江戸時代

【温泉旅行】湯守って何する人?歴史や待遇など素朴な疑問を調べてみました!

駅で見かけた、こんなポスター。

「湯守のいる湯宿へ。」

そこには湯守(ゆもり/ゆのもり/ゆまもり)と、その湯守が勤務しているであろう湯宿(温泉宿)が所狭しと並んでいます。

湯守

画像 : 「湯守のいる湯宿へ」ポスター部分。筆者撮影

※まぁ「いる」と言っているんだから、写真を並べておいて「実際にはいません」じゃ詐欺ですよね。

見ていると、何となく温泉旅行に行きたくなりますが、ところで湯守とは一体何者なんでしょうか。

そして湯守がいるといないとでは、温泉の品質にどのくらいの差が出るのでしょうか。

などという疑問が湧き起こったので、今回は湯守に関するもろもろを調べてみました。

雑談のネタにでもして貰えたら嬉しいです。

湯守の歴史は江戸時代から

湯守は「湯を守る」と読んで字のごとく、湯(ここでは温泉に限定)を管理する職業の人々を指します。

湯守の発症は戦国乱世も遠く過ぎ去った江戸時代と言われ、温泉の湧き出る各地では領主が湯守を置いたそうです。

湯守の仕事は温泉の管理。具体的には温泉の利用客から料金を徴収し、その利益を領主に上納していました。

公営の銭湯組合みたいな感じですね。

湯守は基本的に一族で世襲し、温泉業務を独占していたようです。

やがて封建制度が(少なくとも建前上は)終了した明治時代以降は、制度としての湯守はいなくなったと考えられますが、温泉の管理や営業は続きました。

大正・昭和・平成を経て、令和の現代に活躍する湯守は、かつて活躍していた湯守一族の末裔なのでしょうか。

あるいは、明治時代以降に新規参入した湯守もいるかも知れませんね。

湯守の資格は特にないが……温泉に関する資格

画像 : イメージ

令和6年(2024年)12月現在、日本国内における国家・公的・民間資格を調べてみても、湯守を称する資格はないようです。

もしあったとしても、温泉に関する独占業務はないでしょう。

現代の湯守とは、温泉の源泉も含めた入浴施設全般の管理職員を指すことが多いようです。

ちなみに温泉関係の資格というものがあるそうで、調べてみると色々ありました。

・温泉ソムリエ(温泉ソムリエ協会)

・温泉保養士(日本温泉保養士協会)

・温泉保養プランナー(日本温泉保養士協会)

・温泉利用指導者(日本健康開発財団)

・温泉利用指導員(日本健康開発財団)

・温泉観光アドバイザー(日本生活環境支援協会)

・温泉観光実践士(温泉観光実践士協会)

・温泉観光士(日本温泉地域学会)

・温シェルジェ(日本温泉地域学会)

・温泉マイスター(特定非営利活動法人別府温泉地球博物館)

正直どれもこれも似たような……実生活ではあまり使い道がなさそうですが、もしかしたら温泉旅館に就職する時はプラス評価になるかも?知れませんね。

湯守の待遇は?求人情報は?

画像 : イメージ

ところで湯守の皆さんは、どんな生活を送っているのでしょうか。

さすがにプライベートを公開してくれる湯守のツテはないので、湯守の収入を調べてみました。

インターネットで「湯守 求人」と検索すると、湯守を募集している求人情報にたどり着けます。

とある求人情報から、給与などをピックアップしてみましょう。

※企業が特定できないよう、細部を改変しています。

・職種:お風呂湯守
・業務:温泉の温度調整(源泉かけ流しのため湯量で調整)、浴場や脱衣所清掃など
・身分:正社員
・給与:22~25万円
・勤務:7:30~19:00(休憩4時間、実働7.5時間)
・休日:週休二日(シフト制、月8日)
・賞与:年3回(合計2.5ヶ月分)
・定年:65歳
・退職金:なし
・再雇用:あり(70歳まで)
・社員寮:あり(単身用、通勤徒歩5分)

……などなど。温泉宿の立地にもよりますが、山奥とかだと社員寮にこもって、あまり里に下りない人も多そうです。

近くに家を構えるのも難しいでしょうから、家族と離れて単身赴任するか、あるいは遠距離通勤を辞さないか。

それにしても、なろうと思えばなれるチャンスがあるんですね、湯守って。皆さんは、なってみたいですか?

中には命がけな湯守も

現代における湯守は、要するに温泉旅館の浴室管理職員くらいに思っていたら、中には命がけで職務に当たる湯守もいるようです。

源泉から旅館まで湯を引く管に湯の花(硫黄成分など)が詰まってしまうため、山奥まで入って掃除するのだとか。

現地には硫化水素がたまる場所もあり、誤って転落したり吸引したりすると、死亡してしまうリスクもあります。

こうしてみんなが温泉を楽しめるようにするのも、湯守の仕事と言えるでしょう。

終わりに

今回は湯守について調べてみました。

江戸時代から代々続く湯守がいれば、近現代になって新規参入する湯守もいるのですね。

温泉に興味があって、温泉の近くで暮らしたい方にはもってこいの職業と言えるのではないでしょうか。

また先祖代々湯守をしている方がいらしたら、是非ともお話しをうかがいたいものです。

今度温泉旅行へ行かれる際には、湯守のいる湯宿を選んでみてはいかがでしょうか。

※参考:
地・温泉の湯守たち・お宿一覧
現代に残る「湯守」という職、インディージョーンズさながらの作業
文 / 角田晶生(つのだ あきお) 校正 / 草の実堂編集部

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角田晶生(つのだ あきお)

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