日本史

日本の城の数はいくつある? 構造や種類についてわかりやすく解説

城は天守だけが主役のように感じていませんか?

天守の脇役のようにしか思っていなかった櫓や石垣の重要な役割を知ると、城の見方がまた変わってきます。

今回は、日本のお城やその構造についてわかりやすく解説したします。

日本の城

お城の数はいくつある?

日本には「」と呼ばれるものはいくつあるのでしょうか?

天守を残すものもあれば、復元された天守、石垣だけ残るもの、全く何も残らず石碑だけで昔を偲ぶもの。それら全て数に入れてしまうと、数えきれないというのが本当のところです。

現在、新古いずれかの天守を持ち見学出来る城は、全国で200ほどといわれます。

そのうち現存天守はわずか12基です。

現存天守と国宝

日本の城の数はいくつある?

画像 : 現存12天守 wiki c

現存天守とは、江戸時代以前に築城された天守のことです。

ちなみに12基の現存天守は、

松本城(長野)・犬山城(愛知)・彦根城(滋賀)・姫路城(兵庫)・松江城(島根) ※この5基は国宝

弘前城(青森)・丸岡城(福井)・備中松山城(岡山)・丸亀城(香川)・伊予松山城(愛媛)・宇和島城(愛媛)・高知城(高知) ※この7基は重要文化財

となっております。

天守

最初の天守

城の中で一番目立つ存在なのが、何を言っても「天守」です。
初めて天守を持つ城構えとなったのが、織田信長が築いた「安土城」でした。

それ以来、江戸初期までには3000の数を超えるほどでしたが、江戸時代の「一国一城令」や明治には「廃城令」、さらには戦争で空襲被害を受け、多くの城が失われてしまいました。

そんな出来事がありながらも、当初の姿を留める「現存天守」に価値があるのは、納得できるわけです。

種類

天守には他にも種類があります。

パンフレットや説明書きを見ると【復元天守】【復興天守】などと、ちょっと気になる文字を見かけたことはないでしょうか?

実はそれが、天守の種類にあたるのです。

・現存天守…江戸時代以前に築かれた天守(12基)。
・復元天守…城に残る資料や図面などで、以前あったそのままの天守を復元。

当時と同じ材木や技法を用いたのが「木造復元(復興)天守」(大洲城など)
コンクリート造りの「外観復元天守」(名古屋城・岡山城など)

・復興天守…歴史に残る逸話などを元にイメージした天守。(小倉城・大阪城など)
・模擬天守…もともと天守はなかったが、町おこし等の目的で築かれた天守。

天守が無くなっていた場所に建てた、元とは全く違う天守。(富山城・岐阜城・墨俣城など)

望楼型と展層型

天守には「望楼型」「展層型」の2種類があります。

望楼型には1階か2階部分の屋根に、「入母屋破風(いりもやはふ)」がつけられています。(入母屋造りの家を想像してみてください)その上に望楼をのせている形を言います。
望楼型天守は古くに築かれた城に多く、石垣もしっかりしていなかったために、天守を築くうちに歪みがしょうじてしまいました。それを、上にのせた望楼で補正するように考えられた造りです。(姫路城・高知城・岡山城など)

展層型は比較的新しく、望楼をいくつも上に重ねていった形です。(松本城・名古屋城など)

石垣なくして城は無し!

日本の城の数はいくつある?

※現在の安土城址 wiki c

城を守る役割の一つが、石垣です。

城全体を囲むような形に石垣をめぐらせたのは、これも安土城が最初でした。

石垣を見ると時代が分かるとも言われるほどで、簡素な積み方をしたものから、傾斜も急で反り返るような形をした形など、時代と共に高度な技術が取り入れられるものに発展してきました。

【野面積み(のづらづみ)】

自然の形のままの石を積み上げていきますので、石の形大きさも不揃いです。

石と石の間にできる隙間には小石を詰めて仕上げています。初期に築いた城に見られる特徴の一つです。
(富山城・小谷城・竹田城・清洲城など)

