メディアでは、基本的に日本は安定した国家経営ができており、そうそう財政破綻することはないとされている。向こう5年や10年で財政破綻することは可能性として低いという意味では間違いではないだろうが、楽観視していると取り返しのつかない事ことになってしまう。
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借金の定義
新しい年度に変わる季節(1~3月頃)に来年度の予算委員会が開かれ、予定歳入と歳出を比較して釣り合わせるための特例国債の発行を議論している。
国債は、簡単にいえば日本の借金なのだが、ほぼ毎年増え続けている。20年前の平成9年度のデータでは、建設国債と特例国債など合わせて49.8兆円の発行だった。
それが平成28年度データでは約170兆円と、順調に大きくなっている。
出典 財務省 平成29年度国債発行計画の概要
ただ、その内3分の2の金額程度は借換債(かりかえさい)なので、長い期間をかけて返済(償還)していくことが前提となっている。
たとえば「50兆円の借金があって、1年後に返済しなければならないけれども5兆円しか返済できなかった」。この場合、残りの45兆を借換債とすることで期限をまた伸ばすことができる。この繰り返し(積み重ね)が現在の日本国債の状況だ。
トータルでの借金残高(国債残高)は、平成28年度末で約840兆円だそうである。
出典 財務省 国債残高の累増
国民ひとりあたり約660万円となり、ニュースなどではわかりやすい数字のためか、よく危機感を煽る場合などに用いられることが多い。
日本の借金 は日本が返す
国の借金を日本国民がそのまま均等分割して負担しなければならないということではない。日本国債を買っていて、かつ日本が財政破綻(デフォルト)すればわからないが、今のところ可能性は低いといえるだろう。
「日本の借金は日本が返す」ということを念頭に置いて、もう少し具体的な話をしよう。
日本国債を発行するのは日本銀行だ。日本銀行が発行した国債を国内銀行や海外の機関投資家など幅広く引き受けてもらって、そこで調達した資金を政府予算にプラスして1年間の政府歳入と歳出をみる。
日本政府にとっての一番の収入源は何か。現在の日本政府の1年間の歳入歳出はだいたい96兆円前後。その内国債で賄われる部分は3〜40兆円。残りの約60兆円は税収入で賄われる。
出典 財務省 平成28年度一般会計予算(平成28年3月29日成立)の概要
日本企業の製品やサービス、コンテンツが海外にも広く受け入れられ利用されることで対外輸出や利益が増え、それによって日本企業の収入が増えることで政府の税収入が増える。さまざまな金融政策で為替のバランスをはかり、過度な円高状態にならないように円の供給量をコントロールしたりもされる。
たとえば、主要な貿易相手国であるドルに対して円高の状態になると、相手側からみれば今まで1ドルで100円分購入できていたのが、円の価値が上がり80円分しか購入できないということになれば、限られた予算の中で取引を行うので購入額は減少する。日本企業からみれば売り上げが減少するので、政府にとっても税収入が減少することになる。すると、ある程度の為替介入をすることで円ドルレートのコントロールはが必要となる。
累計借金「約840兆円」、年間税収入「約60兆円」
基本的には、予算編成において歳入が歳出を上回っていないと何らかの形で借金を増やすか歳出を見直す必要が出てくる。しかし、社会保障、公共投資、復興、国防、教育などもさまざまな分野に必要な予算を編成し、毎年運用している以上、年によって大幅に予算の割り当てを変えることは実際のところ難しい。とくに社会保障の分野では少子高齢社会への対応や、共働き世帯に対する子育て支援など、ますます投資が必要になっていく分野もある。
そのようななかでの予算対応としては、やはり収益を増やすほかにない。現状では特例国債の発行で足りない部分の穴埋めができているが、今後も消費税の上昇や医療保険の負担割合の見直しなどの制度変更によって政府収入を増やしていく流れになっていくと思わる。
日本政府の資産をみる
財務省データで、日本政府にもいわゆる企業会計の考え方を応用した形で貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)を作成している。
出典 財務省 平成27年度「国の財務書類」のポイント
貸借対照表とは、一定期間(通常は1年)における資産と負債の変動を記録するというもの。
平成27年のデータでは、負債が1193兆円、資産が672兆円。負債のほとんどは累計の国債だが、もう少し細かい分類のものもある(公的年金預かり金など)。
累計借金と年間税収入の割合から比べるとだいぶ差がゆるやかになっているようにもみえますが、資産のほとんどは簡単には現金化できない性質のものなので、すぐには借金の返済に当てらることはできない。年金積立金や外貨証券、大学などの法人への出資金などがはいっている。
日本が長期的に安全かどうかはわからない
日本の場合は、民間も合わせれば外国に対する純資産が増えるので、短期的に債務不履行状態になって国が破綻することは考えにくい。純資産が多い(資産ー負債)ということは、対外的な信用に直結するので、国際的に不安が広がっているような場合、相対的に安全そうな国の通貨や国債、公社債に資金が流る。これがたびたび日本が円高傾向になっている理由や、国債引受が容易である理由だと考えられる。
しかし、日本企業や個人の稼ぐ力が上がらないと純粋な政府収入である税収入は伸びない。消費を活性化させることで消費税も法人税もたしかに上昇するが、長期的に安定的な収入があるという安心感や賃金が上昇していくだろうという前向きな予想が不可欠だ。人口減少や働き手世代の減少が見通せるなか、いかにひとりひとりの収入が安定的に伸びていくかが、今後の日本の財政に大きく影響を与えていくことになるだろう。
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