べらぼう~蔦重栄華之夢噺

『大河べらぼう』はつまらない? 話に入り込めない人が挙げた3つの理由とは

NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(※以下「大河べらぼう」)皆さんも観ていますか?

蔦重(つたじゅう)こと蔦屋重三郎(横浜流星)のひたむきな想いや、不器用な努力が徐々に実を結び、心を寄せる仲間たちが集まり力を合わせていく様子が、とてもワクワクしますよね!

実在の蔦屋重三郎がこんなにいい人だったとは思えませんが、それはあくまで時代劇として楽しめば、とても有意義な時間を過ごせることでしょう。

今週も仲間たちと一緒に頑張ろう!と活力が湧いてくる大河べらぼう。まだ観ていらっしゃらない方はぜひ一度、ご視聴を強くおすすめいたします。

しかし中には、大河べらぼうについて「観たけどつまらなかった」というご意見も少なからずありました。

何でや!こんなに面白いのに!筆者はそう思うのですが、冷静に考えてみれば、別の視点を採り入れることも重要だと思います。

なぜ大河べらぼうを「つまらない」と思うのか?皆さんから教えていただいたポイントをまとめてみました。

別角度からの視点を加えることで、皆さんが大河べらぼうを観賞するご参考となれば幸いです。

一、ビジネスや政治の話が難しい

画像:蔦屋重三郎 山東京伝『箱入娘面屋人魚』よりpublic domain

吉原細見の改(あらため)をキッカケに、出版業界へと乗り込んでいった蔦重。

鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)や西村屋与八(西村まさ彦)、鶴屋喜右衛門(風間俊介)といったライバルたちと渡り合いながら成長していく様子は、まさにジャンプ的な魅力に満ちた作品です。

これまで数々の作品を出版する中で、どうやって資金を調達するか、読者の興味を惹きつけるかなどの創意工夫が盛りだくさん。現代ビジネスにも活かせそうな蔦重の発想とバイタリティが、多くの視聴者を惹きつけています。

しかし、視聴者の中には「TVドラマなんだから、もっと気楽に観たい」というご意見も少なくないようです。確かにTVドラマはあくまで勉強ではなく娯楽ですから、無理はないでしょう。

同じ理由で田沼意次(渡辺謙)らが繰り広げる政治抗争についても、難しくてつまらないというご意見がありました。
こちらも筆者としては面白く観ていますが、匙加減が今後の課題となるかも知れませんね。

一、場面転換が多くてストーリーを追いにくい

画像 : 松平定信 public domain

このご意見については、筆者も若干思いました。

将来的に松平定信(寺田心)が権力を握って「寛政の改革(文武奨励政策)」を断行し、出版や表現活動を規制・弾圧する過程が重要なカギとなるため、徳川将軍家や幕府周辺の事情も描いておきたいのは解ります。

こちらも実際に面白いのですが、視聴者の脳にマルチタスクを求めることになり、視聴する上での負担が大きいのでしょう。

蔦重や仲間たち、ライバルたちの切磋琢磨によって花開いたお江戸の出版・表現文化が権力によって潰されていく様子が、終盤の見どころとなります。

そのために必要不可欠なパートではありますから無くすわけにはいかないものの、もう少し蔦重たちの描写に比重をかけてもいいかも知れませんね。

一、知らない人物が多くて感情移入できない

平賀源内 wiki c

今回の聞き取り調査で「そもそも蔦屋重三郎まわりの人物を知らず、感情移入できない」という声は少なくありませんでした。

蔦重の幼馴染で、相思相愛ながら去って行った悲劇のヒロイン・五代目瀬川(小芝風花)くらいにキャラが立っていればいい(※極端な話、完全オリジナルでも人気が出る)のですが、なかなかそこまでの人気キャラは量産できないものです。

よく見れば吉原遊郭の忘八(妓楼の主人)連中や平賀源内(安田顕)、朋誠堂喜三二(尾美としのり)など、個性あふれる魅力的なキャラクターは多数登場しています。

これからも登場してくるはずなので、各人の特徴を観察して、お気に入りを見つけてもらえたら嬉しいです。

難しいからこそ面白い、知らないことにふれる刺激や喜び

これまで、大河べらぼうについて「合戦がないからつまらない」「江戸時代なんて興味ない」などの評判を多数見聞きしてまいりました。

しかしちょっと待っていただきたい。合戦ばかりが歴史の面白さじゃありませんし、江戸時代にだって現代と同じく、人々の暮らしや文化はあったのです。

確かにストーリーはちょっと難しいor地味かも知れません。知らない人には感情移入しにくいという意見も確かに解ります。

それでも食わず嫌いはもったいない。最初は抵抗があっても、ふれている内にその楽しさが解ってくることは少なくありません。知らないからこそ飛び込んでみて、新しい発見を楽しむのも歴史の醍醐味ではないでしょうか。

つい「知っていること」に安心してしまいがちですが、知らないからこそ得られる楽しさもあります。
江戸時代の出版文化にふれることで、新しい世界が見えてくるかもしれません。この機会を最大限に堪能するのがおすすめです。

まだまだ楽しみが用意されているはずですから、よかったら日曜夜8時に、ぜひともチャンネルを合わせてみてくださいね。

文 / 角田晶生(つのだ あきお) 校正 / 草の実堂編集部

角田晶生(つのだ あきお)

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コメント

  1. アバター
    • 名無しさん
    • 2025年 8月 10日 4:46am

    私もこれらの理由で脱落しました。初回の女体と小芝風花ちゃん、安田顕さんが出てるところまではなんとか見たんだけど、結局その後は出版業界の人でもない限りはなかなかとっつける部分が少なくなりました。あまり業界チックな話になりすぎると日曜の夜にはキツすぎますね。ってな感想です。番組終わりの数分の当時を振り返る女性の解説みたいのがところどころにもっと入るとよかったのになー。

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