中国史

ウイグル族への迫害 「髪の毛を剃られ殴打され、謎の薬を投薬される」

ウイグル族とは?

ウイグル族への迫害

新疆カジャの街並み wiki c

ウイグル族とは、中国の西北に住む民族である。

ウイグルとは自ら名付けた名前で「団結」という意味がある。
彼らはモンゴル人、コーカソイド、ヨーロッパ人の遺伝子の混血である。

中華人民共和国が建国されてから、中国五大民族の一つ、回族に含まれるようになった。
1934年中華民国新疆省政府によって、「ウイグル」という呼称が定められた。
1949年、中華人民共和国によって新疆区域に住んでいる少数民族として回族とは異なった民族として形として「独立」した。

ウイグル族はペルシャやイスラム文化の影響を大きく受けている。中国文化大革命後、政府が宗教に関して寛容な態度を取ると、イスラム教を大々的に推し進めるようになった。

現在、中国政府がウイグル族を迫害しているというニュースが頻繁に取り上げられている。

テロ事件がウイグル自治区内で多発しており、彼らは地下組織を作り、民族独立活動を推し進めているとされる。また共産党の役人が殺害されるなどの事件も発生している。

中国共産党は宗教を好まない。本来なら政府以外に忠誠を誓う宗教を全面に禁じたいのである。
宗教は分裂をもたらし、国家の団結を脅かす可能性もあるからだ。

ウイグル族への迫害の現状

ウイグル族への迫害

告訴したウイグル人の女性

2021年12月12日の報道によると、イギリス民間法廷で中国共産党がウイグル族に対して犯した罪について審判がなされた。

種族絶滅罪」と「人権侵害」の二つの罪である。

新疆強制施設から逃げ出したウイグル族の女性が、中国当局を告訴したのである。

彼女によると、50歳以下の女性は強制的に避妊手術を受けさせられるという。

強制施設にいた時は常に血液型検査をされ、臓器移植に体を使われるのではないかと疑うほどだったと語っている。

私の身に起きたこと

迫害を受け続けてきたウイグル族の女性の実話を、日本の漫画家・清水友美氏が描いている。

ある32歳のウイグル族の女性はエジプトで三つ子を出産した。その後、生活のために中国に戻ることになった。

中国の空港に降り立つや否や、頭に黒い布を被せられ警察に逮捕された。強い力で押さえつけられたので鼻の骨が折れ、流血がとまらなかったという。

2015年から2018年にかけて、「再教育キャンプ」を出たり入ったりした。彼女はその場所をまるで地獄だったと語っている。

彼女は牢獄の中で9人の女性が亡くなるのを見た。毎日夜になるといつも人が連れていかれ新しい人が入ってきた。毎日悲鳴や殴られる音が聞こえた。

獄中では24時間監視され、狭い部屋に50人あまりの人が収容されていた。
毎日、共産党党首のために祈り、国歌を歌わされた。

再教育キャンプでは髪の毛を剃られ、木で殴打されたり電撃を加えられた。中には聴力を失ったり失明したりする人もいたという。毎日謎の薬を注射され、人種絶滅計画として避妊手術を施された。

彼女は暴力を振るわれ耐えきれなくなって「死」を懇願したという。

その後、彼女は再教育キャンプから一時的に解放されたが、2名の共産党員が派遣され、24時間監視するために彼女の家で生活を共にしたという。
子供は謎の手術を施されており、一人の子供は亡くなり、一人は失明し、一人は成長しても大小便の失禁が止まらない状態となった。彼女の父母も生死不明となっている。

彼女は当局に聞いた。

私の罪は何?なぜ逮捕されないといけないの?

彼らはこう答えたという。

なぜなら、お前はウイグル人だからだ。それがお前の唯一の罪だ

ウイグル族という人たち

ウイグル族への迫害

ウイグル自治区 wiki c

多くのウイグル人が自分達は「中国人ではない」という。なぜなら、彼らは明らかに違う民族だからだ。

独自の宗教、言語を持ち、多くの人は北京語を話さない。しかし、だからといって全てのウイグル人が中国からの独立を支持しているわけでもない。

2021年10月、国連において欧米を中心とした43カ国が中国の新疆ウイグル自治区の人権状況に懸念を示す共同声明を発表したが、発展途上国を中心とした63カ国は人権問題を口実とした内政干渉に反対するとして中国を擁護する共同声明を発表している。

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. ナチスを裁いたニュルンベルク裁判 「人道に対する罪」とは何か?
  2. 古代中国の占いはどのように進化したのか?【八卦 奇門遁甲】
  3. 生涯、たった一人の妻しか持たなかった皇帝
  4. 秦の中国統一を数百年早めた名将・蒙恬 【漫画・キングダム】
  5. 日本ではあまり知られていないクリスマスの人気者 「エルフ、トムテ…
  6. イギリスの女性参政権運動について調べてみた「テロリストと呼ばれた…
  7. 『台湾で何が起きているのか』義務兵役復活、市民が銃を学ぶ、避難用…
  8. なぜ中国は今、空母2隻を太平洋に同時展開したのか?

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

「柔術・剣術・居合術」の達人・関口柔心と関口氏業【今も続く関口新心流】

関口柔心と関口氏業とは関口柔心・氏業(せきぐちじゅうしん・うじなり)親子は紀州徳川家の御…

諸葛孔明の「天下三分の計」と周瑜の「天下二分の計」

天下三分の計とは三顧の礼の後にようやく出会った劉備玄徳と諸葛孔明だが、二人が初めて会った…

「本能寺の変の原因?」信長と光秀の因縁の寺~ 法華寺 (諏訪市)に行ってみた

天正10年6月2日(1582年6月21日)、京都の本能寺で起こった明智光秀による織田信長への謀反「本…

中国の闇に迫る歴史書 『資治通鑑』 の魅力について解説

資治通鑑とは『資治通鑑』(しじつがん)は、中国の歴史書の中でも特に重要かつ影響力のある書…

【美人すぎて敵将も虜に】イタリアの女傑カテリーナ 「子はここからいくらでも産めるわ」

文化が花開き、多くの都市国家や小君主国が乱立していたルネサンス期のイタリアにおいて、その美貌と冷…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP