『らんまん』も残すところ約1ヶ月。ドラマは終盤に入りました。
相変わらず借金に苦労している槙野万太郎ですが、これから植物学者としてどうなっていくのでしょうか?
この記事では植物学教室の人々の実在モデルと史実をもとに、今後のドラマのあらすじを予想してみたいと思います。
万太郎をとりまく大学の人々と実在のモデル
東京大学の植物学教室では、ユーシーこと田邊教授が去って、徳永教授が主任教授となりました。
・徳永政市教授(演・田中哲司)
徳永教授のモデルは、松村任三(まつむらじんぞう)です。
教授となってから32年間、東京大学で研究と教育に努め、植物学者として輝かしい業績を残しています。また留学先のドイツで学んだ植物解剖学を広めました。
教授就任後、松村は牧野富太郎を助手として呼び寄せ、再び大学で一緒に働くことになりますが、二人はうまくいかなかったようです
二人の対立についてはこちら。
【NHKらんまん】 大学から牧野富太郎を追い出そうとした松村任三 ~再びの対立
https://kusanomido.com/study/history/japan/shouwa/70893/
松村は、牧野のことを「ばばぁ育ちのわがままもので、頼んだことをやらない」と言い、一方の牧野は、「自分の師匠でもない松村に気兼ねする必要はない。自分のやりたいようにやる」といった具合で、二人は良好な関係を築けませんでした。
・大窪昭三郎助教授(演・今野浩喜)
牧野と連名で、ヤマトグサに学名をつけた大窪昭三郎のモデルは、植物学者・大久保三郎です。
助教授として田邊教授のモデル・矢田部良吉の補佐をしていた大久保は、矢田部が大学を罷免された時、ともに大学を去っています。
その後、高等師範学校の教授になり、教育者としての道を歩みました。
・波多野泰久(演・前原滉)
植物学教室で万太郎と親しくなった波多野泰久のモデルは、植物学者・池野成一郎です。
植物細胞学や遺伝学を専門とし、ソテツの精子を発見する偉業を成し遂げました。
牧野の自叙伝によると、池野ははじめから人一倍親切であり、牧野は池野に最も親しみを感じていたようです。
・画工・野宮朔太郎(演・亀田佳明)
ドラマの中で波多野とタッグを組んだ画工・野宮朔太郎のモデルは平瀬作五郎です。
平瀬は、画工から技手を経て助手となり、研究に従事。イチョウの精子を発見しました。これは池野成一郎によるソテツの精子の発見とともに世界的大発見と言われています。
ところが翌年、平瀬は大学を辞職。教員として彦根中学へ赴任しています。
この突然の辞職は、助手が教授を上回る立派な業績を上げたことを快く思わない大学の人々による圧力によるものとも、矢田部教授の関係者一掃によるものとも言われています。
なお、平瀬はのちに帝国学士院恩賜賞を授与されました。
当初、学歴のない平瀬への授与は予定されていなかったのですが、「平瀬が貰わないのなら、私も断わる」と池野成一郎が強く主張し、2人で受賞することになったそうです。
・美作秀吉(演・山本浩司)
田邊教授にいつも嫌みを言っていた美作教授のモデルは、動物学者の箕作佳吉(みつくり かきち)です。
箕作は日本人初の動物学の教授となり、のちに東京帝国大学理科大学長を務めました。
箕作は牧野を高く評価しており、松村が密かに牧野を大学から追い出そうとしても、箕作のいる間はその陰謀が達せられなかったそうです。
植物学教室と万太郎の今後の展開
史実を元に推測すると、植物学教室と万太郎の今後のあらすじには、次の3点が描かれるのではないかと思われます。
・新しい植物学教室
・植物図鑑への布石となる『大日本植物志』の出版
・全国へ植物学を広める普及活動
それぞれについて解説します。
・新しい植物学教室
明治26年、牧野富太郎は松村任三の要請を受け、月俸15円で東京帝国大学理科大学の助手となります。
明治29年、植物採集のため台湾へ出張。治安が悪く、台湾へ渡る人は護身用のピストルを持参したそうです。
帰国後、牧野は「アイギョクシイタビ」に学名をつけました。「アイギョクシイタビ」は、台湾の有名なデザート「オーギョーチ(愛玉子)」の原料になる植物です。
また同年、平瀬作五郎がイチョウの精子を、池野成一郎がソテツの精子を発見する快挙を達成。
明治から大正にかけて植物学は分類学だけでなく、植物生理学や形態学、解剖学、生態学などの分野が発展していきます。
松村任三がドイツから持ち帰った植物解剖学によって、植物学教室は新しいフェーズに入り、平瀬や池野の大発見へとつながりました。
助手時代の牧野と松村のバトルは有名ですが、ドラマではそれほど深堀りされず、新しい植物学教室の象徴として池野と野宮の快挙が取り上げられるのではないでしょうか。
また以前、藤丸が大学について「結局、何もかもが政治と人間関係」と語っていましたので、大久保(劇中では大窪)と平瀬(野宮)が大学から追われる様子も描かれると思われます。
大学は万太郎にとって不穏で居心地の悪い場所になりそうです。
・植物図鑑への布石となる『大日本植物志』の出版
明治33年に出版された『大日本植物志』は、万太郎と寿衛子(すえこ)の夢である植物図鑑への布石になると思われます。
牧野富太郎が自分にしか作れないと言った『大日本植物志』の植物画は、緻密さ、正確さ、美しさにおいて他に類を見ない傑作と言われています。
これは牧野の偉業の一つであり、ドラマでは『大日本植物志』のおかげで図鑑の版元が見つかる。そんな流れになるのでは?と予想しました。
・全国へ植物学を広める普及活動
明治42年、牧野富太郎は横浜植物会を創立。
植物の名前や特徴、見分け方などを教える指導者として、参加者といっしょに野山をめぐりました。
その後も牧野は、全国各地の植物同好会の設立や指導に当たり、植物の普及活動を行うようになります。
ドラマの中で万太郎は、全国の植物好きな人たちからの手紙に必ず返信をしています。
また「日本中に植物学の種を芽吹かせることが自分の使命」とも述べていました。
今後はこうした草の根的な教育普及活動を通して、全国に植物学の種をまいていく万太郎の姿が描かれることになりそうです。
以上、大学関係者の実在モデルと史実から『らんまん』の今後のあらすじの予想をしてみました。
次回は万太郎と寿衛子を中心に、今後の展開を考えてみたいと思います。
参考文献:牧野富太郎著『牧野富太郎自叙伝』
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