鎌倉殿の13人

【鎌倉殿の13人】立場?そんなの関係ねぇ!京都洛中で喧嘩に加勢した侍所別当・和田義盛のやんちゃぶり

「もし佐殿が天下をとったら、それがしを侍所の別当に……」

……和田小太郎義盛補侍所別當。是去八月石橋合戰之後。令赴安房國給之時。御安否未定之處。義盛望申此軄之間。有御許諾。仍今日閣上首。被仰云々。

※『吾妻鏡』治承4年(1180年)11月17日条

かつて石橋山で敗れた主君・源頼朝(演:大泉洋)を励ますべく飛ばしたジョークが真になり、鎌倉政権の侍所別当となっ(てしまっ)た和田義盛(演:横田栄司)。

侍所別当となった和田義盛。菊池容斎『前賢故実』より

侍所(さむらいどころ)はその通り、頼朝に仕える御家人たちの取りまとめ、すなわち軍事・保安機関。

別当はその長官ですから、現代の日本政府に喩えるなら防衛大臣と警察庁長官を兼ねたような重職ですね。

その重責に当人は大張り切りだったことでしょうが、どうも自覚が至らなかったようで、ちょくちょくトラブルを起こしていました。

そこが憎めない義盛の魅力でもあるのですが、今回は頼朝が2度目の上洛を果たし、京都に滞在していた時のエピソードを紹介したいと思います。

京都で起きた御家人たちの大喧嘩

時は建久6年(1195年)5月15日。夕方京都の六条大宮(六条大路と大宮小路の交差点)で三浦介義澄(演:佐藤B作)と足利五郎信綱(あしかが ごろうのぶつな。木村信綱)それぞれの家臣が諍いを起こしました。

その理由は分かりませんが、どうせいつもの如く、しょうもないことだったのでしょう。

「てめぇ、やンのか!」

「おぉ上等だ、一族みな殺しにしてやるぜ!」

喧嘩となると少しでも人数が多い方が有利……ということで、それぞれ一族郎党を掻き集めます。

「野郎ども、集まれ!」

日ごろは仲良し同士でも、一度カッとなると忽ち殺し合いを始めてしまうのが鎌倉武士・坂東武者という困った生き物(これでまた、ケロッと仲直りするんだから始末に負えません)。

結城朝光。菊池容斎『前賢故実』より

足利方には小山左衛門尉朝政(演:中村敦)・長沼五郎宗政(ながぬま ごろうむねまさ)・結城七郎朝光(ゆうき しちろうともみつ)の兄弟はじめ、大胡(おおご。群馬県前橋市)や佐貫(さぬき。栃木県塩谷町)の連中など、北坂東の軍勢が大集合。

これに対して三浦方には佐原十郎義連(さはら じゅうろうよしつら。義澄の末弟)が駆けつけたものの、集まりが今一つの模様。

「チッ……こんなことなら、国元からもう少し連れてくるんじゃったわい」

歯がみする義澄の元へ、心強い助っ人が駆けつけたのでした。

「あン、のバカ野郎……!」頭を抱える頼朝

「まったく、足利も三浦も……アヤツら何やっとるんじゃ!」

御家人たちの騒ぎを聞きつけた頼朝は、当然カンカンに怒り狂います。そりゃそうでしょう。

せっかく朝廷や公家たちに対して政治的アピールをしようと京都くんだりまで出てきたというのに、御家人たちが山猿ぶりを丸出しでは困るのです。

「ただちに別当(義盛)を呼び、騒ぎを仲裁させるのじゃ!」

「あの、それが……」

何と義盛は同じ三浦一族のピンチに居ても立ってもいられず、立場を忘れて喧嘩の仲裁ではなく、加勢に飛び出して行ったのでした。

喧嘩を仲裁すべき立場を忘れ、加勢に駆けつける和田義盛(イメージ)

「あン、のバカ野郎……!」

「叔ー父貴ー!待ってろよ!オラてめぇら、どけどけどけ~っ!」

京都の街中を爆走する侍所別当・和田義盛49歳。分別盛りもいいところの壮年男、しかも鎌倉幕府の大幹部がこのザマ……頼朝は頭を抱えてしまいます。

「……平三(へいざ)」「は」

仕方なく頼朝は侍所所司(所司は次官)であった梶原景時(演:中村獅童)を現場へ急行させ、両勢力を説得して何とか騒ぎを収めたのでした。

終わりに

建久六年五月小十五日己亥。今夕。於六條大宮邊。三浦介義澄郎等与足利五郎所從等。發闘乱。依之和田左衛門尉義盛。佐原左衛門尉義連以下馳集于義澄旅館。又小山左衛門尉朝政。同五郎宗政。同七郎朝光以下大胡佐貫之輩集足利宿所。將軍家被遣景時於兩方。被仰和平之儀間。入夜令靜謐云々。

※『吾妻鏡』建久6年(1195年)5月15日条

【意訳】夕方、六条大宮の辺りで三浦義澄と足利五郎の郎従らが闘乱を起こした。そこで和田義盛や佐原義連らが三浦方に集合、小山朝政・長沼宗政・結城朝光や大胡・佐貫の者たちが足利方に集結した。頼朝は梶原景時を両方に派遣して、和解するように仰せられ、夜になって静かになったのだとか。

……こんな事があってから、侍所の別当は景時に、義盛は所司に交代させられてしまいます。可哀想でも自業自得ですから仕方ありません。

(当人は面白くないでしょうが、そもそもこの手の責任ある重職はあまり性に合っていなさそうでもありますし……)

やがて頼朝の死後、景時が粛清されると侍所別当に復帰した義盛ですが、その後は別当に相応しく成長したものと期待したいところです。

しょうもない事で殺し合い、また仲直りする武士たち(イメージ)

ちなみに、この事件によって三浦一族と足利一族の仲が険悪になったかと言えばそんなことはなかったようで、例えば結城朝光と三浦義村(演:山本耕史)は「断金の朋友(※)」として交わりを続けました。

(※)だんきんのほうゆう:金属すらも断ち切ってしまうほど堅く結ばれた友情の意。例えば景時の讒言を受けた朝光は真っ先に義村を頼り、善後策を相談しています。

果たしてNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、このエピソードを再現してくれるのでしょうか。尺の都合でカットされてしまうかも知れませんが、今から楽しみにしておきたいところです。

※参考文献:

  • 細川重男『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』朝日新書、2021年11月

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