スペイン・バルセロナでMWC(Mobile World Congress)が、2月26日~3月1日(現地時間)の日程で開催された。
MWCは携帯電話関連の展示会としては世界最大規模のもので、毎年その年のトレンドとなる技術やサービスが発表され、世界中のメディアが集まる。
そして、10回を迎えるMWC2018は、ここ数年にない盛り上がりを見せた。
イノベーション前夜
2019年には、アメリカなどで5Gの実用化が始まる。
初めてのMWCが開催された2008年は、LTEサービスが始まる前夜。日本ではドコモが「Xi」のネーミングで2010年にLTE通信をスタートさせた。今年は、その時と同じ高揚感が会場を包んでいたのだ。
5Gの商用化は、ただ通信速度が速くなるだけではない。LTEがスマートフォン向けの技術だったのに対し、5Gは「すべての端末の技術」といわれる。こう聞くと目標が曖昧だが、それだけ多くの可能性を秘めているから仕方がない。
5Gの特徴としては、主に次のようなモノがある。
○10Gbpsクラスの超高速大容量通信(LTEの最大速度の10倍)。
○数万台が密集しても安定して通信が行える。
○基地局の消費電力をWi-Fiアクセスポイントと同じの10W程度に抑える。
こうした技術は、単純に通信の高速化だけではなく、IoTの本格的な普及を見据えたイノベーションだ。混雑時の駅や、スタジアムなど、人が集中する環境でもより鮮明な映像を楽しむことができたり、災害救助などで人間が立ち入れない場所に遠隔操作で機材を投入できたり、可能性は大きく広がる。
ユーザーが体感できる実行速度でも、LTEの100倍になるという5Gが注目されないわけがない。
ゲーム感覚を体験
ステージでの講演も5Gから始まるなど、まさに5G一色のMWCだが、日本ブースも負けていない。すでにKDDIが国内で実証実験を行っており、例えば複数のカメラの映像をリアルタイムで統合して、好きな視点からサッカーを楽しむこともできるという。
こちらがメディアに公開された日本におけるKDDIの実証実験の一部だが、まるでゲームのような感覚だ。このように具体的な使用例が分かると5Gの目標としているものが理解できると思う。
また、MWCではドコモもブースで遠隔操作で書道のデモを行っていた。これは、ロボットに筆を持たせてVRで操り、動きをトレースしたり書道をさせるというもので、リアルタイムで細かな動きを見せる様子は来場者の注目を集めていた。
着々と進むインフラ整備
MWCで注目されたのはデバイスだけではない。
中国のHuawiは5Gのモデムやルーターを出品しており、宅内における5Gネットワークの構築を早くも狙っている。このルーターは、現行の6GHz帯以下の周波数と、より高速で大容量のデータのやりとりが可能となるミリ波(28GHz帯など)の両方に使用できるが、ミリ波で使用するには、屋外に専用の大型アンテナを設置するようになる。
一方、街中でのインフラ整備はどうなるのかというと、5Gの場合はなかなか手こずることが予想されていた。というのも、電波は周波数が低いほど遠くまで届く性質があるのだが、逆に5Gのような高い周波数帯を使うとなると、単純に距離が短くなる。大都市圏ではいいが、地方までをカバーするには時間がかかることが予想されていたからだ。
その不安を払拭してくれたのが、米通信メーカーの「Qualcomm, Inc.(クアルコム)」だった。
日本での5G環境は?
クアルコムは、「今あるLETの基地局をそのまま5Gの基地局に変える」という答えだ。
実際にサンフランシスコで想定実験を行ったところ、屋外であればミリ波帯でもLTEエリアの約65%をカバーできることになったという。しかも、半分以上のユーザーが1Gbps以上の速度を記録した。実際の5Gの基地局は都市部だとLTEよりも多く設置される予定なので、実際にはより広いエリアをカバーできるのではないかという。
といっても、LTEに比べて5Gのエリアが狭くなるのは避けられないようだ。そこで、クアルコムではLTEを完全に捨て去るのではなく、5Gから落ちた場合の受け皿として、LTEの高速化も推進している。ただし、これは技術的に可能だという話で、日本でもそうなるとは限らない。
KDDIでは、教育現場やスタジアムなど需要がありそうなところを優先的に5Gエリアにすると言っているし、料金プランも発表されていない段階では普及率まで考えるのは時期尚早だろう。
スマートフォン
もちろん、最新のスマートフォンも発表された。
トレンドとしては「カメラ」と「AI搭載」がキーワードとなる。3月の時点では、やはりLTE対応のモデルが圧倒的に多いが、Samsung Galaxy S9がその代表といえる。
スーパースローモーション動画に対応させたり、デュアルカメラを搭載することで、一眼レフのようなボケみ(フォーカスした周囲をボカす)を再現できるのが大きい。Huaweiはすでにドイツのレンズメーカー、ライカのレンズを搭載したデュアルレンズモデルを日本でも販売しており、SONYのXperiaなども後を追う形となっている。
AIは、スマートスピーカーのような外部のクラウドサービスに頼るタイプではなく、端末で完結する搭載型だ。ASUSも「ZenFone 5」でカメラの被写体認識を持たせている。インパクトにはやや欠けるが、メーカーがこの機能をどう広げていくかで差がつくだろう。
さらに個人的にはGalaxyやiPhone Xのようにベゼル(フチ)がないか、極限まで削った大画面モデルが目立っていた。
最後に
今回のMWCでは、技術的面での真新しさはあったものの、スマートフォンは大人しい感じに終わった。
5Gのサービス開始を前にして、新機軸の機種を発表するよりは、すでに完成した機能に+αを加えたようである。(情報はすべて2018年4月現在のものです)
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