音楽&芸術

フレデリック・ショパンの生涯とオススメ曲【ピアノの詩人】

フレデリック・ショパンの生涯とオススメ曲【ピアノの詩人】

ショパン(Chopin, by Wodzinska)

フレデリック・フランソワ・ショパン(Fryderyk Franciszek Chopin:1810~1849)は、ポーランド出身の音楽家で、ポーランドの前期ロマン派を代表する作曲家として知られている。

当時のヨーロッパでも、作曲家、ピアニストとしても有名で、多くのピアノ独奏曲を生み出したショパンは、“ピアノの詩人”とも呼ばれている。

その呼び名の通り、様々な正式や美しい旋律によって、ピアノ音楽の表現を広げ、現代でも多くの人々に愛されている。

また、母国・ポーランドでは、1988年から発行されている5000ズウォティ紙幣に肖像が使用されるなど、国民にも親しみの深い存在として、知られている。

今回は、そんなショパンの生涯や、彼の遺した功績について、わかりやすく追っていく。

ショパンの生涯

フレデリック・ショパンの生涯とオススメ曲【ピアノの詩人】

ショパンの父・ニコラは、16歳の時にワルシャワへ移住してきた、フランス人だった。左がショパンの母・ユスティナ

ショパンは、1810年(1809年とも)、当時のワルシャワ公国に住んでいた両親のもとへ、2番目の子供として誕生した。

ショパンには姉のルドヴィカ、妹のイザベラがおり、いずれの姉妹とも仲睦まじく暮らしていたという。

6歳からピアノの勉強を始めた彼は、その類まれなる才能を開花させ、8歳の時には、当時ワルシャワを訪れていたロシア皇帝の前で、御前演奏を行うほどの実力を持っていた。

まるで、マリア・テレジアの前でピアノ演奏を行ったという、モーツァルトを彷彿とさせるようなエピソードである。

その後、ワルシャワ音楽院に入学したショパンは、音楽院を首席で卒業すると、その後は、ウィーンを経て、パリで最初の演奏会を開催する。

そこでもショパンは高く評価され、28歳の時には、女性作家のジョルジュ・サンド(George Sand)と恋に落ちた。

フレデリック・ショパンの生涯とオススメ曲【ピアノの詩人】

ジョルジュ・サンドの肖像画。男装の麗人としても知られる彼女は、様々な芸術家と浮名を流した。

年上の彼女との交際は長く続いたが、ショパンが身体を壊したことをきっかけに、2人の心は次第に離れ、最後は和解することなく、別れにいたったという。

サンドと別れてからのショパンは、ひどいうつ状態になり、彼女との別れから2年後、わずか39歳という若さでこの世を去ることになる。
(直接的な死因ははっきりしていないが、インフルエンザによって併発した、肺結核ではないか、と言われている)

このようなエピソードから、ショパンは“薄幸の音楽家”と称されることもある。

ショパンの名曲たち

・ノクターン(夜想曲)第2番 変ホ長調Op.9-2

ノクターン(夜想曲)とは、“静かな夜の気分を表す小品”のこと。

ショパンは、生涯の中で21曲のノクターンを作曲したが、特にこの曲は、ショパンの全作品の中で、1、2位を争うほどの有名曲である。

オーストリア・ウィーンへと移住した若きショパンは、ポーランド人であるということで、ウィーンでひどい偏見に遭い、失意や苦悩を抱えていたという。
その深い孤独の中で、ショパンは自分の気持ちと向き合い続け、このように美しいメロディを誕生させた、という。

・プレリュード第15番 変ニ長調「雨だれ」Op.28-15

ショパンは、28歳の時、恋人ジョルジュ・サンドと滞在していたスペインのマヨルカ島にて、この曲を完成させた。

優美な旋律と、どこか不気味な旋律が合わさって、幻想的な世界を生み出している。

ショパンの人生は、ジョルジュ・サンドと出会ったことで、大きく変容したと言われているが、この曲が、ショパンの暗い晩年を予期しているような、そんな不穏な音楽にも感じられる。

・子犬のワルツ (ワルツ第6番)

この曲は、ショパンの作曲した曲の中でも、特に有名な一曲である。

自分のしっぽを追いかけて、くるくると回り続ける子犬の様子を描いた曲で、聴いていると、可愛らしい子犬の姿が目に浮かぶようである。

フレデリック・ショパンの生涯とオススメ曲【ピアノの詩人】

デルフィナ・ポトツカ(Delfina Potocka)

ショパンの晩年である、1846年から1848年にかけて作曲され、ショパンの友人であった、デルフィナ・ポトツカ伯爵夫人に贈られた。

・革命のエチュード (エチュードOp.10-12)

ショパンの生きた時代は、まさに「革命」の嵐であった。

1830年には、フランス革命が起こり、革命の波は、ベルギー、イタリア、そして、ショパンの母国であるワルシャワにも及んだのである。

当時、ワルシャワはロシアの支配下におかれ、ポーランドという国名を消されていた。
支配下にあったポーランドの人々は、「自分の国を取り戻したい!」と強く願うことになる。

そのような空気を吸って育ったショパンにも、自然に、奪われた母国への“愛国心”が、強く根付いていたことだろう。

折しも、ショパンがウィーンへと旅立った年に、ワルシャワで【ワルシャワ革命】が勃発する。
しかし、ショパンはその翌年、滞在先のパリで、革命が失敗に終わったことを知る。

彼は、そんな祖国を想い、この曲を作曲した…とされている。
だが、実際にこの曲のタイトルを『革命』と名付けたのは、この曲を初めて聞いた、ショパンの友人である、リストである。

ショパンの友人、フランツ・リストは作曲家で、ジョルジュ・サンドとも交際歴があった。 Liszt (Lehmann portrait)

ショパンがこの曲を作曲した真意は、今となっては分からないが、ショパンは生涯、母国に帰ることはかなわなかった。

ショパン国際ピアノコンクール

国立ワルシャワ・ハーモニー

ショパン国際ピアノコンクールとは、ポーランドで現存する国際音楽コンクールのことである。
5年に一度、国立ワルシャワ・ハーモニーにて開催されている。

第一次世界大戦終結後、ポーランドの独立から9年後にあたる1927年に、第1回大会が開催された。
現存する国際音楽ピアノコンクールの中では、世界最古と言われている。

このコンクールは、世界でも最高峰の音楽コンクールとされており、ロシアのチャイコフスキー国際コンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクールとあわせ、「世界三大コンクール」と称されている。

課題曲は、すべてショパンの作品となっており、16歳から30歳までの若手ピアニストが、世界中から参加している。

2000年以降、日本人ピアニストが大会上位に昇ることが多くなっており、現在もショパン国際ピアノコンクールを目指す日本人は多い。

最後に

ショパンの心臓が眠る、ワルシャワの聖十字架教会

ショパンの死後、170年近く経った現在であるが、ショパンの心臓は、現在もワルシャワにある聖十字架教会の柱の中に、納められているという。

亡くなってもなお、今も多くの人々に愛されるショパンであるが、その美しい旋律の根底には、故郷ポーランドの音楽が流れているのでは?と言われている。

22歳で国を出てから、生涯帰郷がかなわなかった彼の人生だが、侵略された、愛する故郷への想いは、その美しくも切ないたくさんの曲たちに、おおに込められていることだろう。

 

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