海外旅行ラッシュ
2019年12月初旬に始まった新型コロナウイルスの流行は、世界中に影響を及ぼし、私たちの生活に大きな変化をもたらした。
筆者が住む台湾も例外ではなく、その影響は現在も残っている。
人々は未だにマスクを手放せず、マスクなしで外出すると何かが足りないように感じるほどである。多くの場所で生活はほぼ正常に戻りつつあるが、衛生やウイルス感染に対する意識は依然として高い。
長い間、海外旅行や国と国の行き来が制限されていたが、現在ではほぼ制限がなくなり、海外旅行が再び可能となった。
多くの台湾人が待ちに待った海外旅行を計画しており、旅行業者たちも売上の回復に胸を撫で下ろしている。海外から台湾への観光客も増加し、観光業界は大忙しである。
台湾交通部観光局のデータ
台湾交通部観光局によると、2022年に台湾を訪れた人の数は39億5962万人で、そのうち観光目的の人は全体の28.43%を占めた。
これは前年と比べてなんと537.79%の増加である。
また、2022年に出国した台湾人の総数は148万2821人で、2021年の35万9977人と比べて311.92%の増加となっている。
その中でも、最も多くの台湾人が訪れたのは日本であり、全体の23.89%を占めたという。
台湾人の中国旅行に危機感
台湾は中華人民共和国の一部とされているが、この「一部」という表現には複雑な政治的背景がある。
台湾人が中国に旅行するには「臺胞證(táibāozhèng : 台湾居民来往大陸通行証)」という身分証明書が必要であり、これがあれば中国での実名制度を利用する際にも有効である。
例えば、交通機関を利用する際に身分証の提出が必要となるが、台湾人は「臺胞證」で対応できる。
しかし今年3月5日、台湾陸委会主任の邱太三氏が新しい規制を発表した。
それは、2024年6月以降、台湾の旅行会社が企画する「中国への団体旅行を禁止する」というもので、この発表は多くの台湾人にとって驚きであった。
なぜなら、3月1日に台湾人の中国行きツアー旅行が解禁されたばかりだったからだ。この新しい規制により、5月31日までの出発分はツアー旅行が可能だが、それ以降は個人旅行のみとなる。
個人旅行は手続きが煩雑であり、特に年配の人や手続きが苦手な人にとってはハードルが高くなる。
さらに、旅行保険の選択や問題が発生した際の対処も個人で行わなければならず、旅行会社のサポートがないと大変な負担となるのだ。
なぜこのような決定が下されたのか
この決定の背景には、二つの理由があるという。
① 中国がコロナ後も中国人の台湾旅行を解禁していないため、台湾側に大きな貿易赤字が生じる。
② 一方的に台湾からの団体旅行を解禁すると、国内の観光業界にも不利益をもたらす。
現在、両国間には有効な協議の仕組みがないため、台湾側は相互開放を主張している。中国はコロナ後に138か国を含むリストを公表し、香港やマカオも含めて出国観光を解禁しているが、台湾はそのリストに含まれていない。
邱太三氏は、台湾側も完全に旅行を制限しているわけではなく、昨年9月には第三国からの外国人観光客の受け入れを再開しており、それには第三国経由での中国人観光客も含まれていると述べた。また、台湾人が個人旅行として中国を訪れることも制限していない。
両国の観光協会が協議を進めることが必要であり、中国が開放する時期に合わせて台湾も開放する方針をとっている。
参考 :
台湾交通部観光局「2022年台湾観光統計報告」
邱太三「這2個理由, 所以禁台灣團客赴大陸旅遊」
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