中国史

中国の人身売買が無くならない理由 「8人の子供の母親事件」

前編では中国の児童誘拐や人身売買の概要について解説した。

今回は、人身売買が今もなくならない理由について解説する。

人身売買がなくならない理由

●貧富の差が激しい

急速に発展を遂げている中国だが、貧富の差は非常に激しい。

近年の中国の発展は、表向きには非常に華々しく報道されているが国家全体として発展するのはそう簡単ではない。しかも人口14億を抱えるメガ大国である。

筆者が住んでいた地域でも、貧富の差はとても著しかった。

いくつかの百貨店がある区域があり、中にはGUCCIなどのハイブランドも入っていた。
それ以外の見たこともないようなブランドの服もとても高いものだった。

そのお店で働いている女性と話す機会があった。

彼女曰く、そのお店の一着のコートは彼女の一ヶ月の給料の2倍で、それを何着も買って帰る客もいるという。しかも1ヶ月に休みは2日だけ。彼女は小さい子供を2人抱えていた。

お金持ちの人は外車を何台も所有し、家を何軒も購入したりしている。反対に貧しい人たちは肉を買うお金もない。特に農業に携わっている人たちだ。

旬のものはどんどん生産されるため、安すぎる価格で市場に出回る。
スイカが売られる時期に市場で買おうとした時、安すぎて農家の人に申し訳なく思った記憶がある。
1元の下の「毛」単位でスイカが丸ごと1個買えてしまう。農家の人にとっては市場へ来るガソリン代にもならない。

かといって年齢や学歴の問題で、他の仕事につくことも難しいのである。
筆者は「お釣りはいいです」と言って、せめてもの足しにしてもらうようにした。

そんな貧しい人たちは嫁を迎えることもできない。そして生活苦の人たちは自分の子供を売るのだ。

人身売買が中国の地下経済を支えていた?

中国の最も暗黒時代といえば、文化大革命の時代であろう。

その時代には女性の売り買いが盛んに行われていた。農村の貧しい家族が生き抜くための唯一の方法が人身売買だったのである。

毛沢東の時代、人身売買が中国の地下経済を支えていたという。

人身売買を仕事にしていたある人物は、各地から数百人の女性を「仕入れ」した。その女性たちの中には夫や子供がいる人もいた。その人物は彼女たちの家族が生きるための手伝いをしていると感じていたという。

中国ではこの事実が書籍や映画となり、現代の多くの人が知るところとなっている。もちろんそれと国家が関係しているなどの記述はない。

1冊の書籍の表紙には、まるで物のように値札をつけられて売られる女性たちの写真があった。

画像 : 人身売買の実録

深刻な社会問題

この記事を書くために人身売買のリサーチをしていると、数々の可哀想な女性や子供たちの実録が出てくる。

多くの資料で取り上げられている有名な事件が「8人の子供の母親事件」である。

画像 : 八人の子供の母親

彼女は蘇徐州のある村に住んでおり、精神疾患を抱え、鉄の鎖で犬のように繋がれて不衛生な部屋に閉じ込められていた。

彼女は売られてここへ来たという。

そして子供を8人産まされることとなった。夫は人身売買を否定しており、彼女の母親が精神疾患の治療の為にこの村へ連れてきて、そこで知り合って結婚したと供述している。

女性は病院で手当を受けたが、なんと歯を全部抜かれており虐待を受けた痕跡があったいう。

現在、夫と人身売買に加担した2人の人物は、刑事的強制措置を受けている。

今回は中国の抱える闇の一つについて調べたみた。

多くの人がこの事実を受け止め、これ以上不遇な女性たち、子供たちが増えないように祈るばかりである。

関連記事 : 中国の人身売買について調べてみた 「誘拐されて眼球を売られる」

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 州史上最悪の虐待を生き延びた「Itと呼ばれた子」 ~10日間の絶…
  2. 楊貴妃の悲劇的な最後【傾国の世界三大美女】
  3. 『水滸伝』の関勝、実在の武将だった「関羽の子孫?設定からしてフィ…
  4. 「最近の蚊は素早くなった?」逃げ切る蚊の新習性~効果的な撃退方法…
  5. 【精神を病み実父を刺殺した天才画家】 リチャード・ダッド ~狂気…
  6. シュタージ 「東ドイツ秘密警察の恐るべき監視社会」
  7. 【古代中国の謎遺跡】 まるで宇宙人のような巨大仮面が発掘される …
  8. ハワイ島 オーラが見える洞窟の行き方【マウナラニ】

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

始皇帝の死後、権力を握った宦官・趙高は本当に奸臣だったのか?

始皇帝の死と「沙丘の変」秦の始皇帝が崩御したのは紀元前210年、五度目の東巡の最中である…

福島正則 〜酒癖の悪さで名槍を失った武将

家宝の名槍・日本号福島正則(ふくしま まさのり)と言えば、加藤清正と並んで豊臣秀吉の子飼…

なぜ日本は真珠湾攻撃に踏み切ったのか?「絶望の決断」と山本五十六の葛藤

1941年12月8日(ハワイ時間12月7日)、日本海軍はハワイの真珠湾にあるアメリカ太平洋艦隊に奇襲…

豊臣秀吉による天下統一の総仕上げ・奥州仕置(おうしゅうしおき)

小田原征伐以後豊臣秀吉による天下統一と言えば、関八州を支配していた後北条氏に対する小田原…

阿部正広はなぜ切腹した? 父親を斬首した阿部掃部の悲劇 【どうする家康 外伝】

松平家(徳川家)に代々仕えた忠臣・阿部氏。徳川家康の身代わりを務めた阿部正勝や、江戸幕末に安…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP