西洋史

コロンブスの新大陸発見によってもたらされた、ある現代病とは?

画像 : コロンブス public domain

1492年、クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見したという歴史的事実は、学校の授業で必ず習うほど有名な出来事です。

しかし、コロンブスによる偉業の裏には、ある恐ろしい病気が世界中に広まったという影の部分があったことは、あまり知られていません。

今回の記事では、コロンブスと現代病の知られざる関係、そして日本への伝来について解説していきます。

コロンブスがもたらした現代病とは?

コロンブスによって世界中に拡大し、今もなお人々を苦しめている病気とは、性感染症の一つである「梅毒」です。

梅毒は主に性行為によって感染する病気で、感染初期には性器や口などに痛みのない潰瘍が現れることがありますが、症状が出ない場合もあります。

しかし、梅毒を放置すると非常に危険です。数年から数十年後に再発し、皮膚の発疹、骨や関節の痛み、心臓や血管の障害など、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。

さらに病気が進行すると、脳や神経に影響を及ぼし、認知機能の低下や精神障害を引き起こします。最悪の場合、死に至ることもあります。

現代ではペニシリンなどの抗生物質によって梅毒は完治しますが、発見当初は有効な治療法がなく、「不治の病」として恐れられていました。

画像:電子顕微鏡で見た梅毒 public domain

梅毒はアメリカ大陸の風土病だった

もともと梅毒は、アメリカ大陸にのみ存在していた風土病でした。ヨーロッパ人がアメリカ大陸を発見する以前は、他の地域では確認されていません。

1492年、コロンブス一行がアメリカ大陸に到達した際、現地の人々との接触を通じて梅毒に感染したと考えられています。その後、彼らがヨーロッパに戻ったことで梅毒はヨーロッパ全土に広がり、大流行を引き起こしました。

そもそも、なぜコロンブスは新大陸を発見するに至ったのでしょうか?
少し歴史をさかのぼってみましょう。

七世紀にイスラーム教が誕生し、その勢力は急速に拡大しました。イスラーム勢力の隆盛は、イベリア半島のキリスト教勢力(スペイン)にも大きな影響を与えました。

スペインはイベリア半島からイスラーム勢力を駆逐し、レコンキスタ(国土回復運動)を成功させました。今後もイスラーム勢力に対抗するため、国力の増強と貿易の促進を図ります。しかし、ヨーロッパとアジアを繋ぐ陸路にはイスラーム教のオスマン帝国が君臨し、高い通行料を徴収していました。

そのため、スペインは新しい貿易ルートの開拓を目指して海路に注目します。しかし、ライバルであるポルトガルはすでにアフリカ大陸を迂回し、インド(アジア)を目指す航路を開拓し、大航海時代をすでに切り開いていました。

遅れをとったスペインは、ポルトガルとは異なるルートを模索します。このとき、スペインのイザベル女王に新しい航路を提案したのがコロンブスだったのです。

「地球は丸い」と説いたコロンブスは、大西洋を横断するルートを提案し、見事にスペインからの援助を取り付けます。こうして西回りでインドを目指す航海に乗り出し、1492年にアメリカ大陸(新大陸)を発見しました。

画像:天文学者ヨハネス・ケプラーによって作成された世界地図 public domain

しかし、先ほど述べたように、コロンブスのアメリカ大陸到達は、梅毒の世界的流行のきっかけにもなりました。

コロンブス一行がアメリカ大陸で梅毒に感染し、ヨーロッパに持ち帰ったことで瞬く間に世界中に広がっていったのです。

日本への伝来

日本への梅毒の伝来については、16世紀にポルトガル人が来航した際にもたらされたという説が有力ですが、それ以前に中国を経由して伝来したという説も存在します。

いずれにせよ、日本で初めて梅毒が確認されたのは1512年であり、その後急速に広まったことは確かです。

コロンブスが新大陸を発見したのが1492年であることを考えると、わずか20年しか経っていない計算になります。

画像 : 加藤清正 public domain

戦国時代には、梅毒によって命を落としたり、苦しみながらも戦場で活躍した武将もいました。

加藤清正結城秀康、前田利長など、歴史に名を残す武将たちも感染した可能性があると言われています。

もし日本に梅毒が伝来しなければ…

もしコロンブスがアメリカ大陸を発見していなければ、梅毒はアメリカ大陸の外に広がらなかったかもしれません。そして、戦国時代の日本に梅毒が伝来しなければ、武将たちの運命や日本の歴史は大きく変わっていた可能性があります。

新大陸発見という地球の裏側での出来事が、日本の歴史に大きな影響を与えたのです。

歴史に「もしも」はありませんが、このようなグローバルな視点から歴史を見つめることで、新たな発見があるかもしれません。

参考文献:神野 正史(2021)『「世界史」で読み解けば日本史がわかる』祥伝社

 

村上俊樹

村上俊樹

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