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夏の京都観光はこれ!歴史と涼をめぐる『京の舟遊び』3選

京都で「舟遊び」と聞いても、あまりピンとこないかもしれません。

しかし、古くは大阪との水運や、平安貴族の優雅な舟遊びなど、京都と舟とは、古来より深いつながりを持ち、連綿と受け継がれてきました。

今回は【京都歴史散策】の番外編として、豪快な渓流下りから、古都の風情を水上から眺める優雅な舟遊びまで、京都の夏にふさわしい「京の舟遊び」の魅力をご紹介します。

京都で舟といったら「保津川下り」

画像:保津川下り(撮影:高野晃彰)

京都での舟遊びといえば、誰もが思い浮かべるのが「保津川下り」でしょう。

保津川は、淀川水系の三大支川の一つで、丹波山地東部の京都市左京区広河原付近を水源とする川です。
南丹市、亀岡市を流れ、保津峡を経て大堰川となり、京都市の嵐山に入ります。

その後、下鳥羽で鴨川と合流し、さらに大阪・京都の府境である大山崎付近で木津川・宇治川と合流して淀川となり、大阪湾に注ぐのです。

「保津川下り」は、深淵あり、激流ありの保津川の峡谷を縫って、丹波の「亀岡」から京の名勝「嵐山」まで、約16キロの舟旅を楽しみます。
所要時間は、平均しておおよそ2時間ほどです。

一般的には、嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車を利用して亀岡駅まで行き、そこから路線バスやタクシーで保津川下りの乗船場へアクセスします。

一方、風情ある京馬車で、大きなお馬さんが一生懸命に曳いてくれるなか、ゆったりとした時間を楽しみながら乗船場に向かうこともできます。

画像:亀山駅から乗船場までの馬車(保津川遊船企業組合)

さて、「保津川下り」の最大の魅力は、変化に富んだ急流を、船頭さんの見事な操船術に身を委ねながら下っていく、川と一体化したような感覚で楽しむ渓流下りです。

途中、対岸をゆっくりと進むトロッコ列車のお客さんと手を振り合ったりしながら、あっという間に2時間が過ぎ去ります。

大堰川に入ると流れが緩やかになり、やがて平安貴族たちが舟を浮かべて管弦の遊びを楽しんだという千鳥ヶ淵に至ると、飲食物を販売する「くらわんか舟」が近づいてきます。

この舟は、保津川下りの船にぴったりと横付けし、いか焼き・おでん・みたらし団子、ジュースやビールなどを販売します。

渓谷美を眺めながらの飲食は、舟旅の締めくくりにふさわしい、格別の思い出となるでしょう。

画像:嵯峨野観光鉄道 トロッコ列車(撮影:高野晃彰)

終点地点の「大堰川」という名称は、京都の開発に尽力した渡来人・秦氏が、その優れた土木技術を駆使してこの川の下流域に大堰を築き、開拓を進めたことに由来しています。

渡月橋の上からは、いまもその面影を見ることができます。

「保津川下り」は、スリル満点の急流下りと、京都黎明期の奥深い歴史に触れられる、魅力あふれる舟遊びなのです。

京都・亀岡 保津川下り公式サイト:https://www.hozugawakudari.jp/

平安期からの歴史を持つ「嵐山の屋形船」

画像:嵐山屋形船(嵐山通船)

「保津川下り」の終点、嵐山・大堰川では、「屋形船」での舟遊びが楽しめます。

嵐山・大堰川の屋形船の歴史は古く、その始まりは平安時代前期にまで遡るといわれています。

当時は、嵐山に別荘を構えていた貴族たちの遊興の一つであり、摂関政治の最盛期を築いた藤原道長も、船上で詩や和歌、管弦(楽器の演奏)などを堪能したとか。

現在の「屋形船」は、船乗り場から上流約1kmの区間を遊覧するコースで運航されています。

動力船が主体の「屋形船」業界にあって、「嵐山の屋形船」は、昔さながらに人力で動かします。
エンジンのない屋形船を、一本の竹竿だけで自在に操る操船技術は、今もなお船頭たちによって受け継がれているのです。

また、嵐山の夏の風物詩として知られる「嵐山の鵜飼」は、風折烏帽子に腰蓑という昔ながらの装いの鵜匠が、船上から手綱を操り、数羽の海鵜を使って鮎などの川魚を捕る伝統的な漁法です。

千年の歴史を持つとされる「嵐山の鵜飼」は、例年7月1日から9月23日まで開催されます。

鵜飼見物用の屋形船は貸切となるため、グループで夏の京都観光をされる際には、ぜひ体験をおすすめします。

画像:嵐山レンタルボート(嵐山通船)

さらに、嵐山・大堰川をもっと手軽に楽しみたい方には、手漕ぎのレンタルボートもあります。

実は、嵐山通の達人たちはこのボートで対岸の琴ヶ瀬茶屋に乗りつけ、営業中の「くらわんか舟」から、鮎の塩焼きや川魚の天ぷらなどを楽しむという、まさに“究極の贅沢”を堪能しているのです。

嵐山通船公式サイト:https://arashiyama-yakatabune.com/

宇治川派流&銘酒のコラボ「十石舟」

画像:伏見・十石船(伏見観光協会)

豊臣秀吉が城下町として整備した伏見は、かつて京都と大坂を結ぶ交通の要所として栄え、特に水運の拠点として港が設けられていました。

観光船「十石舟」は、水運と酒蔵の町・伏見の魅力を広く伝えるために、伏見観光協会が運航しています。
この舟は、江戸時代に淀川を使って酒や米、旅客を運んだ三十石舟を復元したものです。

定員20名の「十石舟」は、酒蔵と柳が美しく映える宇治川派流を、約50分かけてゆったりと往復します。

途中、三栖閘門(みすこうもん)で一度下船し、併設の三栖閘門資料館では、水位差を調整する運河の仕組みなどについて学ぶことができます。

正式には「屋根舟」と呼ばれるこの舟は、窓のない簡素な構造のため、水面のきらめきや川風との一体感をより身近に感じられるのが魅力です。

画像:十石舟から見る酒蔵風景(月桂冠)

舟旅のあとは、酒どころ・伏見の町を散策してみてはいかがでしょうか。

月桂冠大倉記念館や黄桜カッパカンパニーなど、酒蔵直営の見どころが多数あります。

伏見観光協会公式サイト:https://kyoto-fushimi.or.jp/fune/

※参考文献
京都歴史文化研究会著 『京都歴史探訪ガイド』メイツユニバーサルコンテンツ刊
文 / 高野晃彰 校正 / 草の実堂編集部

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高野晃彰

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編集プロダクション「ベストフィールズ」とデザインワークス「デザインスタジオタカノ」の代表。歴史・文化・旅行・鉄道・グルメ・ペットからスポーツ・ファッション・経済まで幅広い分野での執筆・撮影などを行う。また関西の歴史を深堀する「京都歴史文化研究会」「大阪歴史文化研究会」を主宰する。

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