「明王」さんってどんな仏さん?

画像:不動明王(国宝・醍醐寺蔵)public domain
密教の経典に登場し、独自に発展した仏さんが「明王(みょうおう)」です。
明王の「明」は、「如来の明呪(みょうじゅ)を保持する者」すなわち「持明使者」を意味します。
ちなみに「明呪」とは何かといいますと、「明」は智慧や光明、「呪」は言葉や呪文を意味し、悟りの知恵を表す言葉のこと。
これは「真言」とも呼ばれます。
「明王」は如来の説く真言を理解せず、仏教に未だ帰依しない人々を導く役割を担った仏さん。
しかし、一方で仏道に障害をなすものを粉砕する存在でもあります。
それゆえに、その表情は憤怒の相を表しているのです。
今回はそんな「明王」さんの中でも「五大明王」と「愛染明王」について紹介しましょう。
大日如来の化身・お不動さんを中心とする「五大明王」

画像:青不動(青蓮院蔵)public domain
不動明王、降三世(ごうさんぜ)明王、軍荼利(ぐんだり)明王、大威徳(だいいとく)明王、金剛夜叉(こんごうやしゃ)明王。
この五尊を合わせて「五大明王」と呼びます。
このうち中心となるのが、お不動さんの名で親しまれる不動明王です。
お不動さんが特に重視されるのは、密教の本尊である大日如来の化身とされるからです。
仏さまの教えに耳を貸さず、反抗する者を、仏力によって説き伏せる役目を担います。
右手に剣、左手にロープ状の羂索(けんじゃく)を持ち、総髪にして弁髪を左胸に垂らす。
片方の目は半月のように細め、もう一つはクワっと見開き、口は牙をグイッとむき出して強く結びます。
その姿は見るからに恐ろしく、悪を退けるに十分な迫力を感じさせます。

画像:軍荼利明王/図像抄(平安時代)public domain
彫像や画像では、この不動明王を中心に東に降三世明王、南に軍荼利明王、西に大威徳明王、北に金剛夜叉明王を配する例が多く見られます。
降三世明王は阿閦(あしゅく)如来、軍荼利明王は宝生(ほうしょう)如来、大威徳明王は阿弥陀(あみだ)如来、金剛夜叉明王は不空成就(ふくうじょうじゅ)如来の化身とされ、それぞれが悪逆で教化しがたい者を救うため、怒りの姿をとっているのです。
ただし、この配置は空海が開いた真言宗(東密)の考え方によるもの。
最澄が開いた天台宗(台密)では、金剛夜叉明王の代わりに烏枢沙摩(うすさま)明王が五大明王の一尊とされます。
恐ろしい姿の「愛染明王」は縁結びの霊験も持つ

画像:愛染明王/内山永久寺旧蔵(鎌倉時代・重要文化財・東京国立博物館蔵) public domain
愛染(あいぜん)明王の密号は「離愛金剛」。
ここでいう「離」とは、生死の業となる煩悩や渇愛を離れること。
そして「愛」は、悟りの妙果を愛することを意味します。
仏教でいう渇愛とは、物質的なものや感覚的な快楽、自我の存在に対する強い欲望や執着のこと。
それが心の平安を乱す原因になるとされます。
愛染明王が燃え立つような赤色で表され、怒りの形相をしているのは人間が抱く愛欲そのものを菩提心、つまり悟りへと変える働きを担っているからです。
獅子冠をいただいて髪を逆立て、一面三目と称する三つの目をギョロつかせてクワっと口を開き、6本の腕には弓矢などを持ちます。
獅子冠をいただき、髪を逆立て、一面三目の三つの目をギョロッと見開き、口をクワっと大きく開く。
そして、六本の腕には弓矢などを持ちます。
その姿は、執着や愛欲を焼き尽くすかのようですが、霊験の中には「縁結び」もあり、古くから若い女性の信仰を集めてきました。
以上が、主な「明王」さんのお話です。
読者のみなさんが、お寺で「明王」さんに出会う機会があれば、ぜひこの記事を思い出してみてください。
怒りに満ちたその表情の奥に、迷う人を救おうとする強い慈悲が隠れていることに気づくはずです。
怖い仏さんだと思っていた「明王」さんとの距離がほんの少しだけ、近づくことでしょう。
※参考文献
京都歴史文化研究会(高野晃彰)著 『京都札所めぐり 御朱印を求めて歩く』メイツユニバーサルコンテンツ
文 / 高野晃彰 校正 / 草の実堂編集部

























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