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なぜ支援しても変わらないのか?アフリカの貧困が終わらない5つの要因

「アフリカの貧しい子供たちにあなたの支援を……」

「食べ物を残すなんてもったいない。アフリカには、満足に食事をとれない子供たちがいるんだぞ」……等々。

このような呼びかけは、誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。筆者も子供の頃から「アフリカは貧しい地域」というイメージを強く植え付けられてきました。

実際、サブサハラ・アフリカを中心に、いまも深刻な貧困に苦しむ地域が少なくありません。
国際機関の統計によれば、同地域では1日3ドル未満で暮らす人々が4割近くにのぼるとされています。

一方で、経済成長や貧困削減が進み、都市開発や産業化が進行している国もあり、状況は国や地域によって大きく異なっています。

こうした現状の中、アフリカ諸国には長年にわたり海外から多くの支援が届けられてきました。
OECDのデータによると、サブサハラ地域だけで年間およそ300億ドル前後(日本円で約4兆円前後)の公的開発援助(ODA)が投入されています。

「あなたの募金で、アフリカの子供たちは温かい食事を食べられます」

「あなたの善意で、学校に通える子供たちが増えます」

「あなたの寄付が、衛生的な水やトイレの整備につながります」……等々。

こうした思いから、官民一体となって支援が続けられてきました。ところが、これほど長期にわたり多額の支援が行われているにもかかわらず、依然として貧困が解消されず、苦しい生活を強いられる地域が数多く存在するのもまた事実です。

なぜ、支援がこれほど行われているのに、貧困が根本的に改善しないのでしょうか。

貧困が長期化している背景

画像:支援の成果が見えるのはいつだろうか(イメージ)

アフリカの多くの国や地域で、貧困が長期化している背景には、しばしば次のような要因が指摘されています。

・部族や民族などの対立に根ざした紛争や抗争が絶えない地域がある
・政治腐敗や汚職が根強い国が少なくない
・豊富な資源の輸出に強く依存している
・教育を受けた人材が海外へ流出してしまう
・支援の在り方によっては、現地産業の自立を妨げてしまうことがある

それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。

部族間の紛争や抗争が絶えない

画像 : 国連による世界地理区分によるアフリカの各地域 CC BY-SA 3.0

アフリカ大陸の地図を眺めていると、各国の国境線が直線的に引かれている不自然な地域が少なくありません。

これはベルリン会議(1884~1885年)において、西欧列強がアフリカ大陸を分割した結果です。

当時の国境線は、現地で暮らす部族や民族の生活圏や文化的背景をほとんど考慮せずに引かれました。同じ部族が国境によって分断されたり、異なる部族同士がひとつの国家枠組へ押し込められたりしたのです。

アフリカ大陸には1,500を超える部族が存在し、それぞれ固有の言語や風習、文化を保っています。
しかし、植民地支配下ではそうした実情が軽視され、独立後も国内外の対立や抗争が続く要因となりました。

例えばナイジェリアでは、部族間の対立に端を発するビアフラ戦争(1967~1970年)が勃発。
ルワンダでは1994年、フツ族とツチ族の対立によって大量虐殺が発生しました(ルワンダ虐殺)。

対立する部族を強引に統合したことによる悲劇であり、その火種はいまも完全には消えていません。

こうした国家形成の過程が、帰属意識の希薄さや政情不安、内戦の長期化につながっている側面があると言われています。

政治腐敗や汚職が蔓延している

画像:「世界最悪の独裁者」と批判されたジンバブエのロバート・ムガベ Public Domain

争いや不安定な情勢が続く地域では、政治や社会の基盤が揺らぎやすく、日常生活そのものが脅かされます。

いつ職を失うか分からない、暮らしが立ち行かなくなるかもしれない、命さえ危険にさらされるかもしれない。

そうした環境では、長期的な視点に立って社会を築いていくことが難しくなります。

その結果、政治的権限を持つ者が短期的な利益を優先し、汚職や不正が深刻化するケースも少なくありません。

本来届けられるべき支援が末端まで行き届かず、一部の権力者や利権層に吸収されてしまう構造が問題視されています。

また、アフリカの一部の国では長期政権や権威主義体制が続き、政治的自由や言論の制約が社会改革の大きな障壁となっています。

公正な社会制度を求める声が抑圧されたり、国外に退避せざるを得ない例も報告されています。

豊富な資源の輸出に依存している

イメージ

アフリカ大陸は、石油・ダイヤモンド・ゴールド・コバルトなど、世界的にも重要な資源に恵まれています。

本来であれば、これらを活用して社会基盤を整え、産業を育成することで経済成長へとつなげることができるはずです。

しかし、現実はそう簡単には進んでいません。

資源が豊富な国は、その収益に依存する傾向が強く、産業の多角化が進みにくいという問題があります。
資源価格の変動に左右されやすく、安定した国内産業が育たないまま、外貨収入の多くを輸入に頼る構造が形成されてしまうのです。