【打込接(うちこみはぎ)】

石を加工して隙間を減らす工夫が見られます。

加工することで、今までよりも高く急な勾配がつけられるようになりました。
(淀城・丸亀城・熊本城など)

【切込接(きりこみはぎ)】

打込接よりもさらに頑丈で、江戸時代に築城されたものによく見られます。

石同士がぴったりと隣り合うように加工され、隙間は全くありません。敵がのぼってこようとしても、足を入れる隙間がなく時間を稼ぐことができます。
あまりにもきっちりと作られているので、雨や水を抜くための排水口がつけられてるのも特徴です。

石垣の中に口を開けたような排水口を探してみるのも面白そうですね。
(江戸城・大阪城・駿府城・名古屋城・仙台城など)

【積み方】

石の加工に加え、積み方にも工夫があります。
横一直線に目地を合わせた「布積(ぬのつみ)」は、見た目はきれいですが強度は弱く、もろい積み方です。

それに比べて、目地を合わさずに積む「乱積(らんつみ)」は技術も難しい(バランスがとりにくい)変わり強度は増します。

他にも「落し積」は、石を斜めにずらしながら積んでいく方法、「亀甲積(きっこうづみ)」といった六角形の石を積み上げる積み方があります。

※算木積み wiki c Miya.m

また、石垣の中で一番重要な箇所といえば、「」になります。

角がきっちりと組まれた石垣であれば、簡単には壊れることはありません。
この部分には「算木積(さんきつみ)」とよぶ技法が使われて、横長の石材を組み合わせています。

ジェンカを想像してみてください。石垣の「角」はあのような仕組みなのです。

櫓はただの飾りじゃない

(やぐら)って何のために造られたものなのか、どれを櫓というのか疑問に思う方も中にはいらっしゃるでしょう。

櫓とは、

※太鼓櫓(広島城)wiki c Reggaeman

①敵からの攻防の目的、見張りの役割を持つ「隅櫓(すみやぐら)」。
②武器庫、兵糧を蓄えておく倉庫のような役割の「多聞櫓(たもんやぐら))
③時を知らせた「太鼓櫓」

など、やはり一番の目的は城の守りとして置かれたのが理由です。

そのために、櫓には「狭間(さま)」や「石落とし」、「小窓」が多数見られます。

泰平の世になると、櫓にも違った使い方が付け加えられ、当主の休息の場や、月見の場としても増築されるようになりました。

城を囲む石垣の上の白壁の建物や、角に小さく建つ天守のような建物が櫓です。
今まで素通りしてしまっていた建物にも立派な役割があったんですね。

さいごに

一言で「○○城」と言っても、それぞれの城に残された歴史は全く違います。武将の足取りを追い、城に興味をもって訪ねてみるのは本当に面白いです。

これからの「お城巡り」には、シンボルとしてそびえ建つ天守だけでなく、縁の下の力持ち的な存在の「石垣や櫓」にも注目してみましょう。

 

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草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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コメント

  1. アバター
    • 名無しさん
    • 2022年 9月 02日 9:58pm

    なぁに新井とちくるった?
    自分ばっかじゃん
    貴方の記事は面白いし、簡素化されて読みやすいよ。
    しかし、貴方が前面にでまくたら、他の投稿者が
    育てたないだろう?
    草の実堂の日本の歴史は貴方のだけですか?

    0
    6
    • アバター
      • 草の実堂編集部
      • 2022年 9月 02日 11:27pm

      あの~ですから、以前もどこかで書きましたが、私は記事を書くこともありますが、基本的に編集人で文章は各ライターさんなんですよ。
      名前を出しているライターさんと、そうでない方がいます。以前は全て名前出しでやっておりましたが、去年からは希望する方のみ名前出しにしております。
      もともと匿名ライターさんは「草の実堂編集部」という表記でやっていましたが、MSNニュース登録審査の条件で本名表記というのがあったので、今は「草の実堂編集部 新井弘樹」という表記でやっております。
      審査は厳しいので、通らなかったらまた「草の実堂編集部」に戻します。

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