ミリタリー

バビロン作戦とは【イラクに対するイスラエルの無法な先制攻撃】

イラクへのピンポイント空襲

バビロン作戦とは

※戦闘爆撃機の飛行進路 wiki(c)Ideru

バビロン作戦とは、1981年6月7日に行われたイスラエルによるイラクへのピンポイントでの空襲作戦です。

この作戦は、当時イラクが進めていた核施設(原子炉)の破壊を目的として行われたもので、イスラエル空軍の戦闘機からの爆撃によって、建設中であった核施設が破壊されたものでした。

イスラエルが行ったこの「バビロン作戦」と呼ばれた軍事行動は、明かに国際法に反する行いでした。

このため国際的に多くの非難を浴びることになりましたが、イスラエルという国が、自国の防衛のためには先制攻撃をも辞さないという姿勢であることを改めて敵対国に示すものとなりました。

フランス国内での爆破作戦

この時イスラエルが攻撃を行ったイラクの原子炉は、フランスの技術供与を受けて建設されていたものでした。

先ずイスラエルは外交ルートを通じて、自国と敵対するイラクへの原子炉を含む核技術の提供を止めるようにフランス政府に強く申し入れを行っていました。

しかし時のフランス政府はイラクの原子炉は平和目的での利用であるとして、イスラエルの再三の申し入れを拒絶しました。

このため実力行使に出ることにしたイスラエルは、空爆に先んじること2年前の1979年4月、イラクへの出荷のためフランス国内の港に置かれていた原子炉の収納用容器に対して爆発物を仕掛ける工作を実行しました。

バビロン作戦とは

※イスラエル諜報特務庁(モサド)המוסד למודיעין ולתפקידים מיוחדים

これには有名なイスラエルの諜報機関モサドが関与に携わり、爆破は成功しましたが完全に破壊するには至りませんでした。

驚くべきことにこの爆発を受けた機器を、フランス政府はそのままイラクに輸出しました。

その後もイスラエルはモサドを中核とする機関を通じて核開発の技術担当者の殺害、原子力発電所に関連する企業の役員などへの妨害工作を行い、しかもそれらをフランス国内の過激派やイスラム系の組織の仕業に見せかける工作を行いました。

バビロン作戦の成功

しかしイラクへと持ち込まれた核施設の機器を用いて、原子力発電所の建設が進められていきました。

このためイスラエルは戦闘機を用いた軍事行動「バビロン作戦」を立案し、武力をもってその原子力発電所を破壊することを決定しました。

イスラエルは同国空軍に所属するF16戦闘機8機、F15戦闘機6機の合計14機をこの作戦に投入。

バビロン作戦とは

イスラエル空軍のF-15A “Baz” 戦闘機 wiki(c)Bukvoed

イスラエルの空軍基地を離陸したこれらの14機の戦闘機は、先ずヨルダンの上空から侵入してイラクに向かいました。

ヨルダン、そしてイラクの両国のレーダーに補足されずに低空で侵攻した14機は、目標への攻撃を実施しました。

使用された爆弾は16発で内1発は不発、更に1発は外れたものの、残りの14発が命中。

この空爆でイラク軍の兵士が10名、フランス人の技術者1名が死亡する事態となりました。

作戦後には14機はサウジアラビアの上空を通過し、イスラエル空軍基地への無傷での帰還を遂げました。

イラン革命で浮いたF-16

イラクの核施設の破壊に成功したイスラエルではありましたが、前述の通り国際的には大きな非難を浴びました。

またヨルダン、イラク、サウジアラビアの防空能力も批判の対象となり、引き替えイスラエルの国としての能力、即ち、情報収集における諜報能力、軍事作戦における企画能力、実施能力の高さを改めて世界中に知らしめることになりました。

しかしこの計画が練られた当初は、作戦の障害としてイラクまでの距離が課題となっていました。

それまでのイスラエル空軍が主力として保有していたF-4E戦闘機では航続距離が短く、作戦の遂行は不可能な状況でした。

F-16

これを可能にしたのがイラン革命で、これによりアメリカからの購入が白紙とされ宙に浮いた形であったF-16戦闘機をイスラエルが手に入れる事ができたと伝えられています。

 

  • Xをフォロー
好きなカテゴリーの記事の新着をメールでお届けします。下のボタンからフォローください。

swm459

投稿者の記事一覧

学生時代まではモデルガン蒐集に勤しんでいた、元ガンマニアです。
社会人になって「信長の野望」に嵌まり、すっかり戦国時代好きに。
野球はヤクルトを応援し、判官贔屓?を自称しています。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. フィリピンにおける日本人被害者の犯罪増加 ~その理由とは?
  2. 【ナチスの美しき悪魔】イルマ・グレーゼ ~アウシュヴィッツの残酷…
  3. 【2個の子宮を持つ女性】 男児出産からわずか26日後に双子を出産…
  4. 日本と感覚の違う台湾の変わったお盆~ 中元普渡 【霊を「好兄弟」…
  5. ヨーロッパピクニック事件とは【ベルリンの壁崩壊に影響を与えた亡命…
  6. 台湾の新型コロナウイルス対策方法 「買い物の実名登録制度、感染者…
  7. 「NYやカリフォルニアも実質ロックダウン」日本人もロックダウンに…
  8. 非日常が味わえる 「マレーシアのランカウイ島」

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

女の部屋へ行く【漫画~キヒロの青春】⑱

女の子の部屋って憧れますよね。特に自分の場合は、19才くらいからずっと一…

【千社札を広めた男】 江戸時代の奇人・天愚孔平とは 「大ボラ吹きの奇人が生んだ文化」

天愚孔平とは天愚孔平(てんぐこうへい)とは、江戸時代中期から後期にかけて「江戸随一の大ボ…

F-22について調べてみた

米空軍の現在の主力戦闘機「F-15 イーグル」は初飛行から40年以上が経ち、F-15の不足を補うため…

【文人たちの愛した風景 京都篇】 池波正太郎が愛した京都の情景と味覚

京都を愛した文人は数多く、京都を舞台とした名作も多く誕生した。そうした作品の中には、文人の視…

プロは見られて上手くなる!『徒然草』が伝える芸能デビューと引退のタイミング

一昔ほど前のこと、お笑い芸人を目指していると言った者に対して「そういう学校に行くのもいいけど、路上ラ…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP