中国妖怪キョンシーは進化する?』飛び跳ねる死体が神獣になるまで…
  8. 四川料理はなぜ辛いのか? 「激辛料理 麻辣兎頭(ウサギの頭の唐辛…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

本能寺の変の黒幕は斎藤利三? 明智光秀たちを追い詰めた「四国問題」説とは

本能寺の変は、日本史上最も有名な政変であり、これまでさまざまな説が議論されてきた。羽柴秀吉黒…

織田信長の人物像 「信長の身長、性格、趣味」〜 戦国三英傑の逸話

三英傑とは戦国三英傑(せんごくさんえいけつ)とは、天下人へあと一歩のところまで迫った「織…

サンジェルマン伯爵について調べてみた 【不老不死、高い知能】

太古から不老不死は人類の夢であった。エジプトのミイラ作りは死者の復活を信じて行われ、ハンガリ…

Youtubeで『古代中国』戦国最強の将軍は誰か?を公開いたしました。

Youtubeで以下の記事の配信を開始いたしました。『古代中国』戦国最強の将軍は誰か? 〜白起・…

真田幸村の生涯 「日本一の兵」と呼ばれた男の前半生~

真田幸村(信繁)とは真田幸村(信繁)は人気が高く、とても有名な武将である。第2次…

アーカイブ

PAGE TOP