ミリタリー

ヘリコプターの歴史と構造について調べてみた【発想は紀元前】

大規模災害などの現場で、要救助者をロープで吊り上げるヘリコプターの姿は当たり前のようにメディアで見てきた。

しかし、よくよく考えたら空中で静止できる乗り物というのは奇妙なものだ。

そこで少し調べてみたら、発想の歴史は古く、実用化されてからの歴史はとても浅いことが分かった。それからは、どのように進化していったのかが気になる。

災害救助、遊覧、交通、軍事と幅広く使用されているヘリコプターの歴史について調べてみた。

紀元前の発想

ヘリコプターの歴史と構造
※ダ・ヴィンチのヘリコプター図案

ヘリコプターの発想の起源を辿ると、紀元前の中国の竹とんぼにまで遡ることができる。

中国の仙人マニュアル『抱朴子』(ほうぼくし)には、いくつもの飛行術が書かれており、「一法としては、棗心木(ナツメの木の芯材)を用いて飛車を作り、牛の革を廻転する刃に巻きつけて、その仕掛を動かす」という記述がある。

これこそ、ヘリコプターの発想だ。なぜこのような発想になったかというと、『抱朴子』では地上40里(周・漢の時代では約1.6km)の高さには「太清」という領域が存在し、そこでは自由に空を飛べるのだという。龍が空を駆け巡るのもこの太清があるからだと思われていた。その太清に到達したい思いが、ヘリコプターの原案を発想させた。

15世紀にはレオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチが描かれ、トーマス・エジソンも燃焼の反動を利用したヘリコプターを研究したが、実用化には至らなかった。

ヘリコプターの現実的な発明者は、フランスのモーリス・レジェだとされている。1901年に特許を取得し、1907年に初の有人浮遊(80cm)に成功。

しかし、この1907年にはフランスのルイ・ブレゲーもポール・コルニュも初飛行に成功しており、開発競争が一気に加速することとなる。

だが、ここまでの段階で成功したのは、あくまで「浮遊」であり「飛行」ではない。自在に動けるようになるまでは、1937年まで待たなければならなかった。

実際に「飛行」と呼べる実用的なヘリコプターが完成したのは、ドイツのベルリンで開発されたフォッケウルフ Fw61である。


※フォッケウルフ Fw61

この機体は航続距離230km、最高飛行高度3,427m、最高速度120km/hを記録した。1938年のことである。

ヘリコプター黎明期


※ドイツのビュッケブルクにあるヘリコプター博物館で展示されているFa 223

さて、ここからがヘリコプターの黎明期である。

それまでのレシプロエンジンでは出力が足りなかったが、ガスタービンエンジン(高温のガスでタービンを回転させより大きな出力を得ることが出来る)の発明により、揚力を得るのに十分な出力のエンジンが量産されたことで、ジェット・ヘリというヘリコプターの一分野が作られてゆく。

しかし、皮肉にもヘリコプターの進化を加速させたのは第二次世界大戦だった。

1936年、ナチスはフォッケウルフ Fw61を開発したハインリヒ・フォッケにヘリコプター開発専門の新しい会社を設立することを勧め、1937年にフォッケはパイロットのゲルト・アハゲリスと共同でフォッケ・アハゲリス社を設立し、1938年にデルメンホルストで新型ヘリコプターの開発作業を始めた。

それが、フォッケ・アハゲリス Fa 223である。

連合軍に対する防衛戦のための限定的な生産で僅か20機程の生産に留まり、相次ぐトラブルにより大戦終結後には2機しか残らなかったが、量産段階までこぎつけた最初のヘリコプターということで注目に値する。

アニメ『ガールズ&パンツァー』では、熊本県の黒森峰女学園が所有しており、TV版第6話のBパート後半に登場した。

大戦後のヘリコプターは、アメリカ合衆国やソビエト連邦に実用化されて急速に進歩し、朝鮮戦争の頃には航空戦力として欠かせない存在と認知されていくようになる。

ガンシップ


※武装が施されたアメリカ陸軍のUH-1

レシプロエンジンも進化を重ね、1960年代に入り、アメリカ軍ではそれまで輸送用だったヘリコプターに武装を施すコンセプトを打ち出した。

ヴェトナム戦争により、アメリカ陸軍はヘリコプターにより兵士を前線まで輸送する「ヘリボーン作戦」が多用された。それにともない、ヘリコプターの武装も強化の必要性に迫られていた。