さらに、原材料は国際市場で安く取引される一方、その加工品は高値で取引されます。

加工技術や製造産業の基盤が不足している国では、付加価値の大部分を海外に奪われ、国内に利益が十分還元されない状況が続きます。

こうした構造は「資源の呪い」と呼ばれ、アフリカに限らず、中東や南米でも指摘されてきた課題です。

資源収益を自国の発展に結びつけるためには、政治の透明性や制度改革、教育や産業投資が不可欠です。

しかし、それらが十分に整っていない国では、資源がむしろ対立や汚職の火種となり、経済発展を阻む結果となってしまうのです。

教育を受けた人材が流出してしまう

イメージ

よくテレビCMなどで目にする、支援によって建てられた学校で、子供たちが笑顔で学んでいる光景。

この数十年、世界中で教育支援が進められてきましたが、それにもかかわらず社会全体の改善が進まない地域が存在するのも現実です。

では、なぜ教育が十分に社会変革へつながらないケースがあるのでしょうか。いくつかの要因が指摘されています。

・政情不安や経済混乱の中で、教育を受けた人材が海外へ流出してしまう
・政治的抑圧や言論規制によって、社会改革の動きが制限されてしまう
・教育制度やカリキュラムが社会需要と結びついておらず、技能が活かせない
・教育格差が大きく、教育機会が一部層に偏っている

このように、「教育が行われている」ことと「社会発展につながる」ことの間には大きな隔たりがあります。

実際にアフリカの多くの国で、教育を受けた若者がより良い環境を求めて国外に移住してしまう、ブレイン・ドレイン(頭脳流出)が深刻な課題として挙げられています。

莫大な支援が現地産業を衰退させる

画像:井戸を掘ってあげると共に、井戸の掘り方も教えてあげることが復興につながる(イメージ)

アフリカに対して良かれと行われてきた多額の支援が、結果として現地産業の成長を妨げてしまうという指摘もあります。

無償で食糧がもらえるなら、汗水流して働くのがバカバカしくなってしまう者もいるでしょう。産業が支援に依存してしまう構造が生まれます。
その結果、外国企業が市場を席巻し、国内産業が育たないまま衰退していく例も少なくありません。

さらに、国際金融機関から融資を受ける際には、いわゆる構造調整政策として公共サービスの削減や民営化などが条件とされることがあり、教育や医療を含む社会インフラが弱体化して格差が拡大してしまう場合があります。

つまり、短期的な支援を積み重ねるだけでは、長期的な経済基盤を築くことはできません。
求められるのは、自立的な産業や人材育成を支える投資であり、持続的に価値を生み出す仕組みです。

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」

貧困を「救う」ことだけを目的とするのではなく、経済を立て直すための知識と技術を共有し、現地の主体性を高める支援こそが、真に求められる国際協力の形と言えるでしょう。

終わりに

今回は「なぜアフリカは支援によっても貧困から抜け出しにくいのか」というテーマについて整理してきました。

しかし、貧困問題の解決は決して容易ではありません。

歴史的背景、政治制度、経済構造、国際関係など、複雑に絡み合う要因が存在しており、短期的な支援だけでは根本的な改善につながらない場合が多いからです。

また、既存の権益構造や国際的な利害関係が改革を難しくしている側面も指摘されています。そのため、現状の課題を克服し、持続可能な成長を実現するには、時間と努力が必要になるでしょう。

今後は、外部からの支援に依存するのではなく、現地の主体性と自立を支える取り組みを重視していくことが求められています。

私たちも関心を持ち続け、より望ましい国際協力のあり方を考えていきたいものです。

※参考:
World Development Indicators 2023 – Poverty headcount ratio (Sub-Saharan Africa)
Dead Aid: Why Aid Is Not Working and How There Is Another Way for Africa (2009) 他
文 / 角田晶生(つのだ あきお) 校正 / 草の実堂編集部

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