中国史

『中国の観光地が渋滞で限界突破』 万里の長城が満員電車状態、砂漠でラクダが渋滞?

世界一の人口

画像 : 中国の出生率、死亡率 wiki c Phoenix7777

中華人民共和国は長年、世界で最も人口が多い国として知られてきた。

増加し続ける人口を抑制するため、1979年に「一人っ子政策」が導入されたことは有名である。

しかし近年、女性の社会進出や結婚しない若者、子どもを産まない女性が増え、人口減少が進んでいる。また、医療の進歩によって高齢化が進み、介護問題にも直面している。

焦った政府は一人っ子政策を廃止し、政府官僚に対し子どもを多く産むよう指示する方針を打ち出している。

しかし、人口減少の抑制効果は依然として限定的である。2023年の調査では、ついにインドが中国を抜き、世界一の人口を誇る国となった。インドの人口は14.29億人、中国は14.26億人とされている。

とはいえ、中国にはなおも14億以上の国民が生活しており、観光地に人が集中すると深刻な渋滞が発生する。

今回は、そんな中国各地の観光地での渋滞について見ていきたい。

兵馬俑

画像 : 始皇帝陵兵馬俑坑1号坑 public domain

兵馬俑(へいばよう)は、言わずと知れた中国を代表する世界遺産である。

始皇帝の陵墓に付随するこの兵馬俑坑は、数千体もの兵士や馬の像が並び、古代中国の壮大な歴史を物語っている。

筆者もこれまでに二度訪れた経験があるが、チケット売り場に到着するまでに、かなりの時間を待たされた。
それでもその日は平日であり、友人によれば「今日はいつもより空いていた」とのことであった。

2023年11月の連休には多くの観光客が訪れ、異常な混雑だったという。
国内外から押し寄せた観光客により立つ場所もないほどの状態で、「人が多すぎて、まるで1億人いるように感じた」と話す観光客もいたそうだ。

2024年8月には、ある事件が起きている。
観光客である一人の母親が、いきなり子どもを抱いて、柵で囲まれている兵馬俑の坑の中に降りて歩き始めたのだ。
兵馬俑は厳重に保護されており、中に立ち入ることは厳禁である。

そのため警備員が常に目を光らせていたが、その厳重体制の中での出来事である。

後に女性が語ったところによると「子どもが急に発熱し、命の危険を感じて行動に及んだ」という。

兵馬俑のある西安の夏は非常に暑く、熱中症になるリスクが高い。その日はさらに通り雨に見舞われ、濡れた子どもの体が急激に冷えたことが原因で発熱したとのことであった。

母親は周囲の観光客に助けを求めたが、誰も耳を貸さず、やむを得ず強行突破したのだという。

甘粛省敦煌の砂漠でラクダが大渋滞?

画像 : 鳴沙山のラクダ、敦煌 PhotoAC

甘粛省敦煌の鳴沙山(めいさざん)は、中国国内外で高い人気を誇る観光地である。

この地域では、観光客がラクダに乗り、砂漠の景色を楽しむツアーが大変な人気となっている。民族衣装を身にまとい、ゆったりと砂漠を進む観光客たちの姿は、優雅で美しい光景として知られる。

しかしながら、連休や祝祭日など観光客が集中する時期になると、この光景は一変するのだ。

観光客の急増に伴い、なんと「ラクダの渋滞」が発生するという。

ラクダに乗るための待ち時間が長くなるだけでなく、砂漠の中を進むラクダの隊列が列をなして動きが滞るのだ。

こうした混雑を緩和するため、ついに「ラクダ専用信号機」が設置された。

この信号機は、ラクダの隊列や観光客の歩行ルートが交差する場所に設けられており、交通整理を行うことで混乱を防いでいる。

さらに、緊急時にはラクダが迂回できる専用の通路も開設されているという。

万里の長城

画像 : 万里の長城 PhotoAC

万里の長城は、言わずと知れた、中国で最も有名な観光スポットである。

しかし、特に連休中には大渋滞が発生する。

筆者の知人は「万里の長城を登るのは全然疲れない。なぜなら、人が多すぎて3分間に2歩しか進めないから」と冗談めかして語っていた。

この混雑はまるで満員電車のようであり、全く身動きが取れない時間もあるほどだという。

さらに、写真を撮ろうとしても、フレームには大勢の人が映り込んでしまう。そのため、万里の長城の魅力を存分に楽しむには、観光客が少ない時期を狙うことが推奨される。

マカオ

画像 : マカオの渋滞ぶり ※筆者撮影

ギャンブルの町として名高いマカオでも、観光地の混雑が深刻な問題となっている。

筆者が2023年8月に訪れた際も、街は観光客で溢れ返っていた。

有名な観光スポットである聖ポール天主堂跡に向かう道は、これまでに見たことのないほどの混雑ぶりであった。あまりの人混みに気分が悪くなり、その日はそそくさと退散することにしたほどだ。後日改めて訪問したが、混雑は依然として続いていた。

コロナ禍が明け、人々は海外や観光地へ積極的に繰り出している。マカオのような人気観光地では、訪れる目的が観光なのか、人混みを体感するためなのか分からなくなるほどの状況である。

もし人の多さを体感したいのであれば、連休中に中国の有名観光スポットを訪れるのが良いだろう。中国の「マンパワー」の圧倒的なスケールを実感することができるはずだ。

参考 : 『【甘快看】多地大堵车 这里 堵骆驼』他
文 / 草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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