そこで、1962年春から当時最新鋭輸送ヘリコプターであったUH-1 イロコイ(採用当初はHU-1)汎用ヘリコプターの武装型(ガンシップ型)の研究を開始。ガンシップとは、輸送よりも、歩兵など非装甲目標への襲撃を目的として開発した局地制圧用攻撃機のことである。
つまり、輸送用ヘリコプターの護衛のために武装型ヘリコプターが開発されたのである。

1965年には、乗員2名の攻撃専用ヘリコプター「AH-1 ヒューイコブラ」を制式採用。このAH-1が世界初の攻撃ヘリコプターとなった。

対するソ連軍も攻撃ヘリコプター、輸送用ヘリコプターの開発・運用を続けるようになる。その構図は現在でも引き継がれ、UH-60 ブラックホークなどに代表される中型汎用ヘリコプターも、武装ヘリとして運用できる強度と武装を得ることが出来るために、必ずしも攻撃ヘリコプターがエスコートする必要はなくなった。


※UH-60

シングルローター式ヘリコプターの基本的構造

ヘリコプターの歴史と構造
※一般的なシングルローター形態のヘリコプター、ベル 407

一般的なシングルローター式ヘリコプターは、構造が簡単で部品数が減り、重量も軽くできるなどの利点があり、もっとも普及しているタイプである。

ヘリコプターには機体の上に取り付けられたメインローターが高速で回転することにより揚力を生む。しかし、それだけだと作用反作用の法則により、ヘリコプター自身(機体)がブレードの方向と逆方向に回転し始めてしまう。これを制御するのが後部のテイルローターである。

機体に対して垂直に取り付けられたテイルローターが機体の回転を打ち消すことで、初めて飛ぶことが出来る。

しかし、地面から離れた瞬間からヘリコプターは、4つの力が作用することになる。

上昇しようとする揚力、引き下ろそうとする重力、前進するための推力、それに対する抗力。これらの力を操って操縦しないといけないのだ。

基本的な動きは想像できると思うが、上昇するにはメインローターの回転速度を上げて重力よりも強い揚力を発生させる。前進する場合は、ローターの回転面を前方に傾けることで、抗力を打ち消すように前進する。独立した推進力を持たないヘリコプターは、ローターの回転面を傾けることにより、揚力の一部を推進力へと振り分けるわけだ。

同じ理論で、ローターの回転面を傾けることで、ヘリコプターを左右に進めたり、後進させたりすることもできる。

ヘリコプターのコントロール

ヘリコプターの歴史と構造
※ヘリコプターの操縦席

ヘリコプターの操縦は主に2本のレバーと足元のペダルで行う。

通常、機長席が右側で副操縦士席は左側となっている。便宜上レバーと書いたが、実際には座席の左側にあるのが出力をコントロールする「コレクティブ・レバー」、右側にあるのがローターの回転面を傾けるための「サイクリック ・スティック」で、足元のラダー・ペダルによりパイロットはテールローターの揚力コントロールが出来る。この操作で機体の姿勢を保ったり、機体を回転させる。

固定翼航空機と異なり、機長席が右側に位置しているのは、繊細な操作を必要とする「サイクリック ・スティック」から手を離さずに計器類を操作できるための配慮だ。それだけ、ローターの回転面を傾けるための「サイクリック ・スティック」の操作が重要だとわかる。

シミュレーターだが、私が操作したときには混乱しそうになった。例えば、前進するために「サイクリック ・スティック」を操作すると、機体は前進するが、揚力の一部が推進力に振り分けられたため、徐々に機体は下降してしまう。
そこで、「コレクティブ・レバー」を操作して、出力を上げてやらないといけない。

さらに「ホバリング(空中静止)」のときはローターの回転面を水平に保ち、横風などが吹いた場合には、「サイクリック ・スティック」を操作して機体を風に煽られないような角度に微調整も必要になる。一番簡単そうに見えて最も難しいのがホバリングなのだ。

最後に

ヘリコプターはメインローターの回転を上げれば機体は浮くという単純な考えのもとに調べてみたが、実際はその後の操作のほうが重要だった。

そのために、開発の歴史も機体の制御方法に時間が費やされたのだ。

紀元前に発想されたヘリコプターが現代まで実用化されなかったのは、飛ばすことではなく、制御技術が確立されるまで待たなくてはいけなかったことが分かった。

 

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