アクション映画などにおいて、米兵が危機に陥ると、「アラモ砦だ!」と言っているのを聞いたことはないだろうか?
アメリカ人にとってアラモ砦の戦いは忘れられない一戦となった。
1776年の「独立宣言」を経て、アメリカがイギリスの植民地から建国を果たすと、スペイン支配下のメキシコでも独立への機運が高まった。そして、1810年から12年にわたる闘争の末、メキシコは遂に独立を手にすることができたのである。
裏切り政策
その当時、現在のアメリカ合衆国テキサス州は、メキシコの領土であった。その広大な領地を効率よく開拓しようとしていたメキシコは、テキサスへの外国人入植政策を推し進める。入植者には土地が与えられ、10年間は租税が免除されることになっていた。その好条件につられて大勢のアメリカ人がテキサスに入植した結果、1830年ころには、人口の75%がアメリカ人で占められるようになる。
しかし、アメリカ人たちがテキサスで独自のコミュニティーを築き、さらに企業ぐるみで進出するようになると、テキサスをアメリカに乗っ取られるのではないかという懸念がメキシコ政府内で生まれた。そこでメキシコは、移民の制限を決定し、租税免除の政策も廃止したのである。
コス将軍の思い
当然、こうしたメキシコの政策転換はアメリカ人入植者の強い反発にさらされた。もはや自分の土地となったテキサスから出て行く気のないアメリカ人たちは抗議集会を開き、駐留メキシコ軍との間で小競り合いが頻発するようになる。
1835年8月、独立闘争の英雄で、当時のメキシコ大統領であったサンタ・アナは、アメリカ人たちの抵抗を武力で抑え込もうと、デ・コス将軍の軍勢を派遣し、首謀者を逮捕させようとした。コスの軍がサンアントニオ・デ・べクサーの町に入ったことを知ったアメリカ人は、戦争は避けられないと判断し、各地から義勇兵を集めた。500人規模に膨れ上がった彼らは、自ら「テキサス軍」を名乗ることになる。
平和裏に問題を解決しようとしていたコスは武装解除を求めたが、アメリカ人たちは先制攻撃を行い、11月にはべクサーを包囲。12月に入ると総攻撃を開始して、コス軍は降伏、撤退したのである。
アラモ砦の完成
しかし、その頃にはサンタ・アナ自ら率いる鎮圧のための軍勢が接近していた。テキサス軍司令部は、べクサーの町にいる兵士たちに撤退を命じるが、彼らは自分たちの手で敵を追い払おうと決意する。
そして、町の外れにある「アラモ」と呼ばれていた教会の廃墟を砦にすることに決め、大砲を設置するなどの防衛体制を整えた。約200人のアラモ守備兵の中には、撤退を促すために司令部から派遣されながら守備隊に加わったジム・ボウイ、テネシー州から義勇騎兵隊を引き連れて合流したデヴィー・クロケットらも名を連ねていた。
1836年2月、メキシコ軍の先遣隊がべクサーに到着し、24日からはアラモ砦への砲撃が開始された。この時、テキサス軍の将校で守備隊指揮官だったウィリアム・トラヴィスは、司令部に対し援軍を要請する手紙を書いた。
そこには「勝利か、さもなくば死あるのみ」と記されていたという。
アラモ砦 陥落す
3月6日早朝、本隊が到着して2000人以上となったメキシコ軍は、砦に対する本格的な攻撃を開始した。
メキシコ軍の攻撃は四方から行われ、激しい銃撃戦になる。指揮官のトラヴィスも最前線で戦い、壁の上からメキシコ兵に散弾銃を放っていたが、頭に銃弾を受けて戦死してしまった。
射程と命中性に勝るライフル銃を装備した守備隊は奮戦したが、数に勝るメキシコ軍を追い払うことができない。サンタ・アナが予備部隊を投入すると、砦の壁は各所で破られ、メキシコ兵が内部へと雪崩れ込んだ。戦いは凄惨な白兵戦へと展開し、ついに砦は陥落する。
戦闘開始から一時間半ほどで終わったこの戦いで、クロケットやボウイを含む守備隊の兵士は、ほぼ全員が戦死していた。
アラモを忘れるな!
砦が陥落する数日前の3月2日、すでにテキサスは臨時政権のもとで独立を宣言していたが、アラモ砦に籠城していた者達にその知らせが届くことはなかった。
この戦いの後、「アラモを忘れるな!」はテキサス軍の合言葉となり、アメリカ人のDNAに刻み込まれたのである。数に勝るメキシコ軍を相手に戦い続けた彼らは、サンジャシントの戦いでサンタ・アナを捕虜とすることに成功し、助命と引き換えにテキサス独立を承認させたのだ。
その後、独立国「テキサス共和国」が住民の総意によってアメリカ合衆国に併合されたのは1845年のことである。
最後に
アメリカが現在の50州になり、世界一の超大国になるまでは、独立戦争の前後、アラモに限らず、色々な悲劇を乗り越えてきたこそである。
そこには開拓精神と強い愛国心があればこそで、今もその精神は脈々と受け継がれている。
